アグテック

わさびの自動栽培モジュールを開発するNEXTAGEがシリーズAで資金調達

 

国内生産量が減少を続けるわさびの自動栽培に挑むアグリテック企業NEXTAGEが今月、シリーズAラウンド・1st Closeの資金調達を完了したと発表した

場所選ばずに高品質なわさび栽培の実現へ

農林水産省の特用林産物生産統計調査によると、国内のわさび生産量は2020年の2017.1トンから、2023年には1383.6トンへと4年連続して減少している。主要生産地として知られる長野県でも、生産者の高齢化により、2023年の生産量は2020年の半分以下に減少している。

特用林産物生産統計調査に基づきFoovo作成

NEXTAGEはわさびの国内生産量が年々減少している現状をテクノロジーで解決するために、2018年に設立された。わさび田の荒廃に危機感を抱いた代表の中村拓也氏は、2019年より最高峰の国産わさびと言われる真妻(まづま)種の栽培を開始した。

わさび栽培は、湧水が流れる涼しい環境での栽培が困難になっている一方で、耕作地の開発の難しさから新規参入による伸びを期待しにくい状況だとNEXTAGEは指摘する。そこで、同社が開発したのがわさび栽培モジュールだ。促成栽培技術と、管理手法をパッケージしたモジュールにより、場所や経験を問わず、誰もがわさびを栽培することが可能になる

出典:NEXTAGE

同社はわさびの自動栽培実現に向けて、昨年秋にはわさび栽培モジュールの受注を開始。昨年12月、マクニカに「わさび栽培モジュール」を初導入した。

同モジュールは、40フィートサイズの小型の植物工場で、わさび栽培に欠かせない断熱、保湿性などの環境が整えられたもので、露地栽培の約半分の期間でわさびを収穫できるという。モジュール内にはカメラ、センサーが設置され、NEXTAGEが現状分析を行い、栽培作業についてAIおよび人的なサービスを行う

経験や立地の制約が多いわさび栽培にモバイル農業技術を導入することで、日本だけでなく、世界中でわさび栽培が実現する可能性がある。

わさびには、寿司などの日本食での用途だけでなく、抗炎症作用や抗菌特性、消化を助ける働きなど、健康効果も期待されている。こうした要因により、世界のわさび市場は2022年の3億9,810万ドルから2032年までに9億670万ドルに成長すると予測されている

NEXTAGEは今回調達した資金で、研究開発と事業拡大の加速を図る。また、海外進出に向けて、来月シンガポールで開催されるAgri-Food Tech Expo 2024出展する予定だ。

 

参考記事

シリーズAラウンド1st Closeの資金調達を実施

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:NEXTAGE

 

関連記事

  1. 省スペースで野菜30個を栽培できるGardyn|スマートでコンパ…
  2. Fresh Insetがペルーで鮮度保持ソリューション「Vidr…
  3. 米食品大手Mars、CRISPRでカカオ開発加速へ──Pairw…
  4. 「米ぬか」をタンパク質源に:食糧と競合しない米タンパク質で収益性…
  5. 量子ドットを活用して温室フィルムを開発するUbiQD、電気を使わ…
  6. ポーランドのFresh Insetが開発した鮮度保持シール「Vi…
  7. コーヒー副産物のアップサイクルに取り組むKaffe Bueno、…
  8. 鮮度延長コンテナを開発した米RipeLocker、エクアドル進出…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. 2024年 10月 09日

おすすめ記事

ミツバチを使わない「本物のハチミツ」を開発する米MeliBio

↓ラジオ音声はこちらから↓(登録不要・ワンクリックで聴けます)…

スイスのPlanetary、菌糸体スタートアップLibre Foodsの中核資産を買収──マイコプロテイン市場での存在感を強化

スイスのフードテック企業Planetaryが、スペインの菌糸体スタートアップLi…

微生物発酵でシーフードを開発するAqua Cultured Foods、2022年の市場投入を目指す

アメリカを拠点とするAqua Cultured Foodsは、微生物発酵技術によ…

高級培養肉Orbillion Bioが日本初登壇|Food-Tech Webinar Fall 2021参加レポート

株式会社アドライト社が代替タンパク質の可能性にフォーカスしたセミナー「Food-…

南米を代表するチリのフードテック企業NotCo、シェイク・シャック創業者ダニエル・マイヤー氏から支援を受ける

アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏から支援を受けるチリの代替ミルク企業NotCoが…

単細胞タンパク質を開発する独MicroHarvest、ポルトガルにパイロット工場を開設、来年製品の発売へ

ドイツの単細胞タンパク質企業MicroHarvestは今月、ポルトガル、リスボン…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/17 15:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/18 02:17時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/18 05:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/17 21:55時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/17 13:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/18 01:12時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP