代替プロテイン

米Omeatがロサンゼルスで培養肉のパイロット工場を開設

 

ロサンゼルスを拠点とする培養肉企業Omeatは今月、パイロット工場の完成、開設を発表した

カリフォルニア州ロサンゼルス郊外に設置されたパイロット工場は広さ約1400㎡(15,000平方フィート)で、最大10,000Lのバイオリアクターを複数基収容できる。この工場では、年間最大400トン(日産1,095kg)の培養牛ひき肉を生産できるという。

パイロット工場の完成は、今年8月のFBS代替品発売に続くニュースとなった。

今年前半の海外報道によると、OmeatはFDAに書類を提出済みであり、USDAと協議を続けている。パイロット工場の完成は、「複雑なプロセスの大規模な実証を可能にし、規制当局の審査・承認への道を開くものになる」と同社は述べている。

FBSに代わる血漿由来の細胞培養サプリメント「Plenty」

出典:Omeat

Omeatは、組織工学・バイオマテリアルを専門とし、以前はハーバード大学の教授を務めたAli Khademhosseini博士によって2021年に設立された。

Omeatの公式サイトによると、1頭の牛から細胞と血漿のサンプルを人道的な方法で少量採取し、バイオリアクターの中で細胞を成長させる。細胞は、血漿から得られる栄養と成長因子により成長し、筋肉組織となる。培養肉を収穫するまでの期間一週間だという

同社は、血漿を使用することで、ウシ胎児血清(FBS)や人工的に操作された成長因子の使用を回避している。

Omeatはその成果として今年8月、血漿を処理して有効性を高めたFBSに代わる細胞培養サプリメント「Plenty」を発売した。これは、Khademhosseini博士と、ハーバード大学・MITの研究チームが開発したものだ。

「Plenty」は、間葉系幹細胞 (MSC) などさまざまな細胞の再生医療、細胞培養、ワクチン生産に不可欠な成長因子とサイトカインで満たされた細胞培養サプリメントとなる。

Omeatは「Plenty」について、「FBSと同等の効果を持ちながら、数分の1のコストで入手できる倫理的な代替品」だと述べている。

独自の「Farm-to-Table」アプローチ

出典:Omeat

Omeatは新しいパイロット工場で、農場から運ばれたホルスタイン種牛の血漿から「Plenty」を生成し、バイオリアクターの中で牛細胞と「Plenty」を組み合わせて、培養牛ひき肉を生成する。

1頭の牛から週1回血漿を収集することで、年間何頭もの牛に相当する牛肉を生産できるという。長期的には、Omeatのアプローチを農家に導入するなど、既存農家との連携も構想している

Khademhosseini博士は、「私たちは、従来の肉生産に必要なごく一部の資源で、美味しい本物の肉を作ることを可能にする、非常にユニークなFarm-to-Tableのアプローチを開拓しています。これは、世界的に高まる食肉需要を満たす、より人道的でサステナブルな方法です。規模を拡大すれば、Omeat の価格が従来の肉よりも安くなり、世界中で高品質なタンパク質を入手できるようになると確信しています」と述べている

出典:Omeat

昨今、パイロット工場を開設したり、建設計画を発表したりする培養肉企業の数が増えている。

今年だけでも、中国のCellX、オーストラリアのMagic Valley、米Upside Foods、ドイツのBLUU Seafood、スペインのBioTech Foods、オランダのモサミート、マレーシアのCell AgriTech、シンガポールのUmami Bioworks南アフリカのNewform Foodsなどが工場開設または建設計画を発表している。

これまでに発表された情報によると、建設中のものではイスラエルのBELIEVER Meatsの工場が最大規模になると思われる。

 

参考記事

OMEAT COMPLETES CONSTRUCTION OF PILOT PLANT IN ITS STEADY MARCH TO SCALE UP

OMEAT IS AMONG THE FIRST REVENUE-GENERATING CULTIVATED MEAT COMPANIES WITH B2B LAUNCH OF PLENTY, A HUMANE & AFFORDABLE ALTERNATIVE TO FETAL BOVINE SERUM

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Omeat

 

関連記事

  1. 培養肉スーパーミートと欧州大手養鶏企業PHW、培養肉の欧州導入で…
  2. スイスの食品大手ジボダン、ビューラー、ミグロスが共同で培養肉の実…
  3. 代替シーフードのAqua Cultured Foods、スイスの…
  4. 【世界初】米The Every Companyがアニマルフリーな…
  5. スピルリナ由来の代替肉、スナックバーを開発するインド企業Naka…
  6. Mycorena、マイコプロテイン由来のバター試作品を発表
  7. イスラエルのMeaTechが新たに培養豚肉の開発始動を発表
  8. 細胞培養でチョコレートを開発するCalifornia Cultu…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

アレフ・ファームズが培養ステーキ肉「Petit Steak」を発表、年内の販売を計画

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは今月、同社初の製品ブランド「Aleph…

培養シーフードを開発するShiok Meatsが資金調達、シンガポールに生産工場建設へ

培養シーフードを開発するシンガポールのShiok Meatsが、Woowa Br…

ブロックチェーンを活用して透明性の高いサーモン養殖に取り組むKvarøy Arctic

国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の養殖魚生産量は1990年から2018年…

TissenBioFarmが韓国初の細胞農業支援センターで10Kgの培養肉プロトタイプを発表

韓国の培養肉スタートアップ企業TissenBioFarmは先月、韓国初の細胞農業…

代替肉はなぜ必要なのか?代替肉の必要性、分類、現状をわかりやすく解説

ベジタリアン、ヴィーガンでないなら代替肉は必要ないのでは? 日本は…

世界初|MeliBioがミツバチを使わない「本物のハチミツ」を試食会で発表

ミツバチを使わずに代替ハチミツを開発するMeliBioが、世界初となる代替ハチミ…

次回Foovoイベントのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,724円(12/05 10:48時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/05 20:08時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/05 23:31時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/05 17:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/05 09:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(12/05 19:39時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP