代替プロテイン

オランダのモサミート、培養牛脂でEU初の新規食品申請を提出

 

オランダの培養肉企業モサミート(Mosa Meat)は今月22日、欧州連合(EU)において培養牛脂の新規食品申請を提出したと発表した

これは、欧州委員会に提出された培養肉関連の承認申請としては2例目となり、培養牛脂では初の申請となる。

今回の申請対象は、培養牛肉ではなく、ハンバーガー、ミートボールなどの代替牛肉製品に植物成分と組み合わせて使用される培養脂肪となる。

培養脂肪申請の背景

培養牛肉バーガーを発表するマーク・ポスト教授(2013年) 出典:Mosa Meat

欧州における細胞性食品の申請は、2024年7月にフランス企業Gourmeyが提出した培養フォアグラに続くものとなる。

モサミートは2013年に世界で初めて培養牛肉バーガーを発表した企業でありながら、なぜ培養牛肉ではなく、培養牛脂の申請を先行させたのか

その理由について、同社は以下の2点挙げている

1つは、欧州独自の規制構造。シンガポールでは製品全体が評価対象となるのに対し、欧州食品安全機関(EFSA)では新規成分ごとに個別の審査が必要とされる。そのため、同社は培養脂肪から始めることを決めた。

2点目として、培養脂肪は風味の「根幹」をなすもので、牛肉に期待される味、香り、口当たりの実現に重要であり、画期的な料理体験に不可欠なことを挙げている

モサミートCEO(最高経営責任者)のMaarten Bosch氏は、「まずは培養脂肪から始めることで、最初のバーガーを消費者に届ける道筋をつけながら、長期的なビジョンを実現していきます」とコメント。

さらに、「最初の製品は、培養成分と植物由来成分を組み合わせたもので、両分野における当社の専門知識を活かしたものとなります」と述べ、まずはハイブリッド製品の上市を目指すことに言及している。

約2年をかけた新規申請

2025年1月23日時点の培養肉の承認・申請状況 Foovo作成(※)

モサミートは約2年かけて、450個のサンプルを処理し、約1,000ページに及ぶ申請書類を提出した

EUの新規食品プロセスでは、申請者から提出された書類はまず欧州委員会で審査され、申請書の有効性が検証される。その後、加盟国に公開され、EFSAがリスク評価を実施する。モサミートによると、リスク評価には約18ヵ月かかると予想される

出典:Efsa

一方、同社はすでにシンガポールでも培養牛肉の新規食品申請を完了している。シンガポールの新規食品ガイドラインによると、通常は新規食品の認可に9-12ヵ月かかるとされているが、近年、シンガポールでの新規食品申請が増えており、審査プロセスが長期化する可能性がある。

今回のモサミートの申請は、Hoxton FarmsCultimate FoodsUpstream Foodsなど、植物肉の味・風味の向上を目指して肉や魚の培養脂肪開発に取り組む欧州企業にとって追い風となるだろう。培養脂肪の承認が進めば、よりリアルな代替肉製品の開発が加速すると期待されている。

Foovoのインスタグラムでは、これまでの培養肉の認可プロセスを図解で紹介している。過去の動向を振り返りたい方はぜひチェックしてほしい。

 

参考記事

Mosa Meat Requests Its First EU Market Authorisation(プレスリリース)

Submitting Our First EU Market Authorisation Request(Mosa Meat ブログ記事)

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat

 

関連記事

  1. オランダ、培養肉の承認前試食の実施を認める 年内に試食会実施へ
  2. ゲイツ氏、ベゾス氏が支援するNature’s Fyn…
  3. 【8/9】培養肉動向セミナー開催延期のお知らせ
  4. ドイツのBettaF!sh、海藻と植物を使用した代替サーモンSA…
  5. Evo Foodsとギンコ・バイオワークス、アニマルフリーな卵タ…
  6. QuornとPrime Rootsが菌糸体由来肉の市場拡大に向け…
  7. 米New Culture、精密発酵カゼイン使用量を50%以上削減…
  8. 中国の培養肉Joes Future Foodが約12億円を調達、…

おすすめ記事

【世界初】The EVERY Companyが動物由来の卵と同等なアニマルフリー卵タンパク質を発表

微生物発酵を活用して卵タンパク質を開発するクララフーズが社名変更を発表した。…

微生物発酵で飲食用のアニマルフリーなコラーゲンを開発する米Geltor、今秋市販化へ

アニマルフリーなコラーゲンを開発するGeltorが、ヴィーガンコラーゲンPrim…

Umami Bioworks、韓国に培養シーフード工場設置へ―2社との戦略的提携を発表

シンガポールの培養シーフード企業Umami Bioworksは今月、韓国に培養シ…

日立造船とNUProtein、成長因子生産に必要な原料の自動製造装置を開発

日立造船はスタートアップ企業NUProteinと共同で、培養肉製造に必要な成長因…

Avant Meatsがシンガポールに新しい研究施設・パイロット工場建設を発表

シンガポールにおけるフードテックが加熱している。シンガポールは昨年12月…

アレフ・ファームズが培養肉のパイロット生産施設を今夏にオープン、宇宙プロジェクトも始動

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは、イスラエル、レホボトに本社を移転した…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

魚ビジネスEXPO2025

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(02/09 14:39時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(02/09 00:17時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(02/09 04:14時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(02/09 20:35時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(02/09 12:45時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(02/08 23:34時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP