シンガポールのSophie’s Bionutrientsは微細藻類を使った植物性パテを開発したことを発表した。
微細藻類は数μm~数10μm(1μmは0.001mm)の大きさの非常に小さな生物をいう。海中に浮遊しているものや、海底の岩などに付着しているものがある。
身近な例では植物プランクトンも微細藻類に含まれる。
プレスリリースによると、Sophie’s Bionutrientsの微細藻類を使ったパテは、60gあたりのタンパク質は25gで、動物性の肉や魚に含まれるタンパク質の2倍以上という含有量になるほか、ヒスチジン、ロイシンなど必須アミノ酸を9つ含んでいる。
動物性肉に多く含まれるビタミンB12も豊富に含んでいる。
原料にはクロレラなどさまざまな微細藻類を使用する。
パテに使用される微細藻類はシンガポール食品当局と欧州食品安全機関によって承認されたものとなる。
同社の代替パテは微細藻類を原料に、同社の特許出願中の技術を使用する。
まず、1個だけの細胞からなる単細胞微細藻類をバイオリアクターで培養してタンパク質を生成する。このプロセスにかかる時間は3日間で、時間をさらに短縮できるようになれば、使用する水やエネルギーを節約できるという。
このタンパク質をスケールアップして、タンパク質が豊富なプラントベース粉末を生成する。
肉らしい噛み応えを再現するため、粉末を押し出して微片にし、これをパテの形にしている。さらに、パプリカ、ナツメグ、チョウジ、ローリエなど10種類の香辛料で味付けする。
同社の代替タンパク質で注目したいのは、微細藻類を使うこと以外にアップサイクルもかねていること。
都市部でも微細藻類由来のタンパク質を生産できるように、ビールの醸造所で出る使用済みの穀物や、豆腐の生産で生じるオカラ、製糖所で発生する糖蜜などを活用している。
共同創業者でありCEOのEugene Wang氏の子供がシーフードアレルギーを持っていたことがきっかけとなり、Sophie’s Bionutrientsは誕生した。
社名の「Sophie」はWang氏の娘の名前からとられている。
動物を使わず、海にいる生物から栄養を得る方法を模索し、微細藻類を使って代替パテを開発する世界で最初のフードテック企業となった。
Sophie’s Bionutrients が代替肉の開発に取り組む背景には、2050年に約100億人に達する世界人口を満たすには既存の畜産肉には限界があると考えていることのほか、アレルギーに苦しむ人々に新しい選択肢を提供したいという願いもある。
Sophie’s Bionutrientsのように藻類を原料に代替タンパク質に取り組む企業は増えている。
アメリカのBack of the Yards Algae Sciencesは植物肉をアップデートさせるためのスピルリナ由来のヘムを開発している。
微細藻類ではないが、海藻の1つである紅藻を原料にした代替肉の開発に取り組むアメリカのTrophicもいる。インドのNakaFoodsはスピルリナを使った代替チキン、スナックバーを開発している。
現在、Sophie’s Bionutrientsが1週間で生産できる藻類パテは1バッチ20~100個となる。
生産量はまだ多くないが、今年には生産施設がオープンする予定であり、今後は技術改良、設備投資によって生産能力がアップしていく可能性は十分ある。
代替タンパク質に集中する投資の増加傾向からも、外部からの出資によって大量生産が可能になれば、少ない土地・水で生産できる藻類ベース肉は有力な食料供給源となりうる。
参考記事
Sophie’s Bionutrients Unveils The World’s First Plant-Based Burger Patty Made From Microalgae
Sophie’s Bionutrients Debuts New Burger Made from Microalgae
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アイキャッチ画像の出典:Sophie’s Bionutrients