出典:RespectFarms
オランダで世界初の細胞性食肉(培養肉)農場の建設に向けたコンソーシアムが結成された。
RespectFarms、ワーゲニンゲン大学、モサミート(Mosa Meat)、アレフ・ファームズ(Aleph Farms)、Multus、Kipster、Royal Kuijpersの7者で構成されるCRAFTコンソーシアムは今月3日、世界初となる細胞性食肉農場の設計・建設を開始したと発表した。
細胞農業と伝統的な農業を融合させ、農家主導で地域に根差した食肉生産の実現を目指している。これにより農家が細胞性食肉技術を活用し、事業を多様化できるようになる。
農家主導の新しい食肉生産モデル

出典:RespectFarms
この取り組みの大きな特徴は、農家が主体となる点にある。
RespectFarms共同創業者のRalf Becks氏は「農業でうまく機能しているものを活かしながら、新しい技術と組み合わせることで、市場投入までの道のりとインパクトを加速させます」とプレスリリースで説明する。
CRAFTの狙いは、世界的な課題を“農場サイズ”に落とし込むことだとBecks氏は言う。課題を小さく分解することで「解決可能になります。その成功モデルを世界に広げ、より大きなインパクトをもたらします」と述べ、「肉や家畜の代わりに技術を輸出するのです」と将来像を語った。
こうした取り組みは、農業の新たなビジネスモデルを生み出すものとして注目される。
モサミートの共同創業者兼COOであるPeter Verstrate氏は「細胞性食肉と伝統的な農業を融合させる初めての試みであり、地元で生産・販売される製品を通じて、消費者に“本物の肉”の体験を提供できるようになります」とプレスリリースで述べた。
また、「このプロジェクトは、一方では全く新しく、他方では何世紀も続くビジネスモデルを実現し、農家にも私たちにも、農業に新たな視点をもたらすでしょう」と付け加えた。
プロジェクトでは、細胞性食肉が伝統的な家畜や作物と共存することで、レジリエンスと持続可能性に優れた食料システムを構築できることを実証する。Becks氏が述べるように、その成功を“技術”としてグローバルに展開していけば、世界各地で農家を主体とした、地域に根差した持続可能な食肉生産の実現に近づくこととなるだろう。
本プロジェクトはEIT Foodの共同出資を受け、400万ユーロ(約6億9,000万円)申請のうち最初の200万ユーロ(約3億4,600万円)を獲得した。
Becks氏は、「実現可能性の調査と設計を終え、オランダの農場でパイロット施設を立ち上げるため、EIT Foodから200万ユーロの資金調達に成功したことを大変嬉しく思います」とリンクトインで述べている。
農家を細胞性食肉生産の中心に据えるスタートアップも

出典:MEATOSYS GmbH
欧州ではCRAFTのほかにも、同様に「農家主導型」の食肉生産を構想するスタートアップが登場している。
ドイツのMEATOSYSは、農家が自らの土地で細胞性食肉の生産に直接携われるコンテナ型の新たなシステムを開発している。同社CEO兼共同創業者のAlexander Heuer氏は、コンテナが完成したら、最初に使用したいという複数の農家とすでに基本合意書(LOI)を交わしているとFoovoのインタビューで述べた。
日本でもダイバースファームが、鶏舎の横に細胞性食肉工場を設置し、既存の畜産業との共存を目指す構想を掲げており、CRAFTの取り組みは農家を主体とした新しい食肉生産の実証モデルとなることが期待される。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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