代替プロテイン

代替タンパク質の普及促進を行う国際シンクタンクGood Food Institute(GFI)が日本拠点を設立

 

代替タンパク質の普及促進で主導的役割を担う国際シンクタンクGood Food Institute(グッド・フード・インスティテュート:GFI)は1日、新たに日本拠点「GFI日本」を設立したと発表した

GFI日本は、政府の代替タンパク質研究への投資機会を特定し、国家バイオエコノミー戦略の策定に向けた取り組みを支援する。また、法整備に向けた支援、国際連携の強化、情報発信の向上などを通じ、日本における食料イノベーションを加速させることを目指す。

GFIはこれまでに、シンガポール、インド、イスラエル、欧州、ブラジル、アメリカに拠点を置いてきた。今回、日本に新たな拠点を設置することで、代替タンパク質の普及促進を一層加速させていく。

アジアにおけるタンパク質需要の増加

GOOD Meatの培養肉 Foovo(佐藤)撮影 2024年7月下旬

GFIが日本に拠点を設置した背景には、アジアにおけるタンパク質消費の増加がある。2000年以降、世界全体でのタンパク質消費量は40%以上増加しており、その半分以上はアジアによると報告されている

動物タンパク質が土地利用、水使用、排出量の観点から環境負荷を伴うと指摘される中、異なるアプローチでタンパク質を生産する取り組みが注目されている。増加するタンパク質需要に対応するため、植物由来、微生物由来、細胞由来、藻類由来などの代替タンパク質の開発が世界各地で進んでいる。

国内では「大豆ミート」という言葉が一般に浸透し、さまざまな植物ミルクが店頭に並ぶなど、植物由来タンパク質は消費者にとって身近な選択肢となっている。

一方、微生物を活用して動物タンパク質と同等のタンパク質を生産する精密発酵や、動物細胞を体外で培養して本物の肉を作る細胞性食品(培養肉)は、一部の国ではすでに販売されているものの、日本国内では法整備が整っておらず、販売はまだ認められていない。

「世界的に先導する技術と機会が日本にはある」

出典:インテグリカルチャー

GFI日本拠点のインテリムディレクターである洪貴美子氏は、これらの新技術による代替タンパク質生産が、持続可能な解決策になり得ることを強調している。

洪氏は、「日本が太陽光発電やその他の再生可能エネルギーを世界に送り出した最先端技術を開発・輸出したように、次世代の代替タンパク質、すなわち、食のクリーンエネルギーに相当するものを世界的に先導する技術と機会が日本にはあります」と述べている。

また、岸田文雄前首相は2023年2月、細胞性食品などの代替タンパク質技術を「持続可能な食料供給の実現の観点から重要な技術だ」と評価し、日本国内のフードテック産業の育成に向けた法整備を進める意向を示した

その一環として、今年1月には、農林水産省が主導する中小企業イノベーション創出推進事業を通じて、インテグリカルチャーCO2資源化研究所UMAMI UNITED JAPANファーメランタなどの国内企業に対して数十億円の資金提供が行われている

2035年までに少なくとも2,900億ドルに達すると見込まれる代替タンパク質市場において、主導的な役割を発揮してきたGFIの日本拠点が設立された意義は大きい。日本のバイオエコノミー戦略の強化、法整備の促進、国際的な連携、双方向の情報発信の強化が期待される。

 

参考記事

世界的に代替タンパク質改革の需要が高まる中、非営利シンクタンクのGood Food Instituteが日本拠点を設立(プレスリリース)

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:GFI

 

関連記事

  1. iPS細胞で培養肉を開発するオランダ企業Meatableがシリー…
  2. VEOSグループ傘下のベルギー企業Naplasol、マイコプロテ…
  3. 代替肉のRedefine Meatがイスラエルで5つの新商品を発…
  4. インポッシブルフーズが香港・シンガポールの食料品店で販売を開始、…
  5. 酵母由来の代替パーム油で2023年上市を目指す英Clean Fo…
  6. スイスの培養肉企業Mirai Foodsがシードで約2億3千万円…
  7. 培養魚のWanda Fishがタフツ大学と独占的ライセンス契約を…
  8. イスラエルの培養肉企業Steakholder Foodsが日本で…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. 2024年 10月 03日

おすすめ記事

ビヨンドミートが新しいビヨンドバーガーを5月に全米小売で発売

代替肉巨人のニュースが止まらない。ビヨンドミートが新しい植物肉バーガーを…

ドイツのBettaF!sh、海藻と植物を使用した代替サーモンSAL-NOMを発売

ベルリンを拠点とする代替魚スタートアップBettaF!shは今月、代替マグロ製品…

インテグリカルチャー、培養肉用資材のB2Bマーケットプレイス「勝手場」を始動

細胞性食品(培養肉)などを作る細胞農業の民主化を目指すインテグリカルチャーは先月…

Tempty Foods、デンマークのセブンイレブン30店舗で試験販売開始|マイコプロテイン食品がコンビニに進出

デンマークのマイコプロテイン企業Tempty Foodsは、デンマークでコンビニ…

NewFishが微細藻類由来のタンパク質粉末を開発、米国スポーツ栄養市場進出を目指す

微細藻類を活用した代替タンパク質を開発するニュージーランドのNewFishは今月…

Remilk、イスラエルで精密発酵タンパク質の認可取得が間近

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は19日、イスラエルのフードテック企業が牛…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/05 15:26時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/06 01:25時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/05 05:20時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/05 21:29時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/05 13:29時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/06 00:35時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP