代替プロテイン

ソーラーフーズ、微生物タンパク質を使用したアイスクリームをシンガポールで発売

 

フィンランド企業ソーラーフーズは今月、二酸化炭素と微生物を活用して開発した代替タンパク質ソレイン(Solein)を使用したアイスクリームをシンガポールで発売することを発表した

ソレインを使用したさまざまな料理が先月25日、シンガポールのレストラン「Fico」で開催された限定試食会で公開された。「Fico」は今月15日より、ソレインを使用したアイスクリームSolein Chocolate Gelatoの一般提供を開始した。

微生物タンパク質ソレインを使用したアイスクリーム

出典:Solar Foods

ソレインは、二酸化炭素、水素、酸素を微生物に供給するバイオプロセスにより生成される微生物タンパク質で、単細胞タンパク質(SCP)エア・プロテイン空気タンパク質とも呼ばれる。通常、微生物がタンパク質を生成するために発酵する時、栄養源として糖類などを使うが、ソレインの生成では二酸化炭素を使用する。

ソレインは天然資源に依存せず、天候や土地の有無に左右されず、再生可能エネルギーを使用するため、持続可能で環境負荷の低いタンパク質だと注目されている。

ソレインを使用したアイスクリーム 出典:Solar Foods

ソレインはすべての必須アミノ酸を含むタンパク質が豊富な粉末であり、代替乳製品、代替肉、スナック、ドリンク、麺、パスタ、パンやスプレッドなど、さまざまな食品に代替タンパク質として使用できる。

「Fico」で提供されるSolein Chocolate Gelatoは、ソーラーフーズが今後数年で市場投入を予定している製品のうち最初のものとなる。価格は8シンガポールドルで通常のアイスクリームと同等価格で提供される。

ソーラーフーズはプレスリリースで、「光合成や農業に全く関係なく生産された食品が一般に提供されるのは史上初」だと述べた。

味の素との提携

ソレインを使用したパスタ麺 出典:Solar Foods

ソーラーフーズは昨年10月、シンガポール食品庁(SFA)からソレインを使用した食品の販売認可取得を発表した。同社はシンガポールでの販売開始時期を2024年としていたが、今月の発売により、大幅な前倒しを実現したことになる。

先月には、味の素と戦略的パートナーシップを締結した。これはソーラーフーズにとって世界大手食品企業との初の提携となる。

ソレインの商用生産は2024年にフィンランドで開始される。二社は工場完成後、シンガポールでソレインを使用した製品開発と市場性検証を実施する。シンガポール以外の地域や国での販売許可取得でも協業するとしている。

味の素は提携に至った背景として、「双方の強みを生かして協力し合うことにより、ソレインを使用した商品展開が加速できると判断した」とプレスリリースで言及している。

規模と市場の拡大

ソーラーフーズのバイオリアクター 出典:Solar Foods

Foovoの認識では、SCPを動物飼料、魚粉の代替品に活用する企業が多い中、ヒト向けの食品で販売を実現したのはソーラーフーズが世界で最初の企業となる。

ソーラーフーズは次のステップとして、ソレインの生産を拡大し、食品企業がソレインを製品の一部に採用できるようにしたいと述べている。

フィンランドで2024年に商用生産を開始後は、市場開拓やパートナーシップの拡大を加速していくだろう。ソーラーフーズはアメリカでまもなくGRASの手続きを行うとしており、欧州、イギリスでは新規食品の申請をすでに完了している

 

参考記事

Ice cream will never be the same again: world’s first Solein® gelato now available to consumers in Singapore

味の素㈱とSolar Foods社が戦略的提携で合意

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Solar Foods

 

関連記事

  1. エンドウ豆由来の代替ミルクを展開する米Ripple Foodsが…
  2. 中国の培養肉Joes Future Foodが約12億円を調達、…
  3. BlueNaluがアジアへの培養魚販売に向けて三菱商事、タイ・ユ…
  4. 精密発酵カゼインで乳製品業界の変革を目指すFermifyが約6.…
  5. 精密発酵プラットフォーマーのLiberation Labsが約2…
  6. スペイン乳業メーカー、代替乳製品開発に向けた「Mylkcubat…
  7. 米培養肉UPSIDE Foodsが世界で初めてFDAの安全性認可…
  8. All G Foodsが約24億円を調達、細胞農業に特化したVC…

おすすめ記事

魚の培養脂肪を開発するインパクファット|日本人研究者がシンガポールで挑戦【創業者インタビュー】

畜産による環境負荷を軽減するため、植物由来や菌類由来の代替肉の普及が世界的に加速…

中国の培養肉業界の今をクローズアップ-2021年11月-【政策/企業の開発動向/投資動向/法規制】

今年、中国の培養肉企業2社に対し資金調達が実施された。この記事では、中国…

機械学習でタンパク質収量を増やす英Eden Bioが約1.6億円を調達、精密発酵の課題解決へ

機械学習を使用してタンパク質収量を増加させるイギリスのバイオテック企業Eden …

Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技術研究院と提携

独自の3Dプリンターで植物由来や細胞由来の代替肉・代替魚を開発するイスラエル企業…

ピザ自販機のBasil Streetが操業停止

ピザ自販機を開発するアメリカのBasil Streetが操業を停止したことが明ら…

DouxMatokが砂糖の使用量を半分に減らしたIncredo Spreadsの販売を開始

イスラエルのスタートアップDouxMatokが開発した、少ない量でも甘さの変わら…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/21 15:40時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/22 01:51時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/22 05:38時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/21 21:44時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/21 13:40時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/22 00:55時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP