香港の培養シーフード企業Avantが先月、シリーズAラウンドで1080万ドル(約14億円)を調達した。2020年4月のシードラウンドに続く資金調達で、同社の調達総額は1390万ドル(約18億円)となった。
今回のラウンドはS2G Venturesが主導し、SWEN Capital Partners、Regal Hotels、Thia Venturesの新たな参加者に加え、Lever VC、CPT Capital、ParticleX、Artesian、Good Startupなどが参加した。
香港発の培養シーフード企業Avant
Avantは細胞培養により、「美味しく、栄養価が高く、持続可能で、追跡可能な魚やシーフードを生産」するためのソリューションの提供を目指している。
2018年設立の同社はこれまでに、培養魚の切り身や魚肚(魚の浮き袋)など複数の試作品を発表してきた。化粧品業界にも参入しているほか、昨年には培養魚の生産コストを下げるソリューションを共同開発するため、シンガポール科学技術研究所(A*STAR)の研究機関、Bioprocessing Technology Institute(BTI)とバイオポリスに新しい共同研究所を設立することを発表している。
2018年のデータでは、世界の水産資源の約90%が乱獲され、枯渇している。FAOによると、2019年には持続可能な漁獲量が全体に占める割合は64.6%と、2017年より1.2%減少した。すべての漁業が持続可能であることを保証するために効果的かつ緊急の行動を要する、とFAOは指摘している。
公式サイトによると、Avantはレストランなど外食産業、消費者向けに培養肉製品「avie」を展開する予定のようだ。現在、公式サイトにはB2B、B2C向けの商品イメージが掲載されており、問い合わせ可能になっている。
2023年にパイロット工場稼働へ
培養肉業界が直面する2つの主要課題は、コスト削減とスケールアップだ。
Avantは、多面的なアプローチと特許出願中の方法により、アニマルフリーな培地コストを90%以上削減することに成功している。現在シンガポールに建設中で2023年に稼働予定のパイロット工場には、最大2000Lのバイオリアクターが設置される予定だという。
Avantの共同創業者兼CEOのCarrie Chan氏は「商用化に向けて生産をスケールアップし、2023年後半までに私たちの製品をお客様に届けるのを楽しみにしています」と述べ、今回の調達資金でスケールアップ、商用化を加速させていく考えだ。
世界のテクノロジーパイオニア100社に選出
Avantは現在、シンガポールと中華圏に拠点を置いており、中華圏で最初に設立された培養シーフード企業となる。
2021年には世界経済フォーラムから、世界の有望なテクノロジーパイオニア企業100社に選ばれた。このリストには、過去にTwitter、Googleなどが選出されている。AIやIoT、ロボット工学、ブロックチェーン、バイオテクノロジーなど様々な企業が選出されており、Avantが社会の切迫した課題に対処できる企業だと認められたことになる。
参考記事
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Avant