代替プロテイン

マイコプロテイン企業Mycorenaが正式な倒産申請を発表、新たなオーナーで事業の継続へ

 

欧州の代表的なマイコプロテイン企業Mycorenaが正式に倒産申請をしたことが発表された。

同社は13日発表のプレスリリースで、深刻な財政難により、独立して事業を継続することが困難になったと報告。

昨今の金融市場により新たなリード投資家を見つけることはできなかったとしつつも、新たな投資を受け、再び軌道にのせ、拡大していく使命は変わらないと述べている。

現在、スウェーデンの法律事務所Advokatfirman Lindahlが手続きを進めている。Mycorenaが築いてきた強力な資産ポートフォリオゆえ、「買い手はすぐ見つかるでしょう」と担当のMagnus Löfving氏は述べている。

事業を再構築し、価値を守るために必要なステップ

出典:Mycorena

Mycorenaはスウェーデンで設立されたマイコプロテイン企業。

農業廃棄物をアップサイクルしたマイコプロテイン開発で2021年からEUとの共同プロジェクト「LIFE RR:FOOD」を実施したり、菌類を活用した代替脂肪代替バターを開発したりするなど、先進的な取り組みで業界をリードしてきた。

2021年にスウェーデンで限定販売を実現、2022年にはPeas of HeavenRebl Eatと提携してマイコプロテインPromycを使用したパテサンドイッチを発売した。

昨年6月の時点で同社は欧州6カ国に進出していた

昨年5月には、NASAカナダ宇宙庁が主催するDeep Space Food Challengeで、微細藻類と菌類からマイコプロテインを生産するシステム開発で優勝者に選ばれた

昨年9月には、オーストリアのRevo FoodsがMycorenaのマイコプロテインを使用した3Dプリンター製サーモンをドイツのスーパーで発売。翌月からはオンラインでも販売が開始されるなど、積極的にB2B供給を行ってきた。

Mycorenaの画像をもとにFoovo作成

共同創業者兼CEOのRamkumar Nair氏はプレスリリースで、「これは簡単な決断ではありませんでしたが、事業を再構築し、Mycorenaが過去7年間に築いてきた価値を守るために必要なステップだと考えています」と述べている。

Ramkumar Nair氏 出典:Mycorena

同社は先月、進めていた大規模工場の建設中止を発表した。プラントベース市場の低迷、投資家の関心低下によりシリーズBラウンドが失敗に終わり、資金を調達できなかったことを理由に挙げていた。

規模の拡大よりもマイコプロテイン製品の関心を高めることを重視し、これまでのB2Bから包括的なB2B2Cアプローチへのシフトを決めた。現在はスウェーデン、ヨーテボリのパイロット工場で生産している。

世界的に知られるマイコプロテインブランドQuornに先行して積極的にマイコプロテインのB2B供給を続けてきたMycorenaは、菌類技術のグローバルリーダーになり、持続可能な革命を推進する使命は変わらないと述べている。

共同創業者兼COOのEbba Fröling氏は、過去数年間、Mycorenaを取り巻く状況は非常に厳しいもので、パートナーシップを展開し、投資家から支援を受けたものの十分でなかったとコメント。「当社が新たなオーナーシップを得て、当社の重要な基盤をさらに強化し、チームと彼らの努力が維持されることを願っています」と述べた。

 

参考記事

Mycorena AB Files for Bankruptcy

Mycorena Files for Bankruptcy, Seeks New Ownership to Continue Pioneering Mycoprotein Ingredients

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Mycorena

 

関連記事

  1. TurtleTreeが精密発酵によるラクトフェリン生産を発表、2…
  2. イスラエルのPlantishが3Dプリントされた植物性サーモンを…
  3. レタスを活用して乳タンパク質を開発するイスラエル企業Pigmen…
  4. 【3/25】最新の研究事例から見る ! 細胞性食品(培養肉)セミ…
  5. 中国ファーストフード大手DicosがStarfieldと提携、植…
  6. 米AQUA Cultured Foodsがギンコバイオワークスと…
  7. イギリス政府が持続可能な代替タンパク質の開発に約25億円を出資
  8. マイコプロテイン由来の代替肉を開発するMycorenaが約30億…

おすすめ記事

FDAがSensientのチョウマメ由来の青色着色料を承認

FDAがSensientのチョウマメ由来の抽出物を着色料として承認した。Sens…

チェコの培養肉企業Mewery、チェコ政府から約3200万円の助成金を獲得

微細藻類を活用して培養豚肉を開発するチェコのスタートアップ企業Meweryが、チ…

パーフェクトデイ、精密発酵の「biology-as-a-service」を本格始動

食用タンパク質で精密発酵をリードする米パー​​フェクトデイ(Perfect Da…

牛を使わずに乳タンパク質を開発するイスラエルのRemilkが約139億円を調達

精密発酵によりアニマルフリーな乳製品を開発するイスラエル企業Remilkがシリー…

全自動のパン製造ロボットBreadBot、昨年より米スーパーに本格導入

Wilkinson Baking Companyが開発したパンを自動製造するロボ…

オランダ政府が細胞農業に約82億円の出資を発表、国の成長計画として培養肉産業を支援

オランダ政府は、国家成長基金(National Growth Fund)の一環と…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/17 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP