アップサイクル

ドイツのマイコプロテイン企業Kyndaが約4.7億円を調達、大手家禽メーカーPHW Groupが出資

 

農業副産物をアップサイクルして食品・ペットフード向けのマイコプロテインを開発するドイツ企業Kyndaがシードラウンドで300万ユーロ(約4億7,000万円)を調達した

ラウンドは、Enjoy Venturesが主導し、欧州最大の家禽メーカーの1つであるPHW Groupと、気候テックに出資するスイスのベンチャーキャピタルClima Nowが参加した。

今回の資金調達は2022年2月のプレシードに続くもので、Kyndaの調達総額は480万ユーロ(約7億5,000万円)となった

Clima NowのCEO・Nathalie Moral氏は、「Kyndaの革新的な菌糸体技術はゲームチェンジャーです。農業副産物を24時間以内にタンパク質に変換することで、温室効果ガスの排出量と水の使用量を削減しています」とコメントしている

EU-Startupsの報道によると、Kyndaは調達した資金で、2025年第2四半期に開設予定のドイツ、イェルムシュトルフの新施設で生産拡大を計画している。

出典:Kynda

Kyndaは2025年の目標として、菌糸体をニッチな用途に留めず、工業規模の工場で大量生産を実現することを掲げている。Green queenの報道によると、PHW Groupとの提携により、Kyndaは7万リットルまでスケールアップするとしており、今回の資金調達はその達成を加速させるとみられる。

2019年に設立されたKyndaは独自の発酵プロセスにより、農業副産物と菌類から、24~48時間でタンパク質と食物繊維が豊富な菌糸体を生成している。農業副産物をアップサイクルすることで、循環型の持続可能な食料生産の実現を目指している

Green queenの報道によると、使用する菌類は欧州の新規食品規制に準拠したものとなる。

PHW Groupとの戦略的パートナーシップについてKyndaは、大きなマイルストーンだとコメント。発酵技術、バイオプロセス、原料開発におけるPHW Groupの専門知識により、Kyndaは生産を拡大し、技術の商用化が加速されると述べている

2020年にドイツで自社ビーガンブランドGREEN LEGEND立ち上げたPHW Groupからの支援により、Kyndaのマイコプロテインが長期的にPHW Groupの製品ラインナップに組み込まれる可能性がある。

出典:Kynda

Kyndaは昨年、食料システムから豚を取り除くことを使命とするドイツのフードテック企業The Raging Pig(2022年設立)と提携した

同社ソーセージは、ドイツのKleine PauseIst mir WurstStrandpauliWurstDurstなどのレストランや、ハンブルクにあるショッピング施設RindermarkthalleにあるスーパーマーケットReweEdekaで取り扱われている。

これらがKyndaのマイコプロテインを使用したものかどうかは公式の発表からは不明だが、The Raging Pigは昨年9月の報道で、2025年初頭に菌糸体を使用したソーセージを発売するとGreen queenに述べていた。このことから、すでに取引のあるレストラン・小売で順次、製品の切り替えを行っていくと思われる。

Foovoの調査ではドイツのマイコプロテイン企業はアメリカに次いで多く、その半数以上は2022年以降に設立されている。

ドイツのマイコプロテイン企業にはInfinite RootsNosh.BioBosque Foodsなどがあるほか、Esencia FoodsKoraloPacifico Biolabs(現在は鶏肉、今後魚と豚肉を対象)などシーフード分野にも取り組む企業が多いことも特徴の1つである。

 

参考記事

German Poultry Giant Backs Mycelium Meat Startup in €3M Funding Round

Fungus for the future: Kynda raises €3 million for fungal protein production

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Kynda

 

関連記事

  1. 培養油脂のPeace of Meatと英ENOUGH、マイコプロ…
  2. 代替母乳のTurtleTree、カリフォルニアに研究施設開設を発…
  3. オーストラリアのVow、南半球最大の培養肉工場をオープン
  4. 精密発酵ホエイ・カゼイン開発の最前線|精密発酵による乳タンパク質…
  5. 精密発酵でカゼインを開発するEden Brewが約37億円を調達…
  6. 代替脂肪セミナー動画-2022年9月開催-
  7. 代替脂肪(油脂)セミナー開催のお知らせ
  8. オーストラリアのNourish Ingredients、植物肉用…

おすすめ記事

食肉生産者を培養肉生産者に変えるドイツ企業Innocent Meatの「Clean meat as a service」

培養肉はクリーンミート、細胞培養肉とも言われ、動物を殺さずに食肉を生産する新たな…

スウェーデンHookedが約6200万円を調達、2021年春にスウェーデンで市販化予定

このニュースのポイント●スウェーデンHooked…

精密発酵でカカオを使わずにチョコレートを開発する独QOAとは

ドイツ、ミュンヘンを拠点とするスタートアップ企業QOAは、カカオを使わないチョコ…

南アフリカの培養肉企業Mzansi Meatが来月、アフリカ発の培養肉バーガーを発表

南アフリカ、ケープタウンを拠点とする培養肉企業Mzansi Meatは2年の研究…

ドイツのAlife Foodsがアニマルフリー培養培地を用いて培養シュニッツェルを開発

ドイツのフードテックスタートアップAlife Foodsは、欧州のスパイス大手F…

イスラエルのMeaTechが新たに培養豚肉の開発始動を発表

3Dプリンターを活用して培養肉を開発するイスラエル企業MeaTechが、培養豚肉…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(02/22 14:44時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(02/22 00:24時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(02/22 04:19時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(02/21 20:41時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(02/22 12:48時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(02/21 23:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP