独自の3Dプリンターで植物由来や細胞由来の代替肉・代替魚を開発するイスラエル企業Steakholder Foodsが台湾市場に進出する。
同社は今月20日、300社近いベンチャー企業を輩出してきた台湾の工業技術研究院(ITRI)との提携を発表した。Steakholder Foodsの高度な3Dプリンティング技術と、台湾料理に特化した植物由来成分を活用し、代替肉などさまざまな食品を開発・商用化することを目的としている。
Steakholder Foodsが台湾進出に向けITRIと提携
今回の提携では、台湾での事業拡大を加速するため、台湾の大手食品メーカーとも協力し、Steakholder Foodsの製品を商用化することに重点を置いている。この提携には、Steakholder Foodsの商用規模の3Dプリンターと植物性インク(プレミックス)をパートナーに販売することが含まれるという。
食感や風味に優れ、地元の人々の嗜好に合わせて調整された代替肉を開発することで、従来の食肉サプライチェーンへの依存を減らし、台湾における食の多様性・持続可能性を高める狙いがある。
植物性ウナギ・エビの発表に続く商用契約
Steakholder Foodsは以前はMeaTechという社名で3Dプリンティングによる代替肉開発を牽引してきた。2020年12月の細胞培養による牛脂作成の成功に始まり、2021年3月にはNasdaqに上場、12月には3Dプリントされた培養ステーキ肉の生産にも成功した。
2022年には日本で登録商標を取得し、昨年7月には、バイオ3Dプリンティング技術の商用化に向けて湾岸協力会議(GCC)の政府機関とパイロット工場建設への投資で合意を締結。
GCCとは魚・肉の培養ハイブリッド製品を製造する大規模工場の建設も目指しており、培養肉領域として最初の収入契約を確保できたとCEO(最高経営責任者)のArik Kaufman氏は当時述べている。
同社は昨年から特に、3Dプリンターとインクの商用化に焦点をあてたB2B事業戦略を強化。昨年9月にはクライアント向けにバイオ3Dプリンターのソフト発売を発表。年末には3Dプリント製の植物ウナギを、今年1月には植物性エビを発表するなど、昨今は商用化しやすい植物性インクをベースとした戦略を優先している。
今年5月には、イスラエルの大手代替タンパク質メーカーWyler Farmsと商用契約締結を実現した。Wyler Farmsとの間でロイヤルティ・原材料供給契約を締結し、2024年第3四半期にSteakholder Foodsのインク・知見を活用したバーガー、ミートボール、ミンチ肉の製造販売が開始される見込みとなる。
Steakholder Foodsは最近、3Dプリンター用の植物性インク「SHMeat」「SHFish」がGRASに準拠しているとして、アメリカ市場へ進出することも発表している。今後は台湾に続き、アメリカでもパートナーシップを拡大していくと予想される。
これまでに3Dプリンター販売に言及した基本合意締結はあるものの、3Dプリンターを実際に納入したという発表はまだ確認されていない。3Dプリンターの納入はイスラエルでまず実現し、台湾、アメリカが続くと予想される。
3Dプリンターによる代替肉開発ではRedefine Meatが欧州で製品を広く提供しているが、3Dプリンター・インク・ソフトを販売するSteakholder FoodsのB2Bソリューションが今後どのように拡大していくか注目される。
参考記事
アイキャッチ画像の出典:Steakholder Foods