Foovo Deep

「競争よりも共創」代替肉で環境問題に挑むネクストミーツが目指すものとは

 

メディアの注目を集め続けるフードテック企業がある。「地球を終わらせない」という理念で代替肉により環境問題解決を目指すネクストミーツだ。

新宿に本社、研究拠点を新潟に構える同社は、代替肉をはじめ、代替卵、培養肉の開発にも着手する、日本を代表するフードテック企業。今月24日、驚異のスピード感で市場進出を続けるネクストミーツの代表佐々木英之氏がセミナーに登壇した(セミナー動画は記事最後より視聴可能)。

理念「地球を終わらせない」にあるように、ネクストミーツのゴールは地球環境を改善すること。

出典:ネクストミーツ

創業からわずか1年2ヵ月。スピード重視で、国内ではイトーヨーカドー、ライフ、ダイエーなどのスーパー、焼肉ライク、IKEAなどのレストランへの導入を実現し、米OTC上場も果たした。

スタートアップならではの即決即断を武器に、国内のみならず、世界へもフルスピードで進出。日本の代替肉企業として唯一、世界のVegTech企業21社に選出された。

日本では代替肉の認知度はまだ十分とはいえない。代替肉が求められる背景への理解、環境問題への意識の面で、佐々木氏は「ひとりひとりが自分ごと化することが大切」だと考える。

4月に設立1年未満のスタートアップとしては異例のテレビCMをスタートしたのも、きっかけづくりが狙いだった。自社のアピールではなく、食の背景に環境問題があること、代替肉を消費者に知ってもらうための「タッチポイント」を増やすことをネクストミーツは重視している。

https://youtu.be/gz6q4cp-L_Y

この姿勢は、同社のSNSを活用した巧みな広報戦略にも表れている。Twitter、インスタグラム、FacebookなどのSNSで持続的にフォロワーを増やし、環境、SDGsを考えている若い層との接点を増やしている。現に、ネクストミーツには毎日のようにインターン、ボランティアを希望するメッセージが届いている。

豆腐のある日本で、代替肉が本当に浸透するのか?と懸念する声もある。

「日本市場は新しいものが定着するには時間がかかる。ブームではなく、定着するものにする必要がある」と佐々木氏は語る。だから、ネクストミーツは売上数量をKPIに設定しない。売れなかったから終わりでは、一過性のブームで終わってしまう。

代表の佐々木英之氏 出典:ネクストミーツ

同社が目指すポジションは「ノンアルコールビール」。最初は意識の高いレストランだけに導入されたノンアルコールビールは、今やどの居酒屋も提供している。さらに健康をより配慮したノンアルコールビールなど、定着を土台に差別化が進んでいる。これこそが未来の代替肉の形だと考えている。

創業から短期間で世界10カ国へハイスピードで進出してきたネクストミーツだが、佐々木氏は「競争よりも共創。競合なんてものはないし、社内にもそう言っている。できあがっていない市場を日本国内で取り合っても仕方ない。One Japanとして取り組んでいく」と語る。

政府は6月、2021年版「環境・循環型社会・生物多様性白書(環境白書)」を閣議決定し、代替肉が「食の選択肢の1つ」になることを紹介した

また、河野行政改革担当大臣は今月、世界的に代替肉をはじめとするプラントベース食品の需要が拡大する中、日本の規制が追い付いていないことを指摘し、プラントベース食品の表示を明確化することを発表した

新商品のNEXTツナ 出典:ネクストミーツ

こうした流れについて佐々木氏は「後押しする体制ができあがってきた」とみる。

現在は大豆を原料とした代替肉を中心に手掛けるネクストミーツだが、同社に「こだわり」はない。

微細藻類を活用した研究開発にも着手しており、代替肉以外の商品もリリースしていく。先日には、ネクストミーツ最初のシーフードとなる「NEXTツナ」、さらには生姜焼きにできる「NEXTポーク」が発表された。

和食は世界からの評価が高い。海外ブランドではなく、日本ブランドだからこそできる、和食メニューに取り入れられる商品開発を重視している。

新商品のNEXTポーク 出典:ネクストミーツ

次々にさまざまな施策を打ち出す背景には、代替肉を一過性のブームで終わらせないというネクストミーツの決意がある。

畜産による動物肉の生産は大量の水を必要とする。飼料の栽培に使用される土地と牧草地を合わせると世界の農地の7割を占める。また、牛など家畜のげっぷ・排泄物から排出される二酸化炭素が多いことも指摘される。

代表の佐々木氏も、取締役会長の白井氏も、食品業界出身でも研究出身でもない。社会貢献・環境というキーワードでビジネスを立ち上げたいという想いから、ネクストミーツを立ち上げた。

「利益追求しようという想いだったら途中であきらめていたと思う。環境問題を何とかしたいという想いがあったから、続けてこられた」(代表・佐々木氏)

昨年12月に開催された「気候野心サミット」で国連事務総長は、世界で二酸化炭素排出量が実質ゼロとなるまで、「気候の非常事態宣言を出してほしい」と呼びかけた

環境問題を解決するには、日本国内の取り組みだけでは限界がある。だからネクストミーツは世界のマーケットを優先する。

同社がスピードを重視するのは、海外にはすでに多くの代替肉企業が登場していることも関係する。海外企業が日本へ進出してくる可能性について、佐々木氏は「(国内の代替肉)市場が拡大する」メリットもあるとみる。

出典:ネクストミーツ

こうした代替肉市場の拡大には、畜産業の衰退・反発が想定される。佐々木氏は「戦うのではなく、同じ目標に向かって考えていく必要があると思う。敵対ではなく一緒にやって考えていきたい。家業をとるつもりはない。話し合う必要があると思う」とし、環境問題を解決するために、互いに変化を受け入れていく必要があると語った。

 

セミナー本編はこちらからご視聴ください▼(会員の方のみ視聴いただけます)

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

こちらの記事もおすすめ

アイキャッチ画像の出典:ネクストミーツ

 

関連記事

  1. ビヨンドミートとペプシコの合弁会社Planet Partners…
  2. 培養カカオを開発するCelleste Bioが約6.8億円を調達…
  3. スイスのPlanted、ドイツに新工場開設|需要増の「Plant…
  4. The Better Meat Co.がシンガポールでマイコプロ…
  5. 微生物発酵CDMOのスイス企業Planetaryがコニカミノルタ…
  6. TurtleTreeが精密発酵によるラクトフェリン生産を発表、2…
  7. 規格外・余剰農産物のB2B販売プラットフォームを提供するFull…
  8. ユニリーバ、代替肉ブランドThe Vegetarian Butc…

おすすめ記事

米ビヨンドミート、初の菌糸体ステーキ「Beyond Steak Filet」をレストラン限定で提供開始

ビヨンドミートが菌糸体ステーキ肉の発売計画を発表してから約10ヵ月。販売動向の行…

ケンタッキー、ビヨンド・ミートの代替フライドチキンを全米で販売

ケンタッキーフライドチキン(KFC)は5日、アメリカ企業ビヨンド・ミートの代替肉…

パーフェクトデイが約390億円を調達、今秋にアニマルフリーなクリームチーズを発売

アニマルフリーな乳製品を開発する米パーフェクトデイがシリーズDラウンドで3億50…

シンガポールの代替肉企業Next Genがシードで約10億円を調達、3月にシンガポールで発売へ

シンガポールを拠点に代替鶏肉を開発するNext Genはシードラウンドで1000…

赤い微細藻類で代替肉を「血の滴る肉」に変えるイスラエル企業Yemoja

微細藻類を活用した成分開発に取り組むイスラエル企業Yemojaは、化粧品用の成分…

米Ovieが開発した冷蔵庫の食品を簡単に追跡できるスマートタグLightTags

食べ残しの料理や、蓋を開けたジャムなど「まだ食べられる」と思って冷蔵庫に保存した…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/15 15:37時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/16 01:46時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/15 05:35時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/15 21:40時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/15 13:38時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/16 00:50時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP