世界大手の食肉加工会社JBSが、ブラジルで培養タンパク質の研究開発センター「JBSバイオテクノロジーイノベーションセンター」の建設を開始した。
食品のバイオテクノロジーに特化した研究開発施設としてはブラジルでは最大規模となり、2024年末に開設される予定となる。
「将来の課題を見て見ぬふりはできない」
この施設は、サンタカタリーナ州フロリアノポリスにあるイノベーションパークSapiens Parqueに設置される。プレスリリースによると、JBSは施設建設で、サンタカタリーナ州政府とフロリアノポリス市による支援を受けている。
サンタカタリーナ州知事のJorginho Mello氏は、「エルヴァル・ドエステの窓から牛が草を食べるのを見て育った人たちにとって、『培養タンパク質』というと、ほとんどこの世のものとは思えないでしょう。しかし、公的な経営者として、特にブラジルのように牛を飼育する土地が少ない国にとって、将来の課題を見て見ぬふりはできません」と述べ、培養肉工場を建設する重要性について言及している。
JBSは第1段階でまず研究所を建設し、第2段階でパイロット工場を建設する。第3段階では培養肉など細胞培養タンパク質の技術的・経済的な実現性を実証するための工業規模の施設の建設を計画している。
第1-2段階に2200万ドル(約32億円)を投じ、全体で6200万ドル(約92億円)が投じられる予定だという。
イノベーションセンターの研究チームは、すでにSapiens Parqueの仮設施設で研究を開始している。将来、培養牛肉を製造するために、牛種細胞に研究の焦点をあてているようだ。
JBSは商用化の初期段階では、ハンバーガー、ソーセージ、ミートボールなど加工食品の形で培養肉製品を市場に出していくことを計画している。
スペインに建設中の年産最大4,000トンの培養肉工場
JBSは2021年11月、スペインの培養肉企業BioTech Foods買収を発表した。当時、スペインに新しい生産工場を建設するほか、ブラジルに培養タンパク質の研究開発センターを設立することを発表していた。
当時の予定より遅れているものの、今回の発表は、JBSが2040年までのネットゼロを達成するという公約に向けた取り組みの1つだろう。
BioTech Foodsは現在、スペインで商用規模の培養肉工場を建設しており、この工場は2024年半ばまでに完成する予定だ。この工場が完成すると、年間1,000トン以上の培養タンパク質を製造でき、長期的に年産最大4,000トンまで拡張できる見込みだという。
JBSはブラジルでの施設建設プロジェクトについて、「世界に建設する(培養タンパク質)工場のモデルとして機能する」と述べており、スペイン・ブラジル以外の国でも培養肉工場の建設を予定している。
年間4,000トンは、たとえばアメリカの年間食肉需要を満たすにはまだ足りない。
(アメリカの人口を3.2億人、1人あたりの食肉の年間平均消費量を約100kgと仮定すると、アメリカでは1年間に3200万トンの食肉が消費される試算となるため)。
しかし、ブラジルの施設プロジェクトが功を奏し、世界各地に培養肉工場を設置できるようになれば、世界の食肉需要を満たすこともより現実的な話となる。
ブラジルにおける細胞農業動向(培養肉・精密発酵)
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アイキャッチ画像の出典:JBS