イスラエルの培養肉企業スーパーミート(SuperMeat)は26日、スイスのスーパー大手・食肉大手のミグロスと基本合意書(MOU)を締結した。
二社は、商用規模での培養肉の生産、流通を加速する。提携の一環として、ミグロスはスーパーミートに出資した。
培養肉スーパーミート、スイス小売大手のミグロスと提携
二社は、より効率的で持続可能な代替食品を求める欧州消費者の需要を満たすため、培養肉を大規模に流通、販売するためのインフラの強化を目指す。
スーパーミートは培養肉の販売許可をまだ取得していないが、販路・インフラを有するミグロスとの提携は「近い将来、培養肉を欧州の消費者に提供するための土台を築く」ものとなる。
今回の発表は、スーパーミートと欧州最大の養鶏業者PHWグループとの提携に続くニュースとなる。2社は欧州における培養肉製品の認可取得で協力し、培養肉を大規模に開発、製造、販売するため、今年3月に提携した。
ミグロスのグループ会社ELSA-MifromaでCEOを務めるMatthew Robin氏は、「スーパーミートの培養鶏肉をイスラエルのレストランで個人的に味わう機会がありましたが、従来の鶏肉に似ていることに非常に驚きました。この技術が食肉産業を変える可能性があると再確信しました」とコメントしている。
「スイスは培養肉開発における欧州の玄関になる」
ミグロスの近年の取り組みは、同社が代替タンパク質の可能性を確信していることを表している。
ミグロスは昨年、スイス企業ジボダン、ビューラーと提携し、培養肉のパイロット工場を建設するため、チューリッヒにCultured Food Innovation Hubを設置することを発表した。
Cultured Food Innovation Hubは2023年初頭の稼働開始を予定しており、培養肉企業から施設利用の予約も入っているという。スタートアップはこのハブを活用することで、小規模施設を利用でき、資金調達を回避することができる。
前述のRobin氏は「スイスは培養肉開発における欧州への玄関になると考えています」と述べている。
ミグロスはまた、微生物を活用して代替シーフードを開発する米Aqua Cultured Foodsとも提携しているほか、自社でビーガンゆで卵も発売している。
2025年までにスイスで培養肉の販売を見込む
2015年に設立されたスーパーミートは、イスラエルで培養肉の試食レストランをオープンするなど、先進的な取り組みで注目されてきた。
今年3月に味の素と提携を発表したほか、6月には培地成分を最適化するオープンソースなハイスループットシステムの構築で、サーモフィッシャーとの提携を発表している。
ミグロスとの提携発表を受けて、スーパーミートは2-3年以内にスイスで製品を販売できると見込んでいることをFoodNavigatorに語っている。
イート・ジャストが2020年末に世界で最初に培養肉の販売を実現してから、さまざまなスタートアップ企業が生産コスト削減、生産工場の建設、商用化に向けた課題解決に取り組んできた。国内も含め、上市にあたっては法整備が1つの課題となるが、シンガポールに続きアメリカやカタールで年内に培養肉が販売される可能性は高まっている。
スーパーミートは来年後半、アメリカに工場の建設を予定しており、来年にアメリカで最初の製品を発売する予定だという。
「味の素、PHW、今回のミグロスなどの企業と提携することで、彼らの独自の知見と大規模なインフラを活用して、コストを削減し、スケールアップを早め、消費者へのサービスを強化することができます」
(スーパーミートCEOのIdo Savir氏)
参考記事
SuperMeat Signs Agreement with Switzerland’s Largest Supermarket and Meat Manufacturer, Migros
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アイキャッチ画像の出典:SuperMeat