2013年に世界で最初に培養肉を発表したオランダで今月、オープンアクセスの独立した2つの細胞農業スケールアップ施設の設立が発表された。
オランダ政府の国家成長基金(National Growth Fund)を通じて設立されたのは、モサミートからスピンアウトされた細胞培養プロセスに重点を置く「Cultivate at Scale」と、精密発酵に重点を置いたNIZOが支援する「Biotechnology Fermentation Factory」の2施設。
2施設の立ち上げにより、企業はコストのかかるパイロットスケールの生産施設への投資を回避でき、細胞農業の原料や製品の商用化が加速される。
モサミートの知見を集約した「Cultivate at Scale」
モサミートが支援するマーストリヒトに位置する「Cultivate at Scale」は、細胞性食品企業に重要なインフラを提供することを目的としている。
同施設では、40~1000リットルまでの使い捨てプラットフォームを使用して、申請、試食、初期市場テスト用のバッチを製造できるほか、ベンチトップからパイロットスケールの研究開発、プロセス最適化、スケールアップ、製造まで、細胞培養企業のあらゆる段階をサポートする設備を備えている。
また、低コスト培地の購入や、規制コンサル、品質管理などのサービスも提供する場となる。
「Cultivate at Scale」のチームはモサミートの元従業員または在職中のスタッフから構成され、モサミートの知見が集約した施設となる。すでに稼働を開始しており、新規顧客を募集している。
NIZOが支援する「Biotechnology Fermentation Factory」
オランダ、エデに位置する精密発酵に重点を置いた「Biotechnology Fermentation Factory」は、NIZOとの協力により設立された。この施設も企業がコンセプトから商品化までにかかる時間の短縮を目的としている。
NIZOの敷地内にある「Biotechnology Fermentation Factory」は、NIZOが有する大規模な食品グレードの下流工程用パイロット工場や、食品アプリケーションセンター、研究所に直結している。これにより、分析、製品開発、プロセス最適化などエンドツーエンドのサポートが可能になるとしている。
顧客は、最大1万リットルの好気性発酵プロセスをスケールアップするインフラにアクセスできる。同工場も現在、新規顧客の受け入れを開始している。
2施設の立ち上げに協力してきた細胞農業オランダ協会会長のMaresa Oosterman氏は、「何年間もの準備を経て、オランダと世界における細胞農業の発展に不可欠なスケールアップ施設を発表できることを嬉しく思います。精密発酵と細胞培養をスケールアップすることで、タンパク質源を多様化させ、将来にわたって食品システムを確かなものにすることができます」と述べている。
オランダのこれらの取り組みは、他国の政府や企業にとってもモデルケースとなる可能性があり、今後の細胞農業の進展において重要な役割を果たすと思われる。
スケールアップを支援する施設では、昨年、スイスでも培養肉・精密発酵を対象とした「The Cultured Hub」が開設された。これは、ミグロ、ジボダン、ビューラーグループの合弁事業であり、企業が設備投資することなく、スケールアップを進められる施設となる。
シンガポールでも、イリノイ大学・シンガポール国立研究財団が支援する精密発酵によるタンパク質、脂肪、ビタミンの生産を目指す「精密発酵・持続可能センター(PreFerS:Centre for Precision Fermentation and Sustainability)」の設立計画が進められている。
参考記事
The Netherlands Invests in the Future of Food with Two New Cellular Agriculture Scale-Up Facilities
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アイキャッチ画像の出典:Cultivate at Scale