代替プロテイン

炭素、水素から脂肪を開発する米Savorがバター試作品を開発

出典:Savor

2026年7月14日 公式サイトの表現が変更されたため更新

カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くSavorはこれまでと異なるアプローチで代替脂肪を開発している。

Savorは、炭素、熱、水素、酸素を使用した熱化学プロセスで代替脂肪を開発している

具体的には、大気や地中、各種排出源などから得た炭素を、触媒の存在下で水素と結合させ、脂肪酸の基礎となる炭化水素を生成する。さらに、脂肪酸をグリセロールと結合させることでトリグリセリドを生成する

二酸化炭素を原料にタンパク質をつくるソーラーフーズに似ているように思えるが、ソーラーフーズのプロセスでは微生物を使うのに対し、Savorは微生物を使用しない化学プロセスとなる。

Savorのプロセスでは、水、エネルギー、炭素源のみを使用して工場で脂肪を製造するため、植物油脂のように多くの土地や水を必要としない。理論的に地球上のどこでも製造できる

化石燃料を直接食品に変換

バター試作品 出典:Savor 共同創業者Henrik Bennetsen氏のLinkedIn

Savorは、Henrik Bennetsen氏Kathleen Alexander氏Ian McKay氏によって2022年に設立された。

同社は、化石燃料をエネルギー源にした牛肉、ジャガイモなどの食品を食べる代わりに、「人間が化石燃料を食べればいいのではないか?」という共同創業者Ian McKay氏の突飛ともいえるアイディアから始まった

チームは、化石燃料を脂肪、タンパク質、炭水化物などの食品に変換するために考えられるあらゆる方法を図解。

そしてわかる範囲でライフサイクル排出量、土地使用量、水使用量を算出した。次に農業由来の栄養素の排出量、土地使用量、水使用量に関する文献データを調べた。結果は、人類が化石燃料を食べれば、つまり化石燃料を食品に変換すれば、現在の農業システムよりも地球にとって劇的に良くなるというものだった。

農業なしで食料を生産する化学的プロセスに着目した分析結果は、「Food without agriculture」のタイトルで昨年、nature sustainabilityに掲載された。

同論文によると、ブラジルやインドネシアで生産されるパーム油による温室効果ガス排出量を二酸化炭素換算量にすると1.5g/kcalを超えるのに対し、化学合成される脂肪に伴う二酸化炭素換算量は0.8g/kcal未満と、環境負荷が低いことが示されている。

研究チームは論文の中で、タンパク質、脂肪、炭水化物のうち、脂肪から着手した4つの理由を挙げている

  • 脂肪は熱化学的に合成するのが最も簡単な栄養素の1つである
  • 脂肪は過去に大量合成に成功した唯一の主要栄養素である
  • 脂肪は多くの食品において味覚的に区別されない「ベースロードカロリー」である
  • 大豆やパームなどの油糧作物による環境負荷は大きい

脂肪の合成生産は技術的に準備ができた状態で、経済的に実現可能であり、影響をもたらす可能性が高いことを突き止めたSavorは、これまでに化石燃料で作られたバター試作品を生成している(下記写真)。

出典:Savor

Savorが作る脂肪は、天然ガスなどの化石燃料、または補足した二酸化炭素とグリーン水素から作られるが、後者の場合、排出量をより減らせるもののコストが高くなるとしている。

スウェーデンでも脂肪を化学合成する企業が登場

出典:Savor   氏のLinkedIn

今年2月、ビル・ゲイツ氏は「Savorの製品を食べてみたが、バターを食べていないとは信じられなかった」と評価した

Savorは代替バターから着手するが、ミルク、アイスクリーム、チーズ、肉、植物油脂の代替品を開発する予定だ(その後、公式サイトでは記載は確認できなくなっている)。今年取得した特許からは、食品だけでなく洗剤や化粧品などさらに幅広い業界を視野にいれていることがよみとれる。

同様の試みはSavorだけではない。スウェーデンのGreen-Onもまた、二酸化炭素、水素、酸素を使用した化学プロセスにより代替脂肪を開発している。同社もバターチーズココナッツオイルなどの代替品を開発済みで、大手油脂メーカーとも提携している

 

参考記事

Behind the Scenes of our Article in Nature Sustainability

Savor Successfully Develops Dairy & Plant-Free Butter From CO2 and Hydrogen

Food without agriculture

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Savor

 

関連記事

  1. チェコの培養肉企業Mewery、チェコ政府から約3200万円の助…
  2. スーパーミート、システムのオープンソース化で培養肉の商用化を加速…
  3. 植物性チキンナゲットのNowadaysが事業を停止
  4. イスラエルのImagindairy、精密発酵乳タンパク質を生産す…
  5. モサミートがEUから助成金を授与、Nutrecoと共同で培地コス…
  6. フィンランドの研究チームが精密発酵による代替卵白の開発に成功
  7. Umami Bioworks、ペットフード用途で細胞性シーフード…
  8. 杏子の種から植物ミルクを開発するKern Tecが約19億円を調…

おすすめ記事

【2024年】マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート発売のお知らせ

2024年7月16日 更新7月12日に発売しました。目次・サンプルページ…

インポッシブル・フーズの大豆レグヘモグロビンをEFSAが安全と判断:GMOパネルが結論を発表

米インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の大豆レグヘモグロビ…

植物ステーキ肉のChunk Foodsが約20億円のシード資金を調達

イスラエルの植物肉企業Chunk Foodsは、昨年11月にシードラウンドで15…

精密発酵企業Formoがバイオテック企業Brain Biotechと提携、アニマルフリーな乳タンパク質の生産を強化

精密発酵によりアニマルフリーな乳タンパク質を開発するFormoは、バイオテクノロ…

ポルトガルのCell4Food、細胞性タコの開発加速に向けてAlgocellと提携

出典:Cell4Food細胞培養でタコなどのシーフードを開発するポルトガル企業Cell4Food…

アブダビ、新規食品の規制枠組みの整備へ|細胞性食品・精密発酵を対象

出典:アブダビ投資庁(ADIO)アブダビ農業・食品安全局(ADAFSA)は先月25日、アブダビ品…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

細胞性食品(細胞培養食品)レポート・予約注文開始

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

PAGE TOP