アップサイクル

オランダのNoPalm Ingredients、酵母由来油脂の工業生産に成功—12万リットルへスケールアップ

 

オランダのNoPalm Ingredientsは11日、食品業界の副産物を活用した酵母由来の代替油脂の発酵プロセスを、「世界で初めて」12万リットルの工業規模へとスケールアップすることに成功したと発表した

この試験運用は受託製造機関(CMO)で実施され、同社の独自発酵技術および下流処理技術が工業規模で適用可能であることを実証した。

さらに、食品業界の副産物をアップサイクルし、食品グレードの油脂を生産する商業的な可能性が示された。同社によると、酵母由来油脂はパーム油と比較して、二酸化炭素排出量を90%削減、土地利用を99%削減できる持続可能な代替品となるという。

12万Lのスケールアップに成功

出典:NoPalm Ingredients

NoPalm Ingredientsは、地元で生産された循環型の持続可能な脂肪の提供を目指し、2021年にLars Langhout氏Jeroen Hugenholtz教授によって設立された。

同社が代替を目指すのは、日用品の約60%に使用されるパーム油だ。パーム油の需要は年々増加しており、2030年までに2,200万トンの追加需要が見込まれる。この増加は、アイルランドの1.5倍に相当する森林伐採を伴うと同社は指摘する

NoPalm Ingredientsは、ジャガイモなど農業副産物を発酵プロセスにアップサイクルし、酵母由来の脂肪および油脂の代替品を開発している。油脂と脂肪を抽出後に残るバイオマスは、食品やペットフード向けに活用する

同社は2022年、2,000リットル規模での生産に拡大。2023年1月にはオランダ・ワーゲニンゲンに450㎡の研究施設を開設した。さらに同年、コルゲート・パーモリーブユニリーバとの協力により、副産物をブイヨン粉末や石鹸に変換することに成功した。同年6月には、初の社内パイロット施設を設立し、400リットルバイオリアクターを導入して自社生産能力を拡大した

同年10月には、AKKダノンらとの協力により、わずか24時間で酵母由来の脂肪を使用した植物性ヨーグルトのプロトタイプ7kgを生成した。さらに昨年10月、精密発酵カゼインを開発するThose Vegan Cowboysと協力し、酵母由来油脂を使用したアニマルフリーなカマンベルチーズを試作している

出典:NoPalm Ingredients

現在、NoPalm Ingredientsは、食品やパーソナルケア分野での油脂の性能を検証するため、商業パートナーとともに工業規模の試験を実施している。これらの試験は、商業契約の締結に向けた重要なステップであり、同社初のデモ工場の建設準備を進め、商業生産を本格化させるための鍵となる

同社COO(最高執行責任者)のJeroen Blansjaar氏は、今回の工業規模での試験運用の成功について「大きな成果であると同時に、当社初のデモ工場にとって貴重な知見をもたらしました」とコメントしている。

Blansjaar氏によると、研究活動や試験運用の準備と並行し、プロセスの工業化を進めてきたという。現在、デモ工場の初期設計フェーズが完了しており、今回の試験で得られた知見を次のフェーズに反映させることで、初工場の立ち上げをスムーズに進める計画だ。

 

参考記事(プレスリリース)

NoPalm Ingredients Achieves Industry First: Industrial-Scale Yeast Oil Fermentation from side streams at 120,000L.

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:NoPalm Ingredients

 

関連記事

  1. ソーラーフーズ、シンガポールでソレインの販売認可を取得
  2. 菌糸体ベーコンを開発するAtlast Foodが社名をMyFor…
  3. GOOD Meat、シンガポールでアジア最大の培養肉工場を着工
  4. Vivici、精密発酵ホエイでGRAS認証を取得—規制強化が迫る…
  5. 農水省がマイコプロテイン、料理ロボット、代替肉、廃棄野菜活用など…
  6. 中国の培養肉企業Joes Future Food、パイロット工場…
  7. オーストラリアの代替肉企業v2foodが微細藻類由来のヘム様成分…
  8. Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技…

おすすめ記事

米Upside Foodsが新たに培養鶏ひき肉製品を発表

カリフォルニア州を拠点とするUpside Foodsは、新たな製品として培養鶏ひ…

スペインのLibre Foodsが菌糸体由来の代替鶏胸肉を発表、2024年に発売へ

菌糸体を活用して代替肉を開発するスペイン企業Libre Foodsは先月、欧州初…

ユニリーバのBen & Jerry’s、アニマルフリー製品の主原料をオーツ麦へ切り替え

食品・日用品大手のユニリーバは今月、人気の乳製品ブランドであるBen &…

Vowが絶滅マンモスのDNAから培養マンモスミートボールを作製

オーストラリアの培養肉企業Vowは、絶滅したケナガマンモスのタンパク質で作られた…

香港グリーンマンデーの代替豚肉オムニポークが米国上陸

グリーンマンデーが今年後半にもアメリカ市場へ本格参入する。具体的には、グ…

Basil Streetがピザ自販機をアメリカの国際空港に導入、1年半で200の空港へ拡大予定

ピザ自販機を開発するアメリカのBasil Streetは、食品・ドリンクの自動販…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/03 15:49時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/03 02:04時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/03 05:47時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/02 21:49時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/03 13:44時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/03 01:04時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP