代替プロテイン

インテグリカルチャー、細胞農業用スターターキットを海外初販売|「勝手場」発のキットを海外4大学へ

Foovo(佐藤)撮影 2025年3月

細胞農業の社会実装を目指すインテグリカルチャーは2025年8月18日、海外の4大学を対象に、細胞農業用スターターキットのテスト販売を開始したと発表した。同社にとってスターターキットの海外販売は今回が初めて。

このスターターキットは、住友理工と共同開発したもので、昨年立ち上げたB2Bマーケットプレイス「勝手場Ocatté Base)」で提供している食品グレード原料4種類と培養バッグを組み合わせたもの。シンガポール国立大学には細胞農業研究用として納入され、ブラウン大学、ジョン・ホプキンス大学、トリノ工科大学へは国際学生コンペティション「Food4Thought」の最優秀者への贈呈用に出荷された。

同社によれば、従来はグラム単位の培養肉(細胞性食品の1種)を生産する場合でも、専用のバイオリアクターや高度な培養技術が必要とされ、研究開発における大きなハードルとなっていた。今回のキットを使うことで、既存の実験室環境さえあればグラム単位の試験生産が可能となり、事業性を検証するための試作も、より手軽に進められるようになるという

出典:インテグリカルチャー

「勝手場」は2024年6月に始動した会員制B2Bマーケットプレイスで、細胞農業に必要な食品グレード資材を扱うメーカーと、細胞農業に関心を持つ企業をつなぐ役割を果たしている。誰もが気軽に細胞農業に参加できる世界の実現を目指しており、昨年11月には培養バッグと培養資材を組み合わせたスターターキットを「勝手場」の最初の製品として発売した。対象は企業や個人を含むアカデミアで、サービス開始以降は大手企業を中心に利用が拡大している

インテグリカルチャーはこれまでにも、低コストで血清様成分を作出する独自技術の「CulNet System」や、食経験のある原材料のみを使用した培養資材の開発、CulNet Systemを使用した培養肉の受託型共同研究開発サービス「CulNetパイプライン」の展開、16社(2024年11月時点)が参画するオープンイノベーションの「CulNetコンソーシアム」の設立など、細胞農業の社会実装に向けた取り組みを展開してきた。

勝手場」はこうした取り組みにに加え、同社製品のみならずコンソーシアムに参加する企業の成果物も取り扱うことで、細胞農業への門戸をさらに広げる役割を担っている。

Foovoの認識では、スタートアップ主導のコンソーシアムを基盤に、その成果物を流通させる細胞農業に特化したB2Bマーケットプレイスは、現時点で海外に同様の事例を確認できておらず、独自の取り組みである。今回の海外販売を通じ、培養肉の試験生産をより手軽で身近なものにするスターターキットの普及が加速する可能性がある。

さらに今月、インテグリカルチャーは新たな進展として、卵の細胞を培養した細胞培養上清液を活用した化粧品原液「CELLAMENTセラメント)」を韓国で化粧品成分として登録した。これにより、韓国でセラメントを使用した化粧品開発やOEM受注など、新たな海外市場での展開が期待される。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影 2025年3月

 

関連記事

  1. 代替脂肪セミナー動画-2022年9月開催-
  2. 酵母由来の代替油脂を開発する英Clean Food Group、…
  3. オーストラリアのVow、南半球最大の培養肉工場をオープン
  4. Vowがシンガポールで培養ウズラ肉の販売認可を取得、今月レストラ…
  5. 培養肉生産用のアニマルフリーな血清を開発するMultus Med…
  6. 牛を使わずに乳製品を開発するDe Novo Dairy|南アフリ…
  7. アジア初の精密発酵CDMO企業ScaleUp Bioが間もなく施…
  8. 【9/7】培養うなぎセミナー開催のお知らせ【池田大介先生ご講演】…

おすすめ記事

ジャガイモで卵白タンパク質を開発するPoLoPoが約2.3億円を調達

イスラエルの分子農業スタートアップPoLoPoは先月、プレシードラウンドで175…

培養魚を開発するAvant MeatsがシンガポールのA*STARと提携、共同研究所の設立を発表

培養魚を開発する香港のAvant Meatsが、シンガポール科学技術研究庁(A*…

ADMが精密発酵スタートアップNew Cultureと戦略的パートナーシップを締結、スケールアップを支援

精密発酵により持続可能なチーズを開発する米New Cultureは17日、代替乳…

米The Every Company、精密発酵で作られた史上初の液状卵EVERY Eggを発表

精密発酵で卵白タンパク質を開発する米The Every Companyが、鶏に依…

ブラジル初の培養脂肪企業Cellva Ingredientsが約2億円を調達

南米初の培養脂肪企業Cellva Ingredientsがシードラウンドで650…

代替エビを開発するNew Wave Foodsが約18億円を調達、3月末までに飲食店で提供予定

植物ベースの代替魚開発に取り組むNew Wave Foodsが、シリーズAラウン…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/08 16:13時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/08 02:48時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/08 06:21時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/08 22:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/08 14:14時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/08 01:31時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP