タイソンフーズが植物肉への取り組みを強化する。
自社の植物性ブランドRaised & Rootedに新たに100%植物性のバーガー、ソーセージ、ひき肉を追加したことを発表した。
タイソンフーズといえば世界的な食肉大手だが、植物肉への関心と需要の高まりに伴い、2年前にRaised & Rootedのブランドで植物肉市場に参入した。
タイソンが最初に発売したのは、えんどう豆を原料とした植物性チキンナゲットと、動物肉と植物原料をブレンドしたハイブリッドバーガー。
植物性チキンナゲットは成功したようだが、ハイブリッドバーガーへの消費者の反応はいまひとつだったため、昨年12月にハイブリッドバーガーの生産は中止することを発表。
その時に、今後は動物性食品を一切含まない製品作りを公言していた。
その公言どおり、タイソンは今回、代替タンパク質分野への2度目の試みを実施、100%植物肉がブランドに追加された。
今回発表されたのは、100%植物性のバーガー、ソーセージ、ひき肉で、冷蔵商品となる。
パテ、ソーセージ、ひき肉はいずれもエンドウ豆を原料とし、1食あたりそれぞれ21g、17g、24gのタンパク質を含む。いずれも通常の牛肉よりも飽和脂肪酸は75%少ない。
全米の小売10000店舗、欧州の一部の小売・外食産業で販売される。価格は4.99ドル~7.99ドルと、競争力のある価格となっている。
GFIによると、アメリカにおける2020年の植物性食品の小売売上は70億ドルとなった。
植物肉については、2019年から2020年にかけて4億3000万ドル成長し、14億ドルに達している。
下記グラフのとおり、アメリカの植物肉市場はこの1年で約1.5倍に成長している。
「この市場は成長中で、食品のイノベーションがこれまで以上に速く起きているため、競争は激しいです。
形態や時間帯(朝食、昼食、間食、夕食)ごとに植物性タンパク質の需要が増えており、代替オプションを求める人々が増えているため、新しい製品でそれに応えたいと思っています」
(Raised & Rootedのマーケティング副担当David Ervin氏)
投資会社UBSによると、植物性の代替タンパク質と代替肉市場は、2018年の46億ドルから2030年には850億ドルに増加すると予測される。
こうした急成長市場を狙うのはタイソンだけではない。
インポッシブルフーズはテレビCMを開始したほか新しい市場参入の準備を進めている。
ビヨンドミートはマクドナルド、ヤムブランズと提携したほか、新しいビヨンドバーガーを発売。
新規の代替肉プレーヤーによる資金調達も相次いでおり、植物ベースの代替魚を開発するGood Catchは2640万ドル、代替肉のHungry Planetは2500万ドル、3Dプリンターで植物性ステーキ肉を開発するイスラエルのRedefine Meatは2900万ドルを調達している。
大手ネスレはマレーシアに植物肉工場を建設したほか、乳製品のプラントベース化も進めている。
タイソンによると、Raised & Rootedは今年夏に新しい植物肉製品を追加する予定。
タイソンはビヨンドミートに投資していたが、同社の株式公開に先立ち、持ち分を売却し、自社ブランドで植物性代替食品に参入したことはよく知られる。
タイソンのベンチャーキャピタル部門であるタイソン・ベンチャーズは培養肉を開発するイスラエルのFuture Meat、代替エビを開発するアメリカのNew Wave Foods、培養肉のメンフィス・ミーツにも投資している。
投資先の中に、タイソンのような食肉大手にB2Bで培養肉生産プラットフォームを提供したいと考えているFuture Meatがいることから、今後はタイソンが自社ブランドの植物肉に培養肉を組み込む可能性も考えられる。
これは憶測にすぎないが、食肉大手のタイソンの販売ネットワークを活用すれば、植物肉だけでなく培養肉の大衆化が一挙に加速する可能性がある。
参考記事
Tyson’s Raised & Rooted Expands into Plant-Based Burgers, Brats and Italian Sausage
Tyson Foods Expands Raised & Rooted With New 100% Plant-Based Meat Products
Tyson expands Raised & Rooted offerings further into competitive plant-based market
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アイキャッチ画像の出典:Raised & Rooted