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アメリカのスタートアップ企業Pureture(旧称Armored Fresh Technologies)は先月、「植物性カゼイン」を開発したことを発表した。
乳タンパク質の8割を占めるカゼインは、水と油など互いに混じりにくい成分の分離を防止し、一方の液中に他方を分散させる乳化剤として使用されたり、ミルクの滑らかな質感に寄与すると言われたりしている。つまり、カゼインは安定したエマルション(乳化した状態の液体を指す)生成に重要なタンパク質となる。
特にチーズの伸びに必要な成分であり、市販されているビーガンチーズに欠けている成分として、カゼインを開発する企業は近年、増加傾向にある。
「植物性カゼイン」とは具体的には何か?
プレスリリースによると、Puretureは酵母由来の植物原料を使用して「カゼインの再現」に成功している。同社カゼインは無味無臭無色で、遺伝子組換えタンパク質には該当しないという。公式サイトには、同社カゼインは「カゼインと同等レベルの栄養、味、食感を含む動物代替品」であると記載されている。
Puretureのいう「植物性カゼイン」とは具体的に何を指すのだろうか?
詳細については現在問い合わせ中だが、海外メディアの報道や関連論文より、同社のカゼインは乳化活性を備えた酵母タンパク質を指すものだとFoovoは推測する。
Puretureは技術の詳細を公表しておらず、カゼインに関連した同社特許も確認できないが、Food ingredientsの報道で同社カゼインは「酵母の乳化タンパク質(yeast emulsified protein)」と表現されている。その製法は、酵母の培養、酵母株の濃縮、タンパク質精製、乳化機能性のフローテーション(emulsification functionality floatation)、滅菌、乾燥の6段階から構成されるという。
大阪市立大学の東雅之教授は、酵母由来の活性物質がレシチンのような乳化作用を示したことを報告している。また、大阪公立大学の研究チームも、酵母Candida albicansを活用した乳化タンパク質の同定について論文を発表している。
これらより、Puretureが主張する「植物性カゼイン」は酵母由来の乳化タンパク質を指していると考えられる。憶測だが、以前から期待されていた酵母の細胞壁に存在するマンノプロテインを食用乳化剤として抽出する方法をPuretureは確立したのではないかと思われる。
最近では精密発酵により動物由来カゼインと同等なビーガンカゼインを開発する企業が急速に増えているが、米スタートアップ企業Climax Foodsのように、AIと天然の植物タンパク質を活用してカゼインに近い機能を模倣した代替アプローチに取り組んでいる企業も確認されている。
Puretureは独自の技術と製造方法により、「植物性カゼイン」の価格を市場の平均価格よりも低コストに設定できると述べている。同社は大手乳業メーカーと協業し、自社の「植物性カゼイン」を共同ブランド化する予定だ。さらに、原料の使用を拡大するため、世界の原料販売業者との提携も予定している。
参考記事
Pureture Announces Development of Groundbreaking Plant-Based Casein(プレスリリース)
Zero-dairy cheese: Biotech innovator launches vegan casein for better “meltability and stretchiness”
Pureture: Fermented Vegan Casein That’s Cheaper Than Dairy Proteins
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