オーストラリア・ニュージーランドの独立系シンクタンクFood Frontierは12日、オーストラリア・ニュージーランドで培養肉企業Vowが開発する培養ウズラの承認が近づいていることを発表した。
Vowは今年始め、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)に培養ウズラの食品原料としての評価を求める申請を行った。数ヵ月にわたる安全性評価を経てFSANZは、Vowの胚性線維芽細胞を使用した培養ウズラが食べても安全であるとの結論に達した。
FSANZは現在、調査結果を一般に公開し、オーストラリア・ニュージーランドにおける培養肉生産の最初の事例として、Vowの培養ウズラ製品について一般の人々の意見を募集している。また公募の中で、消費者の混乱を避けるために培養肉に対する多くのラベル表示要件を提案している。
FSANZによる意見募集公告(Call for submissions – Application A1269)には、「申請書に記載されたレベルの栄養素を含む、収穫された細胞の消費による栄養学的な安全性の懸念は確認されなかった」と記載されている。
このほか、細胞株は遺伝学的に安定であり、細胞株の調達に関連する微生物学的リスクは非常に低いこと、細胞増殖/バイオマス生産段階が無菌であることから、収穫時点の細胞に関連する微生物学的リスクは極めて低いこと、推定される消費レベルにおいて、生産プロセスで使用される細胞培地や投入物に関連する毒性学的懸念はなかったことが記載されている。
また、収穫された細胞は、一般集団に食物アレルゲン性の懸念をもたらす可能性は低いことも記載されている。
FSANZが公開しているVowの申請に関するAdministrative Assessment Reportによると、意見募集後は、委員会による承認、大臣会合への通知を経て、見直しの要求がされなかった場合、承認される見込みだと考えられる。
オーストラリアが培養肉承認に向けて一歩前進
世界で培養肉の販売が認められた事例は、2020年12月のシンガポールが最初となる。
2023年6月には、GOOD Meat、Upside Foodsの二社がアメリカで販売を認められた。培養肉を販売できる地域はシンガポール・アメリカに限定されているが、FSANZの発表により、オセアニアがこれに続く可能性が高まってきた。
オーストラリアの培養肉企業Vowは昨年10月、シドニー郊外のアレクサンドリアに年間30トンの生産能力のある工場「Factory 1」を開設した。昨年12月にはシリーズAラウンドで約67億円を調達し、既存工場の100倍の生産能力を誇る新たな工場計画を発表した。
当時の発表では、培養ウズラ肉を今年シンガポールで発売する予定だとしていたが、現時点でシンガポールでの販売は確認できていない。
Food Frontierは、世界の企業が潜在的な生産拠点としてオーストラリアとニュージーランドに注目し、この地域における経済投資と食品システムのイノベーションを促進しているため、オーストラリアとニュージーランドで培養肉製品が承認されれば、細胞農業という新興分野への投資とイノベーションが活発化する可能性があると述べている。
オーストラリアではVowのほか、培養羊肉の開発に取り組むスタートアップ企業Magic Valleyがある。
Magic Valleyは先月、パイロット施設を拡張し、年間最大150トン(日産で410kg)の製品を製造できるようになると発表した。同社は現在、FSANZと協議を継続している。
Vowの培養ウズラ製品に関する意見の提出期限は2024年2月5日までとなる。
参考記事
Cultivated meat approval progresses to the next stage
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アイキャッチ画像の出典:Vow