代替プロテイン

ネスレが精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー製品を発売|2回目の製品販売

 

大手食品メーカーのネスレが、精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー製品を発売した。

ネスレが精密発酵タンパク質を使用した製品を発売するのは、2022年12月に続き、今回が2回目となる。

リンクトインの発表によると、この製品は、ネスレヘルスサイエンスの研究開発センターで健康志向の栄養食品会社Orgainとの協力により開発されたもの。牛由来のホエイタンパク質と生物学的に同等な精密発酵ホエイを成分に含んでいる。乳糖は含んでいない。

現在、ネスレヘルスサイエンスブランドであるOrgainの公式サイトで、精密発酵ホエイを使用した限定版のプロテインパウダー製品「ORGAIN Better Whey」が販売されている。

出典:Nestlé/Orgain

ネスレは2022年9月にパーフェクトデイとの提携を発表し、同年12月、パーフェクトデイの精密発酵ホエイを使用したミルク製品を試験販売した。これは期間限定での販売であり、2023年4月の時点では販売状況は確認できなくなっていた。ネスレによる公表はなかったが、短期間で販売が終了されていた可能性が高い。

今回発売された「ORGAIN Better Whey」も、消費者の受容度やフィードバックを確認するための短期販売である可能性があり、特別な公表なく販売が終了すると思われる。

今回の発売に際しネスレは、「人と地球に良い食品を提供するというコミットメントの一環として、乳製品のカーボンフットプリントを削減する取り組みに投資し、植物由来の乳製品代替品をさらに発売し、アニマルフリーな乳タンパク質という新興技術を探求することで、ポートフォリオを変革することができます」と述べている

この一環として、ネスレは2022年2月、天然の植物由来原料に重点を置くOrgainの株式の過半数を取得する合意に達したことを発表した。契約には2024年にネスレがOrgainを完全買収する計画も含まれている。前述のとおり、Orgainはネスレヘルスサイエンスの保有ブランドの1つとなる。

今回発売された「ORGAIN Better Whey」の成分表示には、「WHEY PROTEIN ISOLATEFROM FERMENTATION)(ホエイタンパク質単離物(発酵由来))」と記載がある。製品のタンパク質源として、精密発酵ホエイのみが使用されている。

出典:Nestle/Perfect Day

2022年12月にネスレが発売した精密発酵ミルク「Cowabunga」には、パーフェクトデイのロゴが製品に表示されていた。パーフェクトデイは2022年8月、スポーツ栄養ブランドMyproteinと提携し、精密発酵ホエイを使用した「Whey Forward」を発売するなど、プロテインパウダー製品への使用実績がある。

今回発売された「ORGAIN Better Whey」にはOrgainのロゴがあるが、この精密発酵ホエイがパーフェクトデイが供給したものなのか、ネスレとOrgainが開発したものなのか、詳細は明らかにされていない。ただ、パーフェクトデイは先月、今後数週間以内に大手CPG企業との提携発表をほのめかしていたため、パーフェクトデイの原料を使用している可能性は否定できない。

いずれにせよ、パーフェクトデイの創業者が退任するなど、業界の変動が見られるなか、ネスレが再度、精密発酵食品の発売に乗り出したことは業界にとっては前向きなニュースであり、ネスレが依然として精密発酵によるアニマルフリータンパク質の可能性を重視している表れといえる。

 

参考記事

Nestlé Research & Development LinkedIn

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Nestlé/Orgain

 

関連記事

  1. ベルギーの精密発酵企業Paleoが約2.5億円のシード資金を調達…
  2. 米培養肉Upside Foods、カリフォルニアに培養肉工場を開…
  3. Daisy Labがシード資金を調達、今年半ばに精密発酵プロトタ…
  4. ファーストフードチェーンChipotleが代替油脂を開発する米Z…
  5. Future Fieldsが約15億円を調達、ショウジョウバエで…
  6. 資金調達が相次ぐ代替シーフード:スイスのスタートアップCatch…
  7. 【2024年】マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート発売のお…
  8. 空気と電気からタンパク質を作るSolar Foodsが約5億4千…

おすすめ記事

英培養肉企業Ivy Farmとバイオテック企業BSF Enterprise、中国進出に向けて提携

イギリスの培養肉企業3D Bio-Tissuesを所有する英バイオテック企業BS…

フィンランドの研究チームが細胞培養コーヒー生産に関する論文を発表|コーヒーの持続可能なエコシステム構築に向けて

フィンランド技術研究センター(VTT)の研究チームは、コーヒーの持続可能なエコシ…

家庭調理ロボット「Posha」、シリーズAで約11.6億円を調達──“プライベートシェフ”として全米展開へ

家庭向けキッチンロボットを開発する米Posha(旧称Nymble)は今月6日、シ…

Mirai Foodsが厚さ1.5cm以上の培養テンダーロインステーキ肉の作製を発表

スイスの培養肉企業Mirai Foodsは今月、厚さ1.5cm以上の培養テンダー…

アフリカ発の培養肉企業Mzansi Meat、2022年後半の市販化を目指す

アフリカに2社目の培養肉企業が登場した。2020年に設立された南アフリカ…

ベルギーの精密発酵企業Paleoが約2.5億円のシード資金を調達

ベルギーのフードテック企業Paleoはシードラウンドで200万ユーロ(約2億57…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/11 15:35時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/11 01:42時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/11 05:35時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/10 21:39時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/11 13:36時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/11 00:47時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP