スコットランドのリーディングバイオテック企業Roslin Technologiesは、同社の幹細胞技術を拡大し、高品質で環境に優しい、アニマルフリーなドッグフードを開発する英スタートアップ企業Good Dog Foodを設立した。
培養ペットフードを開発するGood Dog Food
Roslin Technologiesはソーセージ、ハンバーガー、チキンナゲットなどを開発する世界の培養肉企業に「高品質な細胞株」を提供してきた。
今回設立したGood Dog Foodは、細胞農業に特化したベンチャーキャピタルAgronomicsとの合弁会社となり、環境に優しく健康的なペットフードを、培養肉を使って開発していくという。
Roslin TechnologiesでCEOを務めるErnst van Orsouw氏は、「このベンチャーは地球の炭素排出量削減に寄与し、ペットを飼う人々に畜産肉に代わる持続可能で健康的、高品質な代替品を提供します。人向けの高級ステーキやバーガーであれ、大切なペット向けの肉製品であれ、私たちの使命は食料システムの方向性を培養肉など代替タンパク質に向けて、環境にプラスの影響をもたらすことです」とコメントしている。
Roslin Technologiesはスコットランドのエディンバラ大学と協業関係にあり、世界一流の研究設備や動物科学の知見にアクセスできる。Good Dog FoodはAgronomicsの有する投資家、培養肉専門家のネットワークを活用しつつ、培養ペットフードの開発からローンチまで行っていく予定だ。
アメリカで食肉の約25%を占めるペットフード
ペットフードには動物由来のタンパク質が使用されてきたが、家畜や魚由来の製品は環境負荷、水産資源の乱獲を伴う。
ペットフードはアメリカで消費される肉全体の4分の1を占めるというデータも報告されている。アメリカだけでも、犬猫用のペットフードは6400万トンの二酸化炭素に相当するメタンや亜酸化窒素の原因だと推定されている。
培養肉は、動物を飼育、屠殺することなく細胞に栄養を与えて動物の体外で生産されるため、ペットフードへの応用が進めば、環境への影響をさらに低減できる可能性を秘めている。
細胞農業でペットフードを代替する動き
畜産に伴う環境負荷を削減し、高まる食料ニーズに応えるために、現在国内外で培養肉の開発が進んでいる。
大部分の企業は人向けの培養肉の開発に焦点をあてているが、代替ペットフードに注目する企業はGood Dog Foodのほかにも登場している。
植物由来ペットフードを市販してきたWild Earthは今年、細胞培養によるペットフードの上市を予定している。同社は昨年9月に2300万ドル(当時約25億円)を調達した。
精密発酵によりペットフードを開発するBond Pet Foodsは昨年、ペットフードメーカーHill’s Pet Nutritionと提携した。同社も今月、1860万ドル(約25億円)を調達しており、2023年の上市を目指している。
今後は人向けに続き、ペットフード業界での代替食品にも注目が集まっていきそうだ。
参考記事
Roslin Technology widens portfolio with foray into eco-friendly dog food
アイキャッチ画像の出典:Roslin Technologies