中東で精密発酵のスケールアップに向けた新たな動きが確認された。
アブダビ投資庁(ADIO)は今月23日、アブダビにおける発酵タンパク質のエコシステムを進展させるため、精密発酵スタートアップの米The EVERY Companyおよびオランダ企業Viviciとの戦略的提携を締結した。
この提携は、昨年始動した食料安全保障と水不足に取り組むアブダビのクラスターAGWA(AgriFood Growth & Water Abundance)にとって重要な節目となる。
AGWAを統括するADIOのFatima Al Dhaheri氏は、「発酵タンパク質におけるグローバル大手と提携することで、この地域に全く新しい産業を生み出します。これは、高品質な栄養を提供し、投資を呼び込み、専門的な雇用を創出するものです」とプレスリリースで述べた。
提携では、工業規模となる400万リットルの生産施設をアブダビに設立することを検討し、タンパク質サプライチェーンにおけるアブダビの存在感を高める狙いがある。
ハラール認証を満たす施設の設計、資金調達、商用化に重点を置くほか、二社以外の発酵タンパク質企業が今後参加できるよう、マルチテナント型の設計にする予定だ。UAEにおける規制の枠組み構築も支援する。パートナー企業はUAEの包括的経済連携協定(CEPA)を通じて、アジア、アフリカ、欧州への輸出の機会も模索するとしている。

出典:Vivici
フォンテラとDSM Fermenichにより設立されたViviciは今年5月、アメリカで60万リットルの生産施設建設を進めるLiberation Bioindustriesとの製造提携を発表した。後者はアメリカに続く第2の工場として、サウジアラビアでの建設計画を進めている。
Viviciは3月に精密発酵ホエイでGRAS認証を取得し、北米でのB2B供給を開始(具体的な上市事例は確認できていない)しており、Liberation Bioindustriesとの提携を通じて2026年に商用生産を開始する予定だ。

出典:The EVERY Company
The EVERY Companyは卵白タンパク質を開発する精密発酵企業で、すでにアメリカで複数製品に配合した実績を有する。同社はアメリカで複数のGRAS認証を取得しており、AgFunderの過去報道によるとイギリス・EUでも新規食品申請を提出している。
今回の2社のAGWAとの提携は、精密発酵タンパク質のグローバル展開に向けた重要な一歩であり、精密発酵の課題である生産能力の拡大につながるものとして注目される。AGWAは昨年6月、細胞性食肉(培養肉)企業のBeliever Meatsと提携を締結した。
一方で、中東では発表段階にとどまるプロジェクトも複数ある。これまでに、細胞性鶏肉のGOOD Meat、精密発酵のChange Foodsなど中東で工場建設を発表する動きがあったものの、進捗は確認されていない。
今回のアブダビでの構想が、実際に400万リットル規模の発酵施設として稼働し、他社との連携や輸出体制にまでつながるのか。数年を要するのは必須だが、その実現性が今後の焦点となるだろう。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:ADIO



















































