代替プロテイン

AIを活用するチリ企業The Live Green Coが植物性アイスクリームを発売

 

代替タンパク質に使われる原料は、大豆、えんどう豆、ひよこ豆から、菌糸体など菌類を使うもの、さらには微生物に生産工場の役割を与えタンパク質を生産させるものなど、多岐にわたる。

この中で、チリのスタートアップ企業The Live Green Coの取り組みは新しい。

同社が使うのは植物は植物だが、AIを組み合わせている。

The Live Green CoはAIエンジンを活用して植物性の代替タンパク質を創り出すだけでなく、開発期間を90日間まで短縮することに成功している。

AIを活用してよりクリーンな植物性食品を開発するチリスタートアップ

同社はこのほど、100%植物ベースのアイスクリームの開発を発表。

出典:The Live Green Co

これはバナナ、アボカド、ひまわりの種などの原料を使用している。

The Live Green Coは独自に開発したAIのレコメンドエンジン「Charaka」を活用し、「次世代」の植物ベースタンパク質を開発している。

Charakaは、インドの植物科学、機械学習、植物の栄養データ、バイオテクノロジーを活用し、肉、乳製品、乳化剤などに代わる天然植物を提案してくれる。

AIを活用することで、これまでであれば1年かかっていた研究開発を90日まで短縮できるという。

今回発表されたアイスクリームは、100%ヴィーガンなだけでなく、グルテン、大豆、乳糖を含まないため、アレルギーのある人でも食べられる。

出典:The Live Green Co

新作のアイスクリームは、チリ最大のスーパーマーケットJumboで販売されている。

味はチョコチップ、チョコレートアーモンド、ベリーの3種類。

共同創業者のPriyanka Srinivas氏は、植物ベースの代替食品の開発にAIエンジンを活用することは、既存の食品システムに変革をもたらすうえで重要だと考えている。

現在、45万種を超える植物、1000万の化合物、10億を超えるデータポイントを「次世代の植物ベース食品」を創り出すためにマッピングできるという。

既存の植物ベース食品をよりクリーンに

The Live Green Coは3名のインド人が設立したスタートアップ企業。

チリのスタートアップアクセラレータープログラムに参加するため、2017年に拠点をチリに移した。

The Live Green Coはアイスクリームのほかに、パテやパンケーキをつくれる粉末を開発している。

植物性パテについては、動物肉を模倣することに関心はなく、既存の植物ベース食品よりも健康的で最小限に加工された代替食品を作りたいと考えている。

「Burger Mixes」 出典:The Live Green Co

同社の粉末「Burger Mixes」からできる植物ベースパテは、いわゆる「代替肉」のイメージを軽く裏切ってくれる

Burger Mixes」に水を加えて混ぜて1分おき、形を整えて焼くだけ。粉末から焼きあがった代替パテになるまでわずか8分だ。

原料は、えんどう豆、ひまわり油、キノコ、ひよこ豆、黒いんげん豆、レンズ豆、タピオカ、トマト、亜麻、米、タマネギ、にんにく、生姜などすべて植物原料を使用している。

出典:The Live Green Co

パンケーキミックスも、水と油を混ぜてしばらく置いてから焼くだけ。グルテン、大豆、コレステロールを含まないパンケーキだ。

パンケーキミックスは、クッキー、マフィン、ケーキを作ることもできる。

AIを活用するもう1つのチリスタートアップ企業

The Live Green CoはAIエンジンCharakaを使った植物ベース食品の開発だけでなく、今後数年かけて企業とも提携し、既存の食品産業をさらに破壊することを目的としている。

出典:The Live Green Co

同社のようにAIを駆使して、新しい食品の創出に取り組む企業に同じくチリを拠点とするNotCoがいる。

NotCoはGiuseppeという独自のAIを搭載した機械学習ソフトウェアを開発し、独自に蓄積した膨大な植物プロファイルから、動物性タンパク質にマッチする理想的な植物成分を割り当てる

植物を原料にしているものの、植物を主役として使うのではなく、最終ゴールとなる肉や乳製品に最適な植物成分の組合せに焦点をあてている点で、The Live Green Coと似ているといえる。

NotCoはアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が出資するスタートアップの1つで、昨年11月には全米のホールフーズで販売を開始している。

The Live Green Coは海外展開など今後の具体的な展望については明らかにしていない。

出典:The Live Green Co

クランチベースによると同社のこれまでの調達総額は110万ドル(約1.1億円)

最新のラウンドは2020年2月のシードで100万ドルを調達しており、Endurance Investmentが主導した。

 

参考記事

AI-Powered Chilean Startup The Live Green Co Launches Plant-Based Ice Cream With 90-Day R&D

Chilean start-up blends ancestral science with modern tech for ‘minimally processed’ plant-based foods

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:The Live Green Co

関連記事

  1. 米Mission Barns、米国で世界初の培養脂肪の販売認可を…
  2. 米Bond Pet Foods、精密発酵由来の動物タンパク質2ト…
  3. Oobliが精密発酵モネリンでGRAS認証を取得|ブラゼインに続…
  4. ドイツのBluu Seafoodが欧州で初めて培養魚製品を発表、…
  5. 藻類で培養肉用培地のコストダウンを図る東京女子医科大学、培養廃液…
  6. オーストリアのRevo Foods、世界最大の食品向け3Dプリン…
  7. カナダのNew School Foodsが約8.6億円を調達、ト…
  8. ドイツのBluu Seafoodと中国のCellXが「細胞農業を…

おすすめ記事

仏Bon Vivantが精密発酵ホエイでGRAS自己認証を取得|アメリカ認証状況を時系列で振り返る

フランスの精密発酵企業Bon Vivant(現Verley)は今月、精密発酵で生…

Formoが微生物発酵によるアニマルフリーなクリームチーズを発表

ドイツの精密発酵スタートアップFormo(旧称Legendairy Foods)…

米Liberation Labs、Viviciと製造パートナーシップを締結 ─ 2026年にリッチモンド工場の稼働開始へ

出典:Liberation Labs(2024年時の建設状況)米インディアナ州リッチモンドで60…

培養肉でメキシコ初のスタートアップMicro Meatは量産化段階にはいる

細胞農業の進歩により培養肉がスーパーの棚に並ぶ日も近いのかもしれない。M…

上海の培養肉企業CellXがパイロット工場を開設、年内に米・シンガポールで申請へ

上海を拠点とする培養肉企業CellXは今月、中国初の大規模なパイロット工場の完成…

オーストラリアのAll G Foods、植物肉ブランドを切り離し、精密発酵乳タンパク質の開発に注力

精密発酵でラクトフェリン、カゼインを開発するオーストラリアのAll G Food…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/06 16:13時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/06 02:48時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/06 06:20時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/05 22:12時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/06 14:13時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/06 01:31時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP