オランダの精密発酵企業Viviciは、乳タンパク質の1つであるβ-ラクトグロブリンを生産するプロセスのスケールアップに成功し、取引先に向けて食品グレードの製品を製造したことを発表した。
プレスリリースによると、同社は2024年に生産をさらにスケールアップする予定だ。また、来年始めに最初の製品となる、牛由来と同等のβ-ラクトグロブリンを市場に投入することを予定している。
Viviciが精密発酵ホエイを生産するプロセスをスケールアップ
Viviciは、ニュージーランドの大手乳業メーカー・フォンテラ(Fonterra)とオランダ大手化学メーカーDSMにより昨年設立された。
Viviciが開発するβ-ラクトグロブリンは、乳タンパク質のホエイに分類されるタンパク質だ(乳タンパク質はホエイ、カゼインに分類される)。β-ラクトグロブリンは、優れたゲル化力、起泡性、乳化性を備えており、さまざまな食品・飲料の口当たりや食感を向上させる作用を持つ。
代表的な精密発酵企業とされる米パーフェクトデイや、同社に続きアメリカで認可を取得したRemilk、Imagindairyもホエイタンパク質を開発している。
ViviciはB2B企業として、サステナブルなホエイ製品や改良されたアニマルフリー製品を市場に投入したいと考えている大手食品・飲料メーカーへ精密発酵ホエイを提供する予定だ。
プレスリリースでは具体的なターゲット市場に言及していないが、精密発酵ホエイが承認され、流通しているアメリカ、シンガポール、あるいはインポッシブルフーズのヘムを承認しているオセアニアで上市する可能性が高いだろう。
フォンテラ・DSMによって設立されたViviciは、バイオプロセスの開発・拡張における数十年にわたる経験、乳タンパク質の単離・応用において世界をリードする知識を保有している。長年の知見を活用し、市場投入においてもスピード感のある取り組みをしていくだろう。
欧州における精密発酵
遺伝子組換え微生物を製造過程で使用する精密発酵タンパク質は、最終産物に当該微生物は含まれないものの、欧州で販売するためには、新規食品として当局の認可を取得しなければならない。欧州の新規食品規制は特に厳しいと言われるが、規制状況に反して、欧州での精密発酵企業設立が近年増えている。
欧州の「長すぎる不透明な新規食品プロセス」の改善に向けて、今年3月、Formo(ドイツ)、Better Dairy(イギリス)、Imagindairy(イスラエル)、Onego Bio(フィンランド)、Those Vegan Cowboys(ベルギー)の5社が新たな業界団体Food Fermentation Europe(FFE)を設立した。
Viviciも8月に参画し、FFEの参加企業は現在8社となった。今後はFFEが中立団体として、欧州当局と協議する役割を担っていくだろう。
欧州の精密発酵企業としては、今年カゼインの工業生産の実現性を実証したことを発表したオランダのFooditive、B2Bプラットフォーマーを目指すオーストリアのFermify、卵白タンパク質を開発するフィンランドのOnego Bio、乳製品に加え、最近麹菌を使用した代替卵(卵は新規食品対象外)開発が報道された独Formo、カカオバターを開発する独Planet A Foods、カゼイン・乳脂肪を開発する仏Nutropyなど、さまざまな企業が確認されている。
参考記事
Vivici successfully scales up its beta-lactoglobulin process, producing food grade product
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アイキャッチ画像の出典:Vivici