代替プロテイン

ベルギー企業Bolder Foodsが菌糸体由来のチーズ試作品を発表

 

菌糸体から代替チーズを開発するベルギー企業Bolder Foodsは今月、ジボダンが主催したイベントで菌糸体由来のチーズの試作品を発表した。

菌糸体バイオマスの代替チーズとしての用途を模索する企業が圧倒的に少ない中、Bolder Foodsは、菌糸体には特に代替チーズとして未開発の可能性があると考えている

Bolder Foodsが菌糸体由来チーズを発表

出典:Bolder Foods

Ilana Taub氏Michael Minch-Dixon氏により2021年に設立されたBolder Foodsは、菌糸体由来の原料MycoVegを開発している。

MycoVegは発酵野菜と菌糸体を使用する液中発酵プロセスにより作られるバイオマスで、ソフト、セミハード、フレッシュチーズの代替品として適切な構造とクリーミーさを備えているというMycoVegによりゲル化剤や加工デンプンが不要になるため、メーカーは原料リストの短縮化、クリーンラベル化が可能になる

食感や味に課題があるとされる植物チーズを本物に近づけるため、近年、精密発酵植物分子農業でチーズの伸びに欠かせないカゼインを開発する企業が増えている。

Bolder Foodsのアプローチは精密発酵や植物分子農業とは異なり遺伝子組み換え技術を伴わず、非遺伝子組み換え微生物に栄養を与えて増やしたバイオマスそのものを収穫物とするバイオマス発酵となる。バイオマス発酵の中でも、菌糸体を増殖させて生成されるバイオマスはマイコプロテインとも呼ばれるが、代替チーズに焦点をあてる企業は非常に少ない

Foovoの認識では代替チーズ製品の開発に菌糸体を活用しているのはすでにクリームチーズを上市している米Nature’s Fynd、今回のBolder Foods、ベルギーのNaplasolなどである。

クリーミーさで高評価を得る

出典:Bolder Foods

試食会では参加者から特に「クリーミーさ」が評価されたとTaub氏はリンクトインで言及している。使用している菌株については明らかにしていないものの、他のマイコプロテインよりも水になじみやすく、水との結合性の高さがクリーミーさをもたらす秘訣だとTaub氏述べている

「代替チーズの限界を広げることは容易ではなく、一社では成し遂げられないため、ジボダンイノベーションセンターで自社技術を紹介することができて嬉しく思います」と同社は述べている

2025年に菌糸体由来チーズの上市を目指して

出典:Bolder Foods

Bolder Foodsには2つの製品がある。1つ目は「Chizou」というブランドで、カリフラワーひよこ豆を使用した植物性チーズだ。「Chizou」はすでにベルギーで上市され、デレーズ系スーパーマーケットで取り扱われている。2つ目の製品が現在開発段階にある菌糸体由来の代替チーズ原料MycoVegだ。

Green queenの報道によると、Bolder Foodsは今年2月の時点ですでに乳業メーカーと最初の試験を開始しており、今年2件目の企業試験を予定している。2025年にMycoVegを使用した製品の小規模販売を実現したいと考えており、商用規模での供給は2026年を目標にしているようだ。

 

参考記事

Bolder Foods Showcases “Impressive” Mycoprotein Cheese Prototypes at Givaudan Event

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Bolder Foods

 

関連記事

  1. TurtleTree、精密発酵ラクトフェリンで世界初のGRAS認…
  2. ゲイツ氏、ベゾス氏が支援するNature’s Fyn…
  3. 牛を手放し「型破り」な転身を実現したイギリス農家と、それを支援す…
  4. カゴメとNoMy Japan、マイコプロテイン活用の共同検証を開…
  5. GFIが「植物分子農業」を代替タンパク質の第4の柱として注目
  6. 細胞農業で脱カカオを進めるフィンランドのチョコレートメーカーFa…
  7. Fooditiveが精密発酵による代替ハチミツ開発を発表
  8. Next Prime Food発足: 大企業とスタートアップの“…

おすすめ記事

GOOD MeatとADMが戦略的パートナーシップを締結、培養肉生産を加速

世界で最初に培養肉販売を実現したイート・ジャスト傘下のGOOD Meatは17日…

精密発酵でカゼインを開発するEden Brewが約37億円を調達

オーストラリアの精密発酵企業Eden BrewがシリーズAラウンドで2,500万…

イート・ジャストの代替卵JUST Eggが欧州の安全性承認を取得

米イート・ジャストの代替卵JUST Egg(ジャスト・エッグ)の主要成分が、欧州…

味の素、CO2由来のソレイン使用の”第2弾”商品をシンガポールで発売

味の素は、フィンランド企業ソーラーフーズが開発したソレイン使用のアイスクリームを…

英Multus Biotechnology、食品グレードの基礎培地を発売──日本でも開発が進展

培養肉向けの非動物性培地を開発する英Multus Biotechnologyは今…

ドイツのMEATOSYS、農家を中心とした培養肉生産システムを開発 – 2028年の市場投入を目指す|創業者インタビュー

試作した培養牛肉 出典:MEATOSYS GmbHドイツの培養肉企業MEATOSYSは、農家が自…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/13 16:23時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/14 03:04時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/14 06:39時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/13 22:24時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/14 14:23時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/14 01:44時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP