アメリカ、デラウェア州を拠点とするSuperbrewed Foodは先月、腸内細菌由来のバイオマスタンパク質についてアメリカ食品医薬品局(FDA)から「異議なし」のレターを受領したことを発表した。
2022年5月のGRAS自己認証に続き、同社の発酵タンパク質が安全性に問題ないことがFDAにより確認された。
ゴリラに着想を得た腸内細菌由来タンパク質
Superbrewed Foodの発酵タンパク質は、ゴリラなどの草食動物が、植物だけで大きな体に成長することへの関心が出発点となっている。植物を摂取するだけで大きく成長できる秘密は腸にいる微生物にあると同社は考えた。
FDAへの通知文書によると、同社は腸内細菌であるClostridium tyrobutyricum strain ASM#19を使用している。これはクロストリジウム菌の1種だ。クロストリジウム菌は腸内細菌の1種で、アレルギーや自己免疫疾患の治療薬候補として製薬分野で近年注目されている。
プレスリリースによると、細菌バイオマスタンパク質についてFDAが「異議なし」のレターを発行したのはSuperbrewed Foodが初だという。
このタンパク質は、C. tyrobutyricum strain ASM#19にトウモロコシ由来の糖を与え、嫌気性発酵により得られた細胞を死滅させ、乾燥したものとなる(GRAS Notice 1129, p11、17)。
CO、CO2を炭素源としたタンパク質開発も
今回GRAS認証を得た発酵タンパク質は、トウモロコシ由来の糖を原料としてるが、出願特許(Production of single cell protein by gas fermentation)によると、一酸化炭素(CO)、水素(H2)、二酸化炭素(CO2)を炭素源に、クロストリジウム属細菌の嫌気性発酵による単細胞タンパク質(SCP)製造にも取り組んでいるようだ。
同社は今年1月、「Food components having high protein content(US11,918,019)」と題する特許を取得した。この時のプレスリリースによると、CO2を炭素源に、好気性・嫌気性を含むプロセスも特許の保護範囲にあると述べている。
Superbrewed Foodは自社タンパク質について、Postbiotic Cultured Protein(ポストバイオティクス培養タンパク質)と呼んでいる。
ポストバイオティクスとは、良い働きをする有用菌を取り込むプロバイオティクス、有用菌を増やすためにエサを取り込むプレバイオティクスを発展させた概念で、腸内細菌が作り出す健康に有用な代謝物をいう。
Superbrewed Foodの成分は85%以上がタンパク質であり、必須アミノ酸、分岐鎖アミノ酸を多く含む。ニュートラルな味わいと最低限の色合いで、pH安定性・温度安定性に優れ、スポーツ飲料から一般飲料、焼き菓子、製菓、代替肉、代替乳製品とさまざまな食品・飲料に使用できるという。
年内にアメリカで発売予定
Superbrewed Foodはグローバル展開を目指して、欧州、イギリス、カナダでも承認プロセスを進めている。2022年8月には、精密発酵食品の販売も手掛けるチーズ大手のBelと独占契約を締結した。
今年2月には、発酵タンパク質の生産強化に向けて、天然原料のグローバルメーカー・プロバイダーであるDöhlerと提携。Döhlerは、Superbrewed Foodが複数のCPGメーカーと今年予定している食品発売を支援する。
年内にはいよいよ、Superbrewed Foodのタンパク質を使用した食品がアメリカで発売されるだろう。
参考記事
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Superbrewed Food