日本では大豆ミート、ソイミートという言葉が浸透しているが、海外では代替肉の原料=大豆という図式はもはや成り立たない。
えんどう豆など豆類が大豆に限定されないだけでなく、小麦、ピーナッツ、微生物をベースとする代替肉も登場している。
特に押さえておきたいトレンドが、代替タンパク質の第3の柱と注目される微生物発酵の1つに分類される「菌糸体ベースの代替肉」だ。
菌糸体でステーキ肉開発に挑むLibre Foods
スペインの代替肉スタートアップ企業Libre Foodsは発酵技術によって、菌糸体を原料にブロック肉の開発に挑戦している。
菌糸体とは、糸状の菌類が分岐して広がった集合体を指す。
現在、Libre Foodsは菌糸体を原料に牛ステーキ肉の開発に注力しているが、今後は鶏肉やシーフードまで商品種類を増やしたいと考えている。
Libre Foodsは2020年に設立されたスペイン、バルセロナを拠点とするスタートアップ企業。
菌糸体をベースに作られる代替肉は、室内施設で1年を通じて生産できるほか、成長が速く、肉らしい繊維構造を持つことを特徴とする。
畜産肉の生産と比較して必要となる土地・水が少なく、排出される温室効果ガスが少ないことから持続可能な食料システムとして注目される。
同社に関する詳細な情報は現状ではほとんどないが、まず欧州市場に投入後に、海外展開を考えている。市場投入の時期については明かされていない。
資金調達でステーキ肉プロトタイプの開発へ
Libre Foodsは、調達額は不明だが、代替タンパク質に特化したエンジェルリスト初のローリングファンドであるSustainable Food Ventures(SFV)から出資を受けている。この資金で、チームを拡充し、研究所を構え、最初の菌糸体ステーキ肉のプロトタイプを開発する。
Libre Foodsは、菌糸体をベースにステーキ肉を開発するヨーロッパで数少ない企業となるが、世界的に同様の取り組み事例はほかにもある。
アメリカのMeati Foodsも菌糸体を使ってステーキ肉を開発している。レストランでの試食会も実施しており、D2Cで消費者向けにリリースする準備を進めている。同社の菌糸体ベースのステーキ肉、チキンは写真では本物と区別のつかない仕上がりとなっている。
同じくアメリカのAtlast Foodも菌糸体を原料に代替ベーコンを開発しており、先月に約43億円を調達した。同社は現在、アメリカ最大となる菌糸体工場の建設を進めている。
ドイツのMushlabsは菌糸体を原料に代替タンパク質を開発している。
菌糸体に限定しなければ、同じ微生物発酵に取り組む企業は1ヶ月に1社ペースで増えており、昨年にこの分野に集まった投資額は過去最高を記録した。
アニマフリーなアイスクリームを開発する微生物発酵の代表格パーフェクトデイ、ビル・ゲイツ氏、アリババ創業者ジャック・マー氏などの支援を受けるNature’s Fynd、初ラウンドで約12億円を調達した脂肪を開発するNourish Ingredientsなどがある。
Boston Consulting Group(BCG)とBlue Horizon Corporation(BHC)の最新のレポートは、代替タンパク質は現在はまだ、味、食感、価格の3点で動物性タンパク質と同等レベルに達していないと指摘したうえで、微生物を使った発酵タンパク質は2025年までに上記3点で畜産動物によるタンパク質に匹敵すると予測している。
創業者・CEOのAlan Iván Ramos氏は次のようにコメントしている。
「動物を消費することは、地球を食べることになります。
人々が楽しめる、優れた代替タンパク質を生産することは、現在の食料生産が私たちの環境に及ぼしている負担を取り除き、増え続ける世界人口のための食料安全保障を保証するための唯一かつ最も効果的な方法です」
(Libre Foods創業者・CEOのAlan Iván Ramos氏)
参考記事
Spanish Startup Libre Foods Wants To Be ‘World’s Leading Provider’ Of Whole-Cut Mycelium Steaks
アイキャッチ画像の出典:Libre Foods