ベルリンを拠点とするスタートアップFormoは微生物を使ってアニマルフリーなチーズを開発している。
最近、社名をLegenDairyからFormoに変更し、年内に最初の商品を発表することを明らかにした。
精密発酵で作られるアニマルフリーなチーズ
Formoは牛ではなく、微生物を活用して本物そっくりなチーズを開発する。
これは近年、フードテックで注目されている「微生物発酵」の中でも「精密発酵」と呼ばれるもの。
プロセスはビールの醸造に似ているが、プログラムされた微生物がアルコールの代わりに乳タンパク質を生成する。
発酵槽の中で微生物に栄養分をあたえて温度、pHなど条件を整えると、微生物が乳タンパク質を生成する。
十分な乳タンパク質が生成されたら、これに植物性の脂肪、炭水化物、塩などを添加して、最終製品の元となる濃縮物をつくる。
次に従来のチーズの製法プロセスのように、酵素や熱によって濃縮物を凝固させる。ここまでできれば、あとはフレッシュなチーズとしたり、熟成させて独特の風味のあるチーズにしたりする。
最終産物には微生物は含まれない。
公式サイトによると、Formoは今年夏にシェフとコラボして製品の試食会イベントを実施する。さらに、同社が開発するような培養による乳製品に対する消費者の受容度も調査するとしている。
まずは、リコッタチーズなどヨーロッパのチーズに注力する。
Formoのように、本来であれば動物から収穫される産物を、特定の細胞を培養することにより生産する方法を広義では「細胞農業」という。
ここでいう細胞には広義には幹細胞、細菌などさまざまなものが含まれ、その中でもFormoのように「作り手(生産工場)」に微生物を使用するのが精密発酵となる。
精密発酵の最も有名な例として、1970年代に開発されたインスリンがあげられる。
2030年までに米国の家畜牛数は半減
Rethink Xのレポートによると、精密発酵によるタンパク質の生産コストは2030年までに急激にさがるのに対し、家畜牛から牛乳を生産するコストは2倍になる(上記グラフ)。
つまり、2030年には牛を飼育して牛乳を生産するよりも、精密発酵により乳製品を作る方がコストを50~80%抑えられることになる。
さらにレポートは、精密発酵が乳産業にあたえるインパクトによって、2030年までに米国の家畜牛数が半減するとも指摘している。
こうした背景のなか、近年、精密発酵に取り組むスタートアップが世界中で急速に増加しており、アイスクリームですでに市販化しているパーフェクトデイ、モッツアレラとチェダーチーズを開発中のChange Foods、イギリスのBetter Dairy、ハチミツを開発するMeliBioなどがある。
これらの企業は過去1年にいずれも資金調達を実施している。
Formoのように微生物を活用して作られる乳製品は、牛から最終製品を作るよりも土地、水、飼料を大幅に減らせるというメリットがある。
このほか、牛を飼育する必要がないため、製品化までにかかる時間が短縮し、生産施設があれば都市部でも乳製品を生産することができる。
Formoは年内に最初の商品を発表し、2023年に市販化したいと考えている。
それに先立ち、今年夏にプラントベース料理に取り組む初のミシュラン星付きシェフ、Ricky Saward氏とコラボしてアニマルフリーチーズの試食会を実施する。
クランチベースによると同社がこれまでに調達した総額は470万ドルとなる。
参考記事
LegenDairy Rebrands to Formo, Announces Plans to Bring Products to Market