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代替卵「JUST Egg」の欧州導入に向け、イート・ジャストとVegan Food Groupが提携──進展と撤退のある欧州の代替卵市場で、いかに差別化するか

 

米イート・ジャストの代替卵ブランドJUST Eggが、欧州市場への導入に向けて動き出した。

Vegconomistの報道によると、昨年設立されたVegan Food GroupJUST Eggの欧州における独占的な製造権・販売権を獲得し、EUとイギリスでJUST Eggを発売する。

2021年、欧州食品安全機関(EFSA)はJUST Eggの緑豆タンパク質は新規食品要件において安全だと認めた。2022年4月には、イート・ジャストは欧州委員会からの承認を発表した。

承認から約3年。ようやく世界的な代替卵ブランドの欧州市場参入が現実のものとなろうとしている。

Vegan Food Groupは現在、ドイツのリューネブルクにある施設に完全に自動化された生産ラインを構築しており、完成すると欧州最大の植物由来専用施設となるという。AgFunderの報道によると、今年後半に商用生産を開始する予定となる。

欧州の植物性卵企業動向──進む企業、撤退する企業

出典:Eat Just

では、JUST Eggが導入される欧州市場にはどのようなプレーヤーが存在するのか。その動向を調べてみると、複数のスタートアップが参入済みで、その中にはスーパーマーケットなど小売でも本格的に導入を進める企業もあれば、事業を停止した企業もあることがわかった。

たとえば、イギリスの代替卵企業Crackdは、エンドウ豆を主成分とした液状製品を展開し、スクランブルエッグやベーキング用途に対応。イギリス全土のスーパーマーケットASDA導入されている(下記写真)。

2025年4月18日時点 出典:Crackd

Crackdは早ければ今年第2四半期に、アメリカの小売導入を計画している

ドイツのNeggstは、そら豆エンドウ豆などをベースに、白身・黄身を再現した目玉焼きやポーチドエッグ製品を開発

出典:Neggst

現在は外食サービスに特化しており、ドイツ国内のDr. HummusPure Food Café、Katers Köökなどのビーガンレストランやビーガンカフェでの導入を進めている。将来的にはスーパーマーケットへの導入も視野に入れている。

ドイツのPLANT Bは「世界で初めて」ルピナス由来の液状タイプの植物性卵を開発。同社製品はオランダのアルバート・ハインなど大手スーパーマーケットへ導入されており、オランダのほか、ドイツリヒテンシュタインデンマークでも導入が進んでいる(下記写真)

2025年4月18日時点 出典:PLANT B

こうした順調に導入が進む企業とは別に、当初有望視されたものの、事業停止にいたった事例もある。

ドイツのPerfeggtは、そら豆を使用した液体タイプの植物性卵製品を開発し、2022年にはドイツ、オーストリア、スイスで展開すると発表していた

2022年4月にはプレシードで360万ユーロ(当時約4.9億円)を調達するなど、半年間で2回の資金調達に成功し、投資家からの注目度も高かった。しかし、2024年2月、事業停止が報じられた

Perfeggtが事業停止に至った理由は不明だが、同社が開発したそら豆ベースの液状代替卵が消費者の期待する「卵らしさ」に十分届かなかった可能性も考えられる。

このような背景を踏まえると、JUST Eggが欧州で成功するには、すでにある競合製品との差別化欧州の消費者ニーズに合わせた適応力が求められる。

この点で、イート・ジャストは液状製品だけでなく、温めるだけで食べられるJust Egg Foldedや、エンドウ豆をベースとしたマヨネーズ、乳製品フリーのドレッシングなど複数の関連製品を展開しており、さまざまな販売経験を積んでいる。これにより、すでに欧州市場に存在する競合他社と比べても、消費者ニーズの把握や市場適応力の面で優位性があると考えられる。

JUST Eggが一部企業が撤退した欧州市場でどう展開できるかは、今後の注目点といえる。

 

参考記事(前半)

*本記事後半はFoovo独自調査

JUST Egg to Launch in Europe Through Major Partnership With VFG

 

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アイキャッチ画像の出典:Eat Just

 

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