昨年8月、豆を使わないエスプレッソ粉「ATOMO COFFEE」が日本に初上陸した。
「ATOMO COFFEE」は、コーヒー生産に伴う森林伐採、二酸化炭素排出量、水使用という環境負荷を軽減するために開発されたビーンレスコーヒー。アメリカ、シアトルを拠点とするATOMO COFFEEが開発した。
通常は廃棄されるデーツ種子をアップサイクルし、レモンやグアバなど植物由来成分、緑茶由来のカフェインを使用している。
現在、日本で唯一「ATOMO COFFEE」を提供しているカフェ&バー「ash zero waste cafe & bar(æ)」を訪れた。
ビーンレスコーヒー「ATOMO COFFEE」を飲んでみた
ビーンレスコーヒーとして話題になった「ATOMO COFFEE」はどんな味なのだろうか。
カフェ「æ」では、「ATOMO エスプレッソ」、「ATOMO マキアート」、「ATOMO ラテ」の3つのメニューで提供されていた。ミルクを加えない本来の味を試したく、「ATOMO エスプレッソ」と「ATOMO ラテ」の2つを注文した。
店舗ではドリンクの提供のみで、商品の販売は行っていない。スタッフがドリンクと一緒に、「ATOMO COFFEE」の商品を実際に見せてくれた。
「ATOMO エスプレッソ」は、本物のコーヒーより酸味がわずかに強めの印象。本物のコーヒーの風味とはやや異なる感じがする。「ATOMO エスプレッソ」は豆不使用だとわかってしまいそうだ。
次に「ATOMO ラテ」を飲んでみる。スタッフによると、オーツミルクと合わせるのがオススメだということで、オーツミルクベースにしてもらった。
「ATOMO ラテ」については、完成度の高さに驚いた。言われなければ、豆不使用だとわからないと思う。シンガポールで飲んだPreferの代替ラテの味に似た印象がある。
「ash zero waste cafe & bar(æ)」での「ATOMO COFFEE」の売れ行きについて尋ねると、豆なしコーヒーに関心のある人だけでなく、テレビで知ったという人からの注文もあるという。
「æ」での「ATOMO COFFEE」提供価格は、「ATOMO エスプレッソ」が530円(税抜)、「ATOMO マキアート」が630円(税抜)、「ATOMO ラテ」が670円(税抜)。マキアート、ラテは通常メニューと同価格で提供されている。
ATOMOの急速な拡大と次の一手:ハイブリッド戦略
Foovoの調査では、2024年5月上旬時点では、アメリカでATOMOのビーンレスコーヒーを導入している店舗は10箇所だった。それから約8ヵ月で、アメリカ71箇所、日本1箇所、イギリス1箇所と、急速に拡大している。
実際に味わったラテの美味しさから、日本国内でも「豆なしコーヒー」「ビーンレスコーヒー」の認知が広がっていくことを期待したい。
ATOMOは現在、店舗で100%の豆なしコーヒーを提供しているが、消費者向け製品としては、昨年より豆なしコーヒーとアラビカコーヒーを1:1でブレンドした粉製品「50:50コーヒー」をAmazonで販売している。
この製品はミディアム、ローストの2種類で、1袋約15ドルでアメリカ国内で販売されている。
このハイブリッド戦略は、コーヒーの環境負荷を軽減するために豆の使用量を減らすことを目的としているのは明らかだ。
代替肉や培養肉の市場でも、コストや味のバランスを取るために同様の戦略が展開されており、豆なしエスプレッソ単体では本物のコーヒーに及ばない部分を補いながら、持続可能なコーヒーの選択肢を広げ、販売の拡大を目指していくのは理にかなっている。
世界で初めてスーパーマーケットで代替コーヒーを販売したオランダ企業Northern Wonderも、Foovoのインタビューでこの戦略について言及していた。
2023年11月、サントリーホールディングスから出資を受けた ATOMOは今月、780万ドル(約12億円)を調達した。Green queenの報道によると、ATOMOは調達した資金で、ハイブリッド製品の海外展開を目指すという。
Green queenが報じたところによると、スターバックスのコーヒーとATOMOの「50:50コーヒー」を比較したブラインドテストでは、スターバックスを選んだ人が12人だったのに対し、ATOMOを選んだ人は22人と、より多くの支持を集める結果となった。
近い将来、カフェ「æ」でも、ATOMOの「50:50コーヒー」が導入されるかもしれない。
店舗訪問日:2025年1月22日
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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影