ドイツのフードテックスタートアップAlife Foodsは、欧州のスパイス大手Fuchs Groupや米国の培養肉スタートアップLab Farm Foodsと共同で培養シュニッツェル(カツレツ)を開発している。
培養肉を用いた食製品
今回のシュニッツェルには培養牛肉、小麦タンパク、パナード(植物油と小麦粉を混ぜたもの)、メチルセルロースの4成分が含まれている。
ウシの筋肉細胞から取り出した幹細胞や幹細胞から一段階分化の進んだ筋肉前駆細胞を培養培地で増殖させて培養牛肉を得ているものと考えられるが、このとき用いる培地を植物由来のものとすることにより、動物血清に由来する倫理面の懸念や高コストに対処している。
Lab Farm Foodsでは、このように培養したチキンやポークの培養肉を植物由来のタンパクなどと合わせて既に培養チキンナゲットやポークレバーパテを試作している。
ドイツで議論される代替タンパク肉
ドイツの新しい連立政権は代替タンパク製品を促進することを明言し、初めて政策項目にあげ、ベジタリアンのジェム・オズデミル氏を農業大臣に指名した。
2020年に刊行された報告書には、ドイツが培養肉分野でリーダーとなるにはどのようにすればいいか、を説いたうえで、屠殺場における様々な酷い事例について記している。
数週間前にはドイツの保健大臣は、健康、環境、動物愛護から食肉の消費を大幅に削減する必要性に言及している。
Alife Foodsもドイツ政府の代替タンパク製品に対する前向きな姿勢に共感を示し、「肉を食べる行為は様々な文化において儀式的な面があるが、畜産は本質的に持続不可能なものだ。人類は自ら技術を用いて世界を創るものであり、動物の犠牲や環境にひどい影響を与えることなく楽しんで肉を食べることのできる未来を信じている」と、HPに記している。
欧州における培養肉製品の認可状況
培養肉製品が欧州市場に流通するには、欧州委員会から新規食品(Novel Foods)としての認可を得る必要がある。
更に、培養細胞などに遺伝子組み換え技術が用いられている場合には、遺伝子組み換え食品としての審議も必要になると思われる。リスク評価などは欧州食品安全機関(European Foods Safety Authority, EFSA)が行う。
申請から認可に至るまでの手続きには最短で18か月、最大3年かかると想定されるが、2021年5月の時点では、培養肉に関する正式な申請は出されていない。
欧州ではドイツのほか、オランダも培養肉製品の市場流通に前向きと言われているが、最終的な承認には加盟27か国のうち15か国以上とEU人口の65%以上の賛成を必要とする特定多数決を経なければならないため、欧州での承認には時間がかかるとする向きもある。
Alife Foodsは2025年の上市を計画
Alife Foodsは官能評価を2021年末から進めており、今年後半にはシュニッツェルの試作品が完成して投資家に紹介されるだろう。製品化にあたっての最も大きな課題は実験室レベルから実生産までスケールアップすることであり、Alife Foodsは2025年に上市することを計画している。
ただ、713人のドイツ人を対象とした培養肉に対する2020年の意識調査によると、培養肉を受け入れられるのはごく控えめな程度に過ぎないという結果が得られている。
規制認可や技術の飛躍的前進にはまだ時間的に猶予があるものの、解決すべき課題は他にもあるようである。
参考記事
Germany’s Alife Foods Develops Cultivated Schnitzel With Animal-Free Growth Medium
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Alife Foods