ロボット工学、AI、調理工学を組み合わせてレストラン業界の変革を目指すスペイン企業Remy Roboticsは、ニューヨークで同社初となるロボット調理レストラン「Better Days」の立ち上げを発表した。
同社は「Better Days」について、ファストサービスのような価格と便利さで利用できる、フルサービスレストランの品質と味を備えたファストファイン店だと述べている。
「Better Days」はレストラン名だが、現在はバーチャルレストランの形態となる。「Better Days」の専用アプリのほか、ウーバーイーツ、ドアダッシュなど配達サービスプロバイダーを通じてニューヨーク市で利用可能だ。
70年前にマクドナルドが工業用組立ラインを応用して業界に革命を起こしたように、Remyはロボット工学とAIでレストラン業界を根本的に変えるようとしている。ポイントは、何を調理するかではなく、どのように調理するかだと同社は述べている。
不可能と考えられていた方法でレストラン業界の変革に挑む
プレスリリースによると、これまでのレストラン業界におけるロボット工学の応用は、ピザを製造する自動販売機や、フライドポテトを揚げるなど単一プロセスの自動化に限定されていたた。
Remyの「柔軟な自律型ロボットキッチン」は、約18.5㎡(200平方フィート)というわずかなスペースで、従来のキッチンのような換気システムや人間のシェフを必要とせず、複数種の食品と何百の料理を調理できるという。Remyの技術により、これまで不可能と考えられていた方法で、高品質の食品を大規模に生産することが可能になったと同社は主張している。
Remyはプラットフォームにハブアンドスポーク方式を採用している。これは、中心拠点となるハブに必要なものを集約させ、拠点(スポーク)毎に分散させる方法を指す。
同社の場合、人間のシェフが中央販売所(ハブ)で食品を準備し、特別に設計された包装でノードキッチンと呼ばれる場所(拠点)に輸送し、そこでロボットがすべての調理を行う。食品はオーブンに移される前に冷蔵され、Remyが「アルゴリズムレシピ」と呼ぶものを使用し、オーブンで特定の仕様に合わせて調理される。
調理が完了した食品にはAIアルゴリズムが適用され、食品の内部温度を監視する赤外線センサーと水分減少量を計算するスケールを使用して、食品の品質を管理している。
同社によると、注文がデリバリー、テイクアウト、イートインのいずれかに応じて、調理時間を自動で調整するという。
数多くのレストランテックやフードロボットを紹介してきた米フードテックメディア・The SpoonのMichael Wolf氏はRemyのサービスについて、人間のシェフを模倣したロボットではなく、ロボットを中心とした食品生産のフロー全体だと説明している。
「Remyは、高品質でおいしい食品を一貫して入手しやすく、かつ利益を出しながら大規模に製造するという、以前は不可能だと考えられていたことを実現するために存在しています」と創業者兼CEO(最高経営責任者)のYegór Traiman氏は述べている。
同氏はさらに、「ニューヨークでBetter Daysを立ち上げ、大きな一歩を踏み出し、何ができるのかを示し始めています。私たちの目標は、良い雇用を創出し、シェフの労働環境を改善しながら、手頃な価格でおいしい食べ物を誰もが利用できるようにすることです」と述べている。
Remyはこれまでに10万食以上の食事を提供してきた。同社初のファストファインレストラン「Better Days」に対し、ニューヨーク市民はどのような反応を示すだろうか。
参考記事
Remy Launches in U.S. With Robot-Powered Virtual Restaurant in NYC Called Better Days
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アイキャッチ画像の出典:Remy Robotics