Foovo Deep

培養肉セミナー開催レポート【岡田健成氏講演】-2022年8月-

 

世界人口の増加に伴う食料需要の高まりにより、2030年にはタンパク質が不足すると危惧されている。食肉や乳製品を生産する畜産由来の温室効果ガスは全体の約14.5%を占め、自動車、航空機に匹敵する環境負荷が指摘されている。

タンパク質不足と環境負荷軽減の解決策として普及が進むのが、代替肉だ。

代替肉は大きく植物肉培養肉に分類される。国内でもスーパーなどで大豆ミートの流通が拡大しているが、植物肉では難しい肉本来の食感や味を再現できると期待されるのが、動物の体の外で細胞を培養して作られる培養肉だ。

9日、細胞農業協会でアソシエイトとして活動し、日清食品ホールディングスと共同で培養ステーキ肉の開発を進める東京大学竹内研究室所属の岡田健成氏がセミナーに登壇した。

セミナー動画は本記事最後より視聴できます

2040年には培養肉は約65兆円規模に

岡田健成氏(写真:同氏提供)

岡田氏は今後の培養肉市場について、現在のほぼゼロの市場から、2040年には約65兆円規模と、世界の食肉市場の35%を占める急成長が見込まれる市場だと言及。

培養肉の市場規模が実際に予想通りとなるかどうかは、技術の進展、コスト削減、資金投入、人的投資、ルール形成など様々な要因に左右されるが、「将来的に市場規模が伸びるのはほぼ確実」だと同氏はみている。

実際に、2013年に培養肉を世界で最初に発表したマーク・ポスト教授の培養バーガーパテは1枚で3000万円以上したが、現在は畜産肉の2ドル/kgに対し、培養肉は100倍~10,000倍の価格までコストダウンを実現しているという。

現時点では畜産肉と比べると現実的な価格ではないものの、2030年には約6ドル/kgまで下がると予想されている。

2020年から培養肉への出資、大手の参入が増加

イスラエルの培養肉企業Future Meatの工場内写真 出典:Future Meat

これまでに培養肉の販売認可が下りたのはシンガポールに限られるが、アメリカでは培養肉工場が複数開設され、シンガポールではアジア最大となる培養肉工場が着工するなど、スタートアップ各社による流通拡大に向けた準備が進む。

2020年を境に国内でもスタートアップの設立が増え、味の素、明治ホールディングス、三菱商事など大手企業の参入が目立つようになったと岡田氏は指摘する。法整備においても、今年になってから議員、厚生労働省主導の具体的な動きが目立つようになっている。

細胞農業の普及は他業界に及ぶ

出典:日清食品ホールディングス

培養肉の技術基盤となる細胞農業が普及していくのは食肉産業に限定されない。チョコレート、母乳、牛乳、脂肪、ペットフードなど、普及が予想される業界は多様だ。現在は食品事業に参入していなくても、細胞農業にいかせる技術を有する企業が参入できる可能性もある。

セミナーでは、培養肉の実用化に向けた課題、日本の取り組みが海外と比べて遅れている理由などについても語られた。

 

▼培養肉動向セミナー(60分)視聴には会員登録が必要

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

 

Foovo過去セミナー動画(一部)

アイキャッチ画像の出典:GOOD Meat

 

関連記事

  1. フードテックの祭典Smart Kitchen Summit 20…
  2. 培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点…
  3. 乳業大手フォンテラ、精密発酵・バイオマス発酵企業2社と提携(No…
  4. 中国の培養肉企業Joes Future Food、パイロット工場…
  5. 代替母乳のTurtleTree、カリフォルニアに研究施設開設を発…
  6. オーストラリアのVow、香港で培養肉販売認可を取得|シンガポール…
  7. Motif FoodWorksが約249億円を調達、植物肉をアッ…
  8. 【世界初】TurtleTreeが精密発酵ウシラクトフェリンでGR…

おすすめ記事

Fresh Insetが開発した食品鮮度保持技術Vidre+Complex、ポストハーベスト業界を超えた包装革命に期待|セミナーレポート

食品ロスの多くは、野菜や果物が収穫されてから消費されるまでの、保管、輸送、販売、…

NewFishが微細藻類由来のタンパク質粉末を開発、米国スポーツ栄養市場進出を目指す

微細藻類を活用した代替タンパク質を開発するニュージーランドのNewFishは今月…

マイクロ流体チップによる農業用栄養分析デバイスを開発したNordetectが約1億6千万円を調達

室内垂直農業用の検査デバイスを開発するデンマーク企業Nordetectが、シード…

英Multus Biotechnologyが約12億円を調達、増殖培地工場の建設へ

イギリスのスタートアップ企業Multus Biotechnologyは、世界初の…

イスラエルのFuture Meatが培養肉の生産コスト削減に再び成功

イスラエルの培養肉スタートアップFuture Meatが、培養鶏肉の生産コスト削…

EUが精密発酵・藻類由来食品を開発する企業に約78億円の資金提供を発表

欧州連合(EU)は今月、欧州イノベーション会議(EIC)の「Work Progr…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼会社概要▼

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/29 14:33時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/30 00:14時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/30 04:05時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(01/29 20:29時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/29 12:43時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/29 23:29時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP