代替プロテイン

インポッシブルフーズが今秋に植物チキンナゲット発売へ

 

アメリカを代表的する植物肉企業インポッシブルフーズが代替チキンナゲットを販売する。

新しい代替チキンナゲットは、来週開催される展示会で発表され、今秋に発売される。Bloombergが第一報を報じた。

インポッシブルフーズはこれまで牛肉、豚肉に代わる代替肉を開発、販売してきた。

同社の代替肉には、調理体験を本物に近づけるため、熱によって赤色から茶色に変わる独自成分「ヘム」が含まれている。

新しく発表される代替チキンナゲットは、大豆、ひまわり油を原料としているが、「ヘム」は含まない。チキンナゲットに「ヘム」を使用しない理由については、鶏肉は白身肉だからだとしている。

出典:インポッシブルフーズ

インポッシブルフーズはビヨンドミートと並ぶ、アメリカを代表する代替肉企業。

2016年にレストランで販売後、全国規模のハンバーガーチェーンであるバーガーキングのパテとして採用された。現在は、アメリカの2万箇所を超えるスーパーで販売され、5カ国に進出している。2020年に販売された代替ソーセージはスターバックスの朝食メニューに採用されている。

オーストラリア、ニュージーランドへの進出の準備も進めており、今後数ヵ月以内に上場するという噂もささやかれている。

Our World in Dataによると、アメリカでは2017年までの過去50年間で消費量の増加が最も大きい動物肉は鶏肉となっている。

拡大の一途をたどる鶏肉市場を狙い、代替鶏肉に参入する企業が増えている。SIMULATENowadaysRebellyousなどのスタートアップのほか、小売大手のターゲット、食肉加工大手のタイソンフーズも自社ブランドで参入している。

NPDによると、アメリカのレストランに供給される植物鶏肉は、2021年4月には前年比約1.8倍になった。

出典:インポッシブルフーズ

インポッシブルフーズの競合ビヨンドミートは、アメリカ・カナダでビヨンドチキンテンダーを今月より販売することを発表している。

こうした流れをみると、インポッシブルフーズが代替鶏肉に参入するのは当然といえる。

同社のヘムは、遺伝子組換えされた酵母を活用するため、規制の厳しい中国、欧州では参入障壁となっている。

ヘムの使用について、インポッシブルフーズの担当者は次のように述べている。

「プロトタイプでは、ヘムを含んだものと、含まないものをテストしました。

パン粉をつけて適度に味付けしたナゲットの形態ですと、ヘムは全く必要ありませんでした」

ビヨンドミート、インポッシブルフーズはほぼ同時期に植物チキンナゲットを発表したが、チキンナゲットにおいてはインポッシブルフーズが優位になるかもしれない

ビヨンドチキンテンダーには二酸化チタンが原料として使用されているからだ。

出典:インポッシブルフーズ

二酸化チタンは白色着色料として使用されてきたものだが、今年5月にEUは酸化チタンを発がん区分に分類、「食品添加物として安全だとは考えられない」と結論づけている

ビヨンドミートは二酸化チタンについて、FDAで承認されているものだとしているが、海外への展開においては障壁となる可能性がある。

インポッシブルフーズのチキンナゲットは秋にレストランで提供された後、スーパーなど小売での展開を開始する。

同社は今年5月、米国農務省からインポッシブルバーガーにChild Nutrition Label(子供用栄養成分表示)を獲得し、学校給食のメニューに採用できるようになった。

食を通じて環境問題を学ぶ「食育」にも取り組んでおり、植物チキンナゲットも学校給食に提供されると予想される。

 

参考記事

Impossible Foods to Launch Nuggets Into Brewing Faux-Chicken Battle

Impossible Foods Unveiling Plant-Based Chicken Nugget Next Week

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:インポッシブルフーズ

 

関連記事

  1. TurtleTreeが精密発酵によるアニマルフリーなラクトフェリ…
  2. トマトで代替マグロを開発するスペイン企業Mimic Seafoo…
  3. 米Checkerspot、微細藻類を活用したヒト乳脂肪類似体を開…
  4. 小売大手のLidl、植物由来食品の販売比率を2030年までに20…
  5. 米The Every Company、精密発酵で作られた史上初の…
  6. 培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点…
  7. 菌糸体由来肉の米Meati Foodsが約199億円を調達、今年…
  8. 培養シーフードのShiok Meatsが培養肉企業Gaia Fo…

おすすめ記事

ドバイが次のフードテックハブになる?UAEがドバイにフードテックバレーを設置

フードテックに国をあげて力を入れている代表例はシンガポールだが、今後はこのリスト…

植物性代替肉SavorEatがイスラエルでIPO(上場)、2021年夏までに試験販売を開始

このニュースのポイント ●植物性代替肉に取り組むイスラエル企業Sav…

英Fermtech、ビール粕×麹菌でゼロカーボンな代替タンパク質を開発

2025年3月25日:本記事で参照した公式リンクの内容はその後大きく変更されておりますが、記事内では…

イギリス政府が持続可能な代替タンパク質の開発に約25億円を出資

英国研究・イノベーション機構(UKRI)の一部であるバイオテクノロジー・生物科学…

Yali Bioが精密発酵ココアバターの試作品を発表|参入を目指すスタートアップの増加

精密発酵で脂肪を開発する米スタートアップYali Bioは先月、精密発酵技術を活…

一正蒲鉾がインテグリカルチャー、マルハニチロと培養魚肉の共同研究開始を発表

一正蒲鉾は、培養肉のスタートアップ企業インテグリカルチャーとマルハニチロの3社で…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/09 15:33時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/10 01:42時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/10 05:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/09 21:38時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/09 13:35時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/10 00:45時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP