代替プロテイン

カナダのThe Better ButchersとGenuine Taste、菌糸体と培養脂肪を使用したハイブリッド肉の共同開発へ

 

代替肉を開発するカナダ企業The Better Butchersは、培養脂肪を使用したハイブリッド肉製品の開発に向けて、カナダのGenuine Tasteと基本合意書(LOI)を締結した

Genuine Tasteは細胞培養により動物脂肪を開発するカナダのスタートアップ企業。2社は菌糸体由来のタンパク質に培養脂肪を使用したハイブリッド肉を共同開発する。

培養肉精肉店の設立を目指すThe Better Butchers

出典:The Better Butchers/Genuine Taste

The Better Butchersは世界初の培養肉精肉店を設立することを目指して、2022年9月に設立された。

昨年3月、同社は培養肉の研究開発と並行して、植物性タンパク質・キノコ由来の製品を先に発売し、販売・流通ネットワークの構築、ブランドを確立することを決めた。同社は昨年12月、カナダのCULT Food Scienceにより買収予定であることが報じられている

The Better Butchersは現在、エンドウ豆・ヒラタケを使用した3種類の代替ひき肉製品をオンライン販売するほか、自然派スーパーマーケットChoices Marketなど、カナダの多くの小売店で販売している。今後はアメリカ進出も計画している

The Better Butchersは、ハンバーガーソーセージホールカットなど植物性タンパク質・キノコ由来の新製品の開発にも取り組んでいる。一方で、培養肉の研究開発も継続しており、最初の製品は菌糸体と培養肉/脂肪のハイブリッドになる予定だと公式サイトで言及している

Genuine Tasteとの提携はその一歩となり、プレスリリースでは、培養脂肪を加えることで、The Better Butchers のハイブリッド製品の風味と食感が豊かになるだけでなく、動物を犠牲にすることなく、脂肪酸プロファイル、融点、食感など、従来の動物脂肪の機能性を維持することができると述べている。

培養脂肪で販売認可を取得した企業はまだないが、植物肉の品質や味を向上させる本物の動物脂肪を細胞農業で開発する取り組みは注目されている。

The Better Butchersが培養肉で認可を取得するには数年を要すると予想されるため、先に製品を販売して収益を上げることで、培養肉の研究開発の費用にあてることが可能となる。

The Better Butchersのように新規食品開発と並行しながら、承認が不要な製品で先にブランド確立、販売網を構築する事例はほかにもあり、ハチミツのMeliBio、カゼインのFormo、培養マグロのFinless Foodsなどがあげられる。一方で、All Gのように、新規食品領域に注力するために、初期から並行していた植物肉事業をあえて手放す事例も確認されている。

The Better Butchersの共同創業者兼CEOのMitchell Scott氏は、同社を買収予定のCULT Food ScienceでもCEOを務めているため、資金調達や研究開発において財務的な支援を受けられると考えられる。

培養脂肪を開発する企業はGenuine Tasteに限らず、代表的企業にはイギリスのHoxton Farmsがある。Hoxton Farmsはロンドンにパイロット工場を構え、昨年東京で登壇したMax Jamilly氏は2026年の上市を目指していると語った。

 

参考記事(プレスリリース)

CULT Food Science Acquisition Target The Better Butchers Inc. Signs LOI with Genuine Taste

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Genuine Taste

 

関連記事

  1. イスラエル企業Accellta、細胞性乳脂肪で米国市場進出を狙う…
  2. 【2021年10月】代替シーフードの投資動向/大手、スタートアッ…
  3. Vowの培養ウズラ、豪州・NZで承認──FSANZ「食品基準コー…
  4. 微生物、空気、電気を使ってタンパク質を開発するSolar Foo…
  5. Mogale Meatがアフリカで初の培養鶏胸肉を発表
  6. 【現地レポ】カナダのNew School Foods、ホールカッ…
  7. EUから出資を受けるドイツの微細藻類スタートアップQuazy F…
  8. ネスレも細胞農業による代替母乳産業に参入か?

おすすめ記事

培養肉企業Meatableがオランダに新しいパイロット工場を開設

オランダの培養肉企業Meatableは今月、オランダ、ライデンにあるバイオサイエ…

細胞培養向け試薬を開発する英CellRev、シリーズA調達に至らず事業停止へ

共同創業者・CSOのMartina Miotto氏(出典:Chris Green氏リンクトイン)…

そら豆を原料に代替卵を開発するPerfeggtが約4.9億円を調達

ドイツの代替卵スタートアップ企業Perfeggtは先月、プレシードラウンドの調達…

伝統的なチーズ製法で植物チーズを開発するデンマーク企業FÆRM

デンマークのフードテック企業FÆRMは、伝統的なチーズ製造プロセスと酵素の力で、…

微生物・空気・電気からタンパク質を生産するソーラーフーズ、年内に工場着工、2023年前半に商用生産へ

空気と微生物と電気を使ってタンパク質を生産するフィンランドのSolar Food…

二酸化炭素から動物飼料用のタンパク質を作るDeep Branchが約10億円を調達

二酸化炭素から代替タンパク質を開発するDeep BranchがシリーズAで800…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/17 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/17 02:54時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/17 06:24時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/17 22:15時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/17 14:16時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/17 01:33時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP