イスラエルの培養肉企業Steakholder Foodsは、世界初のバイオ3Dプリントされた培養ハタの切り身製品を発表した。これは、培養シーフード企業Umami Meatsのハタ細胞を使ったバイオインクをカスタマイズして3Dプリントされたもので、すぐに調理できるものだという。
Steakholder Foodsは2023年の事業戦略として、提携や協業を通じて、バイオ3Dプリンターの商用化に焦点をあてることを昨年末に発表した。バイオインクを外部の細胞株にカスタマイズできるようになったことは、バイオ3Dプリンターの商用化に向けた重要な一歩になると同社は見ている。
世界初の培養ハタ製品
Steakholder FoodsとUmami Meatsは今年1月、シンガポール・イスラエル産業研究開発財団(SIIRD)から最大100万ドルの助成金を獲得した。
二社の提携は、Steakholder Foods独自のバイオ3Dプリンティング技術とカスタマイズされたバイオインクを使用して、構造化された培養魚製品を生産する拡張可能なプロセスの開発を目的としている。
Umami Meatsからハタ細胞を入手して以来、Steakholder Foodsはプロトタイプの完成に向けて、カスタマイズされたバイオインクの作製、3Dプリントハタの味・食感の最適化に取り組んできた。
今回発表された培養ハタ製品は二社の提携における重要なマイルストーンを示している。
3Dプリント後にインキュベーションと成熟の工程が必要な培養肉製品と違い、今回発表された培養ハタ製品は3Dプリント後にすぐに調理できるものとなる。調理済み魚のほろほろした食感を模倣するSteakholder Foodsの独自技術がこれを可能にしているという。
イスラエルの施設で実施された試食会には、細胞農業研究機構で代表理事を務める吉富愛望アビガイル氏も参加した。試食会に先立ち、イスラエルのネタニヤフ首相も培養ハタ製品を試食し、3Dプリントされた培養魚を試食した最初の首相となった。
パートナーシップの拡大
2018年のデータによると、世界の水産資源の約90%が乱獲され、枯渇している。FAOは、すべての漁業が持続可能であることを保証するために効果的かつ緊急の行動を要すると指摘している。
Steakholder FoodsのCEO(最高経営責任者)Arik Kaufman氏は、「Umami Meatsと協力して、環境に影響を及ぼすことなく、従来の魚と同じく優れた味・食感を持つ3Dプリントされた魚製品を開発できて嬉しく思います。シーフード市場は今後、3-4%の年成長率で1,100億ドル規模になると推定されており、食料安全保障を向上させる持続可能なソリューションを導入するという当社の長期ビジョンの一部です」と述べている。
Kaufman氏はさらに、「新たなパートナーと共に、より多様な種へと協業を拡大することを楽しみにしています」と述べ、今後もパートナーシップを拡大していく可能性に言及している。
Peace of Meatを閉鎖し、バイオ3Dプリンター商用化を加速
Steakholder Foodsは先月、ベルギーの子会社Peace of Meatの閉鎖を発表した。
Steakholder Foodsは2020年にPeace of Meatを買収したが、事業の中核となるバイオ3Dプリンターの商用化を優先するため、Peace of Meatの閉鎖を決めた。Peace of Meatの閉鎖により、前年と比較して年間約450万ドルの経費削減が見込まれるという。
参考記事
Steakholder Foods® 3D Bio-Prints First Ready-to-Cook Cultivated Grouper Fish
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アイキャッチ画像の出典:Steakholder Foods