代替プロテイン

培養肉のコスト削減を目指すProfuse Technologyが約3.5億円を調達

 

培養肉の生産コストを削減するソリューションを開発するイスラエルのProfuse Technologyは、シードラウンドで250万ドル(約3億5000万円)を調達した。

培養肉企業に培地サプリメントを提供するProfuse Technologyは、イスラエルのインキュベーターFRESH START Foodtechの一部として2021年に設立された。Profuse Technologyのソリューションを使用すると、生産コスト全体の約50%を占める、筋肉生成と成長にかかるコストを削減できるという。

培養肉コスト、要因別の将来予想。赤色は細胞の分化・成熟にかかるコスト。Profuseはこのコストを削減する。出典:CE Delft

Profuse Technologyの技術は、イスラエルのワイツマン科学研究所で行われた6年間の研究に基づく。

同社は「筋繊維の成長を促進することで、生産時間を短縮し、収量を増やし、培養肉の生産能力を高める、新しい効率的なソリューション」を開発した。筋形成の2つの異なる段階で作用する生化学的なシグナル伝達経路を活性化している

共同創業者兼CTOのTamar Eigler-Hirsh氏は海外メディアのインタビューの中で、「幹細胞を筋肉への変換させる効率は現在、10%から30%と報告されていますが、私たちの技術を使えば30%から90%以上にまで高めることができます」と述べ、Profuse Technologyの効率性の高さを強調している

鶏由来の筋芽細胞で、通常培地とProfuse Technologyのソリューションを使用した場合の72時間までの変化を比較した下記写真からは、同社技術を使用することで筋形成が促進されていることが読み取れる。

出典:Profuse Technology

Profuse Technologyは調達した資金で、培養肉メーカーと協業し、FDAの認可取得を目指す。2023年の第2四半期後半には大規模な資金調達を予定しており、早ければ2023年半ばに製品を販売したいと考えている。社名は不明だが、培養肉をリードする企業数社とパートナーシップを締結しているという。

Profuse Technologyは最終製品を製造するのではなく、培地サプリメントを培養肉企業に提供し、生産プロセスの短縮化を目指している。通常のプロセスでは、培養肉1キログラムを生成するまでに40日間要するが、同社技術を使えば27日間で2.5キログラムの培養肉を生産できるという

今回のラウンドは、フードテックに特化したアメリカのベンチャーキャピタルGreen Circleが主導し、OurCrowdTnuvaTempoSiddhi CapitalKaymaが参加した。

ラウンドに参加したGreen CircleのマネージングディレクターであるStu Strumwasser氏は、「培養肉技術が進展し、同等価格に近い牛肉、豚肉、鶏肉を生産できるようになるには、多くの人が考えているよりも時間がかかると思います。ProFuseの素晴らしい技術はそのプロセスを大幅に速め、培養肉の商業化に関する見積もりを根本的に変える可能性があります」と述べ、Profuse Technologyの技術が、現在試算されている培養肉の商業化予測を短縮させることに期待感を示している。

 

参考記事

Profuse Technology Secures $2.5 million in Seed Funding to Reduce Costs of Cultivated Meat Production

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Profuse Technology

 

関連記事

  1. 二酸化炭素でタンパク質を作るArkeon Biotechnolo…
  2. 培養ペットフードのBioCraft Pet Nutrition、…
  3. マルハニチロ、UMAMI Bioworksと培養クロマグロの共同…
  4. Else Nutritionとダノンが協業、アレルギー対応の乳製…
  5. 米ビール大手のモルソン・クアーズが植物性ミルク市場へ進出
  6. 培養魚のBLUU Seafoodが約24億円を調達、年内にパイロ…
  7. 精密発酵カゼインで乳製品業界の変革を目指すFermifyが約6.…
  8. GFIが「植物分子農業」を代替タンパク質の第4の柱として注目

おすすめ記事

代替肉の米インポッシブルフーズが約560億円を調達、調達総額は2000億円を超過

代替肉企業インポッシブルフーズ(Impossible Foods)が最新のラウン…

微生物発酵でサステイナブルな着色料を開発するデンマーク企業Chromologics

植物ベースまたは細胞農業によって肉、魚、乳製品に取り組むフードテック企業は増えて…

安価な成長因子を開発するカナダのFuture Fieldsが約2億3千万円を調達、培養肉を「大衆品」に

培養肉開発のために安価な成長因子を開発するFuture Fieldsがシードラウ…

アレフ・ファームズ、タイで培養肉の承認申請を初提出|世界の申請・認可状況も

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズが、培養ステーキ牛肉「Aleph Cut…

魚の培養脂肪を開発するインパクファット|日本人研究者がシンガポールで挑戦

畜産による環境負荷を軽減するため、植物由来や菌類由来の代替肉の普及が世界的に加速…

韓国LOUNGE’LABがロボットアイスクリームショップBrown Banaをソウルにオープン

AI、ロボット、ブロックチェーンを活用する韓国のスタートアップLOUNGE'LA…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/29 15:12時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/30 01:07時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(05/30 05:05時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(05/29 21:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(05/30 13:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(05/30 00:19時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP