代替プロテイン

Upside Foods、シカゴ近郊に商用規模の培養肉工場を建設する計画を発表

 

アメリカの培養肉企業Upside Foodsは、イリノイ州シカゴ近郊のグレンビューに商用規模の培養肉工場を建設する計画を発表した

Rubiconと呼ばれる同工場は、初期段階では年間数百万ポンドの生産能力から開始し、長期的には最大3,000万ポンド(約13,000トン)へと生産拡大を予定している。

AgFunderの報道によると、2025年に稼働を開始する予定だという。

Upside Foods、シカゴ近郊に大型培養肉工場を建設する計画を発表

出典:Upside Foods

18万7000平方フィートの同工場ではまず、培養鶏ひき肉製品の製造から始め、他の種やホールカットの培養肉の製造も計画している。

Upside Foodsは2021年11月にカリフォルニアに培養肉工場(EPIC)を開設した。この工場では、初期段階で年間5万ポンド(約22トン)、長期的には40万ポンド(約180トン)まで生産量を拡大するとしていた。

今回発表されたRubiconは、最大10万リットル規模のバイオリアクターを備え、生産能力は現工場の最大約75倍となる。Upside FoodsはEPICで得た知見を活用し、培養肉の生産を次のレベルである商用規模へ移行させたい考えだ。

同社は工場の設計・製造でJacobsと協業している。

75以上の新たな雇用を創出

出典:Upside Foods

Upside Foodsは中西部に位置するイリノイ州グレンビューを工場設置場所に選んだ理由として、イノベーションと持続可能性への共通の取り組み、食肉生産における尊敬すべき伝統、戦略的な地理的優位性を挙げている。

Upside Foodsの中西部への取り組みは、ウィスコンシン州の培養シーフード企業の買収から始まった。2022年1月、同社はCultured Decadenceを買収した。

Upside Foodsはこの地域に1億4000万ドル(約206億円)以上の投資を計画しており、工場設置により、倉庫保管、物流、食品生産など新たに75以上の雇用が創出される見込みだという。

大規模な培養肉工場の計画、アメリカで複数進行

出典:Upside Foods

2015年に設立されたUpside Foodsは、タイソンフーズ、ソフトバンク、カーギルなど著名な企業から出資を受けており、オランダのモサミートと並ぶパイオニア企業だ。

2022年には500億円を超える大型資金調達を実現した。この調達時、年産数千万ポンドの大型工場の建設に言及していた通り、今回、シカゴ近郊での建設計画が発表された。

Upside Foodsは今年6月、米国当局から最終的な販売認可を取得し、7月に提携レストラン「Bar Crenn」を通じてアメリカでの培養肉販売を実現した。「Bar Crenn」で培養肉を食べるための予約はこのページで受け付けている(コース料理で1人150ドル)。

現状、培養肉の販売が認められているシンガポール、アメリカでは培養肉の供給はまだ非常に限定的で、消費者の認知・受容を拡大するためのマーケティング的施策となっているが、新たな工場が稼働すると培養肉の一般普及がより現実味を帯びてくる。

Upside Foodsの他にも、イスラエル企業BELIEVER Meatsが米ノースカロライナ州ウィルソンに培養肉工場を建設しており、2024年第1四半期の稼働を予定している。この工場が完成すると年産約1万トンとなり、Upside Foodsと同等規模の工場となる。

世界で最初に培養肉を販売したGOOD Meat(イート・ジャストの子会社)も同等規模の培養肉工場の開設を予定しており、アメリカでは大規模な培養肉工場の建設が複数進行している。

 

参考記事

UPSIDE Foods Selects Chicago Metropolitan Area for its First Commercial-Scale Cultivated Meat Production Plant

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Upside Foods

 

関連記事

  1. 【原材料別】代替タンパク質スタートアップ企業まとめ21社
  2. 独Nosh Biofoodsが赤身肉のようなマイコプロテインの開…
  3. ドバイが次のフードテックハブになる?UAEがドバイにフードテック…
  4. Tempty Foods、デンマークのセブンイレブン30店舗で試…
  5. クラフト・ハインツがAIを活用するフードテック企業NotCoと合…
  6. 機械学習でタンパク質収量を増やす英Eden Bioが約1.6億円…
  7. 植物の葉から食用タンパク質を開発するLeaft Foodsが約1…
  8. 培養肉セミナー開催レポート【岡田健成氏講演】-2022年8月-

おすすめ記事

Onego Bio、米ウィスコンシンに精密発酵卵白の工場建設を計画|商用規模のパイロット生産も完了

精密発酵で卵白タンパク質を開発するOnego Bioは、最初の商用規模のパイロッ…

英培養肉企業Ivy Farmとバイオテック企業BSF Enterprise、中国進出に向けて提携

イギリスの培養肉企業3D Bio-Tissuesを所有する英バイオテック企業BS…

家庭調理ロボット「Posha」、シリーズAで約11.6億円を調達──“プライベートシェフ”として全米展開へ

家庭向けキッチンロボットを開発する米Posha(旧称Nymble)は今月6日、シ…

Orbillion Bio、欧州35ヵ国への培養牛肉販売に向けてパートナーシップを拡大

アメリカを拠点とするOrbillion Bioは欧州での培養肉上市に向けて、オラ…

小麦胚芽由来の低コスト成長因子を開発する名大発スタートアップNUProteinの挑戦

食糧危機・環境問題の解決策として期待される培養肉の生産コスト低減を目指して、コム…

パーフェクトデイの子会社The Urgent Companyがアイスクリーム企業を買収、精密発酵タンパク質の普及がさらに加速

パーフェクトデイの子会社であるThe Urgent Companyが2021年1…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/25 15:29時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/25 01:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/25 05:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/25 21:32時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/25 13:31時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/26 00:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP