京都を拠点とする植物工場スタートアップのスプレッドは今月、シリーズAラウンドで40億円を調達した。国内フードテック業界の資金調達ラウンドで1回の調達額としては過去最大となる。
スプレッドは調達した資金で、同社商品「ベジタス」の販路拡大、2024年に静岡県袋井市で稼働を予定しているレタス日産10トンの大型植物工場の開発投資、いちごや代替肉などの新規事業に向けた研究開発を強化する。
長期目標として、2030年までに国内で日産100トンの供給体制の構築を目指している。
採算を取るのが難しい植物工場で黒字化を実現
スプレッドは、青果流通業界で30年以上の経験と知見を有する代表の稲田信二氏が2007年に設立した。
これまでに、自社工場の「亀岡プラント」と次世代型自動化植物工場「テクノファームけいはんな」、パートナー工場の「テクノファーム成田」でレタス栽培を行ってきた。
大規模植物工場での安定生産が難しいと言われているなか、第1の工場「亀岡プラント」は、2007 年の稼働開始から6年にわたる試行錯誤を経て、2013年に世界初の黒字化と稼働率97%を達成した。
2018年から稼働を開始した「テクノファームけいはんな」は、稼働開始から2年と「亀岡プラント」を上回るスピードで稼働率99%を達成。同工場は1日に3万トンを生産できる。
2024年1月には生産能力が3倍以上となる日産10トン規模の大規模工場「テクノファーム袋井」が静岡県袋井市で稼働を開始する予定だ。
カット野菜を約4500店舗に導入
同社の主力野菜「ベジタス」は環境に配慮した栽培方法で作られており、露地野菜と比べ、水使用量を約1/1000減らせるほか、出荷歩留まり率は約90%と高い。カット野菜の加工技術を独自に開発し、一般のカット野菜より2倍長い消費期限を実現している。
「ベジタス」はこれまでに全国の約4500店舗のスーパーで販売されており、約9000万食の販売実績を誇る。
年間を通じたいちごの量産化技術を実現
2021年には、閉鎖型で人工光を使用する植物工場で、農薬を使わずにいちごを量産する技術を確立した。いちごの受粉に必要なミツバチを導入し、実現が難しいと言われていたLED照明下での安定的な飛行と受粉を実現した。
日本のいちごの国際的な評価は高く、輸出量は年々増加しているものの、夏季は露地栽培が難しく、虫や病気の被害を防ぐために農薬が使用されるといった課題がある。年間を通じてローカルに栽培できる植物工場産いちごの需要が高まる中、レタス栽培で培ったノウハウを横展開し、大規模な安定生産を実現した。
代替肉の開発も視野に
海外では2004年に設立された米AeroFarmsが、バージニア州ダンビルに150,000平方フィート(約13935㎡)の第2の垂直農業施設を準備しており、年内の稼働が予定されている。稼働すると、1000を超える小売業者と約5000万人の消費者にアクセスできるという。
国内では2021年、ドイツ企業Infarmの野菜栽培ユニットが日本に導入され、紀伊国屋やサミットなどの店舗で野菜が販売されている。
スプレッドは果菜類や代替肉などレタス以外の食物の栽培技術開発にも取り組むとともに、海外展開も視野にいれている。採算を取るのが難しいとされる植物工場で、世界に先駆けて黒字化を実現したスプレッドのさらなる展開が期待される。
参考記事
植物工場スタートアップのスプレッドは、国内フードテックとして過去最高額となる総額40億円の大型資金調達を実施
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