写真はイメージ画像(ロゴは各社より引用)
クロマグロ、ブリなどさまざまな培養魚開発を手掛けるアメリカ企業BlueNalu(ブルーナル)は25日、回転ずしチェーン「スシロー」を展開する日本企業フード&ライフカンパニーズとの提携を発表した。
2社はシーフード需要の高いアジアをターゲットに、クロマグロやほかの寿司用製品の商品開発やマーケティング活動で協業する。
ブルーナルとフード&ライフカンパニーズは最初の商品として、クロマグロの中でも寿司ネタで人気の高い「トロ」に焦点を当て、日本市場においてブルーナル製品の商業化で協業する。クロマグロは、世界の供給量の約80%が日本で消費されており、高級寿司ネタとして取引されている。
フード&ライフカンパニーズは日本、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、中国本土で、1,000店舗以上のスシローを展開している。国内ではテイクアウト寿司の京樽を全国展開している。2社の提携により、ブルーナルの培養マグロが許認可を取得後、アジアで展開される可能性が高まったといえる。
培養魚企業ブルーナルが大手回転すしチェーン店と提携
ブルーナルは2017年にカリフォルニアに設立されたスタートアップ企業。ブリ、クロマグロ、シイラ、レッドスナッパー(フエダイ科の大形魚)などさまざまな水産物を細胞培養により開発している。
2019年には培養ブリのデモンストレーションを実施した。昨年1月には培養魚では史上最大規模の約62億円を調達、約40000平方フィートの実証プラント工場の建設を進めている。
同社はアメリカでの販売を目指しているが、当局の許認可はまだ取得していない。これまでに培養肉の市販化を実現したのはアメリカのイート・ジャストのみであり、同社は2020年12月にシンガポールで認可を取得した。
世界のシーフード消費量は過去最高を更新しており、特にアジアでは増加の一途をたどる。国連は、世界人口と消費の増加により、2030年までに2800万トンの新たなシーフード生産が必要になると予想している。
天然由来、養殖由来のシーフードに加え、培養魚肉は高まるシーフード需要を満たす第3の生産方法として期待されている。
フード&ライフカンパニーズ代表取締役社長CEOの水留浩一氏は、水産資源の安定的な確保のために養殖食材の活用を推進しているが、「魚種によっては生育の難しさや事業者の方の生産性などの課題」があるとコメント。ブルーナルとの提携について、培養魚はシーフードの安定供給の解決に役立つ「手法の一つ」だとみている。
ブルーナルの創業者兼CEOのLou Cooperhouse氏は、「培養魚肉は、消費者が期待する味、食感、栄養を持ち、水銀やマイクロプラスチックなどの環境汚染物質の影響を受けない食料源です。高品質なクロマグロのトロの培養に注力することにより、水産物の代表的な消費市場において最も人気のある魚の最も貴重な部位を開発し、優れた食材として認められることを目指します」とコメントしている。
培養シーフードの開発、提携、合併が加速
ブルーナルは、各国の食品関連会社とのパートナーシップを最も進めている培養魚企業といえる。
今回のフード&ライフカンパニーズとの提携は、韓国のプルムウォン、日本の住友商事・三菱商事、タイのタイユニオン、ヨーロッパのノマド・フーズとの提携に続くニュースとなる。
同社はアジア、特に日本での取り組みを促進するために、多摩大学のルール形成戦略研究所の細胞農業研究会にも参加している。
高まるシーフード需要を満たす第3の手段として、ブルーナルのほかにも、細胞培養による代替魚開発を手掛ける企業が世界的に増えている。
寿司用サーモンを細胞培養により開発するアメリカのWildtypeは昨年、サンフランシスコに生産能力を約90トンまで拡張できる実証プラントを建設した。
同じくアメリカのFinless Foodsは、植物由来・細胞由来のマグロの開発を手掛け、今年の市販化を目指している。
今月には培養肉のパイオニアとして知られるUpside Foods(旧称メンフィスミーツ)が培養シーフードのCultured Decadenceを買収した。買収により、Upside Foodsの製品ポートフォリオにロブスター、エビなどの甲殻類が追加された。
昨年にはシンガポールの培養シーフード企業Shiok Meatsが、赤身肉を開発する培養肉企業Gaia Foodsを買収している。
世界銀行は、世界の海洋水産資源の約90%が最大限に漁獲または乱獲されていると報告している。
培養肉企業と既存メーカーとの提携、培養肉企業の合併は、高まるシーフード需要を満たす持続可能なソリューションとして細胞農業に高い期待が寄せられていることの表れといえる。
参考記事
FOOD & LIFE COMPANIES と米国のスタートアップ BlueNalu 業務提携のお知らせ~培養技術による魚肉開発の共同研究を開始~
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