3Dプリンター

シンガポール展示会(Agri-Food Tech Expo Asia 2022)参加レポート(代替タンパク質にフォーカス)

 

2022年10月26日~28日の3日間、シンガポールのマリーナベイ・サンズにあるサンズ・エクスポコンベンション・センターで「Agri-Food Tech Expo Asia 2022」が開催された。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影

この展示会は、マレーシア、インド、オーストラリア、フィリピン、台湾、インドネシア、タイ、ベトナム、中国、韓国の10の市場をターゲットとして開催された。開催にあたり、シンガポール食品庁(SFA)、テマセク、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)、シンガポール経済開発庁(EDB)などの支援を受けている。

フランス、カナダ、イギリス、ドイツ、オランダ、イスラエル、インドネシアの国別パビリオンの展示があったほか、代替タンパク質分野ではエストニアなど欧州企業の参加もみられた。一方で、代替タンパク質分野での日本企業の出展は見られず、国内外の温度差を感じるものとなった。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影

本レポートでは、細胞農業、植物由来を含む代替タンパク質を中心に、主な海外企業に確認した現状や今後のスケジュールをまとめている。

Gelatex(ジェラテックス)

Märt-Erik Martens氏(左)とAthanasios Garoufas氏(右) Foovo(佐藤あゆみ)撮影

エストニア企業Gelatexは、培養肉用の安価な足場を開発している。

事業部長を務めるAthanasios Garoufas氏によると、同社のナノファイバーは植物由来の食用足場となる。共同創業者兼CEOのMärt-Erik Martens氏は、培養肉業界の70%の企業がすでにGelatexのナノファイバーを使用していると述べ、各市場で認可を取れ次第、市販する予定だという。

Gelatexの足場サンプル Foovo(佐藤あゆみ)撮影

Steakholder Foods(ステークホルダー・フーズ)

Foovo(佐藤あゆみ)撮影

バイオ3Dプリンターで培養肉を開発するSteakholder Foodsは、バイオ3Dプリンターの実機デモを行った。展示されたのは第2世代だが、イスラエルでは第4世代の3Dプリンターが稼働しているという。

タブレットで好みの培養肉を選択すると、3Dプリンターが稼働し、数分で脂肪付きの培養肉がプリントされる様子を確認できた。実際の生産プロセスでは、これをさらに数週間培養することで細胞が分化し、筋肉や脂肪から構成される厚みのある肉となる。

会場に設置された体験用タブレット Foovo(佐藤あゆみ)撮影

1分ほどで3Dプリントを完了 Foovo(佐藤あゆみ)撮影

共同創業者兼CEOのArik Kaufman氏によると、最初の製品は培養シーフードになる可能性が高い。これはSteakholder Foodsが7月に培養シーフード企業Umami Meatsとパートナーシップを締結したことによる。長期的には骨付きの培養肉生産も視野に入れているという。

Arik Kaufman氏 Foovo(佐藤あゆみ)撮影

主要ターゲットはアメリカ市場であり、イスラエルは重視していないと同氏は語る。アメリカでの販売認可は来年を予想しているという。

Perfect Day(パーフェクトデイ)

Foovo(佐藤あゆみ)撮影

米・シンガポールで展開する精密発酵のパーフェクトデイは、Coolhausブランドのアイスクリームの試食を実施した。

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アイキャッチ画像の出典:Foovo

 

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