精密発酵で脂肪を開発する米スタートアップYali Bioは先月、精密発酵技術を活用して開発した代替ココアバターを発表した。
現在、上市に向けてGRASプロセスの準備を進めている。また、チョコレートメーカーと連携して、自社の代替ココアバターを製菓市場に販売・拡大するためのパートナー募集を開始している。
カカオ供給の不均衡が表面化

出典:Yali Bio
2021年に設立されたYali Bioは、再生可能な炭素原料を活用し、精密発酵によって特定の脂質と脂肪に変換している。
同社は2023年後半に精密発酵脂肪を使用したアイスクリームを発表し、昨年2月には精密発酵により母乳に含まれるOPOと呼ばれる脂肪の生成にも成功している。
Yali Bioがチョコレート業界に目を向けた背景には、カカオ供給の不安定さがある。
2024年、世界のカカオ生産の約70%を占める西アフリカでは、気候変動やエルニーニョ現象の影響により、カカオ生産の構造的な問題が深刻化した。その結果、2024年12月にはカカオ価格は1トンあたり12,646ドル(約188万円)と過去最高を記録し、チョコレート業界全体に大きな影響を与えた。
一方、世界のチョコレート市場は2025年に約1,400億ドルに成長する見込みで、ココアバター市場も2021年の約57億ドルから2028年には約85億ドルへと拡大が予測されている。
こうした市場の動向を踏まえ、Yali Bioは過去12か月間にわたり、精密発酵を用いた代替ココアバターの開発に取り組んできた。

代替ココアバターを使用したチョコレート試作品 出典:Yali Bio
同社は、ソフトバター脂肪(soft butterfat)に関する自社の知見を活用し、ココアバターのトリグリセリド組成に近づけることに成功。代替ココアバターの試作品だけでなく、これを用いたチョコレートも試作している。
先月、インペリアル・カレッジ・ロンドンのベゾス持続可能タンパク質センターが主催したイベントで、これらの試作品を披露した。
発酵でココアバター開発を目指す企業の増加

代替ココアバターの試作品 出典:Yali Bio
精密発酵技術を活用してココアバターの代替品を開発する企業は、Yali Bio以外にも増えている。
これまで、Planet A FoodsやSeminal Biosciencesが知られていたが、現在、発酵ココアバターでチョコレート業界への参入を目指すさまざまな動きが確認されている。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Yali Bio