東京・熊本を拠点とするDAIZエンジニアリングは、食品原料ソリューション企業ICL Food Specialtiesと共同開発した新たな大豆タンパク質を来年、欧州で販売する。
二社が共同開発した「ROVITARIS SprouTx」は、独自の発芽技術を用いて代替肉、代替魚向けに開発されたもので、豆っぽい風味や苦味がなく、「おいしさ」、「食感」、「栄養価値」に優れたものだという。
「ROVITARIS SprouTx」は今月、ドイツのフランクフルトで開催された「Food Ingredients Europe 2024」で披露された。二社は2025年の販売開始を予定している。
DAIZエンジニアリング、来年に新大豆タンパク質の欧州販売へ
DAIZエンジニアリングは、ミラクルミートで知られる熊本企業DAIZが今年1月、販路拡大・海外展開の加速に向けて設立した新会社。ミラクルミートの生みの親、落合孝次氏が代表取締役社長を務める。DAIZは2025年に、ミラクルミートの新工場開設を予定しており、建設は順調に進んでいる。
落合氏は、温度、酸素、二酸化炭素、水、発芽時間など各条件の膨大な組み合わせを試行錯誤して、栄養・旨味・機能性が増大される発芽条件を見出し、独自の落合式発芽法を開発した。
DAIZエンジニアリングは、ハイブリッド製品用の植物性ミルク、卵、肉、魚の事業を進めると同時に、落合式発芽法のグローバル展開を目指している。
その一環として、今年1月、NIZO Food Researchとともに、オランダに「ヨーロッパ発芽フードテックセンター」を開設した。協業ではまず、動物性の乳製品と植物性タンパク質を用いた乳製品を組み合わせたハイブリッド乳製品の開発を行う。
落合発芽法でさまざまな種子を発芽させ、NIZOとその栄養価や消化吸収率を評価し、新たに得られた知見をもとに、新規食品原料を開発していく予定だ。
食感を向上、異風味を低減
今月発表されたホワイトペーパーによると、「ROVITARIS SprouTx」は環境条件を制御した発芽工程と押出工程を統合することで、肉の食感を忠実に再現した繊維構造を有している。
この繊維構造中にある空隙により、水や油などの吸収能力が高く、また、噛んだ時の放出能力においても、競合製品よりも良好な比較結果が得られている(上記グラフ)。これにより食感やジューシーさが向上するという。
一般に、大豆タンパク質では豆っぽい風味が課題とされる。ホワイトペーパーによると、豆っぽい風味の原因は、リノール酸やリノレン酸など不飽和脂肪酸の酸化による揮発性物質の存在による。
「ROVITARIS SprouTx」の場合、発芽中に脂肪がエネルギー源として分解され、脂質濃度が低下するためリノール酸が減少する。結果、異風味の原因となる揮発性物質が減少するため、豆臭さの低減につながっているのだという。こうした特性は、植物食品の総原料コストの20-50%を占めるマスキングにかかるコストの削減にもつながる。
DAIZが進めるハイブリッド戦略
DAIZは昨年8月、畜産・水産業と共存する「ハイブリッド戦略」の一環として、鶏卵と混ぜて使用することを想定したハイブリッド用のミラクルエッグを開発した。同社は、動物性タンパク質と植物性タンパク質を組み合わせる「ハイブリッド戦略」が重要であるとの認識を示している。
DAIZエンジニアリングも、「ミルク、卵、肉、魚」のタンパク質事業においてハイブリッド戦略を提唱している。
今年7月、マイコプロテインで知られるQuornもハイブリッド製品への参入を発表し、「肉を食べない選択肢の支援」ではなく、「肉摂取量を減らすことを支援」する方向へシフトした。
ハイブリッド戦略は、動物性タンパク質を完全に置き換えるのではなく、部分的に置き換えるアプローチであり、規模・速度の面で肉消費削減に寄与するだけでなく、畜産農家にとっては価格高騰への対応策となり得る。このような相互補完的なアプローチにより、消費者は多様な選択肢を得るとともに、業界全体として持続可能性の向上が期待される。
参考記事(プレスリリース)
DAIZ エンジニアリングと ICL Food Specialties は大豆由来のたんぱく質素材 「ROVITARIS® SprouTx™」をヨーロッパ市場向けに展開します
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アイキャッチ画像の出典:ROVITARIS® SprouTx™ White Paper