代替タンパク質の普及促進で主導的役割を担う国際シンクタンクGood Food Institute(グッド・フード・インスティテュート:GFI)は1日、新たに日本拠点「GFI日本」を設立したと発表した。
GFI日本は、政府の代替タンパク質研究への投資機会を特定し、国家バイオエコノミー戦略の策定に向けた取り組みを支援する。また、法整備に向けた支援、国際連携の強化、情報発信の向上などを通じ、日本における食料イノベーションを加速させることを目指す。
GFIはこれまでに、シンガポール、インド、イスラエル、欧州、ブラジル、アメリカに拠点を置いてきた。今回、日本に新たな拠点を設置することで、代替タンパク質の普及促進を一層加速させていく。
アジアにおけるタンパク質需要の増加
GFIが日本に拠点を設置した背景には、アジアにおけるタンパク質消費の増加がある。2000年以降、世界全体でのタンパク質消費量は40%以上増加しており、その半分以上はアジアによると報告されている。
動物タンパク質が土地利用、水使用、排出量の観点から環境負荷を伴うと指摘される中、異なるアプローチでタンパク質を生産する取り組みが注目されている。増加するタンパク質需要に対応するため、植物由来、微生物由来、細胞由来、藻類由来などの代替タンパク質の開発が世界各地で進んでいる。
国内では「大豆ミート」という言葉が一般に浸透し、さまざまな植物ミルクが店頭に並ぶなど、植物由来タンパク質は消費者にとって身近な選択肢となっている。
一方、微生物を活用して動物タンパク質と同等のタンパク質を生産する精密発酵や、動物細胞を体外で培養して本物の肉を作る細胞性食品(培養肉)は、一部の国ではすでに販売されているものの、日本国内では法整備が整っておらず、販売はまだ認められていない。
「世界的に先導する技術と機会が日本にはある」
GFI日本拠点のインテリムディレクターである洪貴美子氏は、これらの新技術による代替タンパク質生産が、持続可能な解決策になり得ることを強調している。
洪氏は、「日本が太陽光発電やその他の再生可能エネルギーを世界に送り出した最先端技術を開発・輸出したように、次世代の代替タンパク質、すなわち、食のクリーンエネルギーに相当するものを世界的に先導する技術と機会が日本にはあります」と述べている。
また、岸田文雄前首相は2023年2月、細胞性食品などの代替タンパク質技術を「持続可能な食料供給の実現の観点から重要な技術だ」と評価し、日本国内のフードテック産業の育成に向けた法整備を進める意向を示した。
その一環として、今年1月には、農林水産省が主導する中小企業イノベーション創出推進事業を通じて、インテグリカルチャー、CO2資源化研究所、UMAMI UNITED JAPAN、ファーメランタなどの国内企業に対して数十億円の資金提供が行われている。
2035年までに少なくとも2,900億ドルに達すると見込まれる代替タンパク質市場において、主導的な役割を発揮してきたGFIの日本拠点が設立された意義は大きい。日本のバイオエコノミー戦略の強化、法整備の促進、国際的な連携、双方向の情報発信の強化が期待される。
参考記事
世界的に代替タンパク質改革の需要が高まる中、非営利シンクタンクのGood Food Instituteが日本拠点を設立(プレスリリース)
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アイキャッチ画像の出典:GFI
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