イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatは10日、シンガポールでアジア最大規模となる培養肉生産施設を着工したことを発表した。
この生産施設は2023年第1四半期に開設を予定しており、培養肉を数万ポンド生産できるものとなる(1万ポンドは約4.5トン)。
シンガポールでアジア最大の培養肉工場を着工
今回の発表は、GOOD Meatが先月、ABECとの提携による25万リットルのバイオリアクター製造計画を発表したニュースに続くものになる。
JTC Bedok Food Cityに設置される生産施設には、培養肉業界でこれまでで最大規模となるバイオリアクターが収容されるほか、研究者、科学者、エンジニアなど50名が在籍する予定だ。GOOD Meatの培養肉は2020年12月よりシンガポールで販売されており、現地生産により、高まる消費者のニーズに応える。
JTC Bedok Food Cityは食品業界を対象とした5階建ての施設で、食品加工、ケータリング、セントラルキッチンなど食品関連事業やオペレーション用の137の工場ユニットから構成されている。
イート・ジャスト共同創業者兼CEOのジョシュ・テトリック氏は起工式で、シンガポールに同社初の培養肉生産拠点を建設することは業界にとって大きな前進だと述べた。
同社はシンガポールに続き、目下、アメリカでの認可取得に向けて取り組んでいるが、アジアの他の国へも規制当局の認可を取得次第、GOOD Meatの培養肉製品を輸出するために今後の事業展開を検討しているという。
食料自給率向上のため、フードテックを推進するシンガポール
シンガポールは2019年、2030年までに食料自給率を30%まで引き上げる目標「30×30」を発表した。食料自給率の引き上げ目標は、その後発表された気候変動に対応するための「シンガポール・グリーンプラン・2030」の5つの柱に組み込まれている。
国土が狭く農業用地が1%未満のシンガポールにとって、地産地消による食料自給率の向上は急務の課題であり、同時にこの危機感がシンガポールをフードテック先進国へと押し上げる要因にもなった。
シンガポールのフードテックを推進する取り組みには、2021年4月に南洋理工大学(NTU)、シンガポール食品庁(SFA)、A*STAR が設立した新規食品の商品化を加速するためのFuture Ready Food Safety Hub(FRESH)、テマセクのAsia Sustainable Foods Platformが同年11月に設立したフードテク企業のパイロット施設へのアクセスを可能とするFood Tech Innovation Centreなどがある。
イート・ジャストは培養肉のほか、緑豆をベースとする植物卵JUST Eggを国内外に展開しており、今年3月、同社はシンガポールで植物タンパク質として同国最大規模の工場の建設を開始した。今後は植物卵、培養肉ともに現地生産を拡大し、シンガポールの「30×30」目標に貢献していく。
シンガポールは最近、マレーシアの鶏肉輸出停止にあたり、オーストラリアやタイなどから調達することで国内の鶏肉供給の安定化を図った。
シンガポールのグレース・フー環境・水資源大臣は起工式で、「30×30は供給が遮断された時に輸入への依存を減らし、備えとすることを目的としています。(中略)GOOD Meatはシンガポールの地元生産を補うために、代替手段でタンパク質生産をリードしています。技術の進歩と持続可能な食品に対する高まる消費者ニーズにより、代替タンパク質はシンガポールの農業生産力を補い、30×30目標に有意義に貢献する可能性を秘めています」と述べた。
フー環境・水資源大臣のコメントは、代替タンパク質開発の支援・促進は、予測できない供給遮断に備える食料安全保障対策の一環になるというシンガポール政府の姿勢を表している。
参考記事
GOOD Meat Breaks Ground on Largest Cultivated Meat Facility in Asia
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アイキャッチ画像の出典:GOOD Meat