精密発酵によるカゼイン開発に取り組むタイのMuuは今月、韓国の大手化学メーカーロッテ精密化学(Lotte Fine Chemical)と基本合意書(MOU)を締結したことを発表した。
Muuは昨年10月、静岡県牧之原市が開催したコンテストで受賞しており、日本国内でのパートナーシップも模索している。
タイの精密発酵企業Muu、ロッテ精密化学をMOUを締結
2021年にタイに設立されたMuuは動物を犠牲にすることなく、畜産による環境負荷を軽減するため、精密発酵により本物と同等の乳タンパク質を開発している。
乳タンパク質は大きくホエイ、カゼインに分類されるが、Muuはホエイではなく、乳タンパク質の大部分を占めるカゼインを開発対象に選んだ。
ロッテ精密化学とのMOU締結についてMuuは、「当社にとって新たなマイルストーンであり、ロッテ精密化学が私たちのビジョンを共有してくれたことを大変嬉しく思います」とコメントしている。
ロッテ精密化学は、タイ初のフードテックに特化したアクセラレータープログラムSPACE-Fにタイの国家イノベーション庁(NIA)、ネスレ、タイ・ユニオン、タイ・ビバレッジなどと共に協力している。
SPACE-FのプログラムにはFoovoが取り上げた企業の多くも参加しており、MuuはSPACE-Fの2022年のインキュベーターコホートに参加していた。
日本でも乳業メーカー、飲料メーカーとの提携を模索
Muuの創業者Chanapol Tantakosol氏は昨年開催されたシンガポールのAgri-Food Tech Expo Asia 2023で、試作品を開発済みで、タイ・ユニオンやタイ・ビバレッジと試飲会を開催していることを発表した。また、アジアのチョコレートメーカー、乳業メーカー、コーヒーメーカーなどと提携しているとFoovoに述べていた。
同社は日本市場への参入も検討している。静岡県牧之原市が昨年秋に開催した「第2回牧之原市チャレンジビジネスコンテスト(まきチャレ2023)」でMuuは静岡銀行賞を受賞。
Startup Logの報道によると、Muuは代替乳製品に配合する成分として乳タンパク質粉末をB2B供給することを目指しており、広く認知された乳業メーカー、飲料メーカーなどのパートナーを探している。Tantakosol氏はまきチャレを通じて伊藤園とのつながりができたことにも言及している。
MuuはこれまでにFI Asiaによるコンペ「Start-up Innovative F&B Products Competition 2023」で2位を受賞したほか、世界50カ国の参加者からForward Foodingが500社を選ぶ2023 FoodTech 500の1社に選出されている。
2027年までにASEANの食品生産ハブを目指すタイ
タイ政府は新たな育成の対象となる産業を「新Sカーブ産業」とし、5分野を指定している。その1つがFuture Food(未来の食)だ。タイは2027年までにASEANの食品生産ハブとなり、食品輸出で世界10位にランクインすることを目指している。こうした政府の動きはMuuにとって追い風となる。
Foovoの調査では、Muuは食品用途のタンパク質を開発するタイで唯一の精密発酵企業となるが、新Sカーブ政策を受けて、タイではバイオものづくりの生産拡大に向けた動きも確認されている。
昨年10月、精密発酵用の代替炭素源などを開発するFermbox BioがBBGIと提携し、タイと東南アジアに最先端の精密発酵施設を設立するため、合弁事業契約を締結した。長期的には最大100万Lの容量を目指している。初期段階では酵素を生産し、他のカテゴリにも拡大していくとしている。
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アイキャッチ画像の出典:Muu