代替プロテイン

微生物発酵CDMOのスイス企業Planetaryがコニカミノルタと提携、発酵タンパク質の生産性向上・コスト削減を目指す

 

スイスに拠点を置くバイオマス発酵・精密発酵のCDMO企業Planetaryは今月、微生物発酵の生産性向上・生産コスト削減に向けて、日本企業コニカミノルタと提携したことを発表した

2030年までに、肉、卵、乳製品、シーフードの10〜20%が代替食品になると予想されるなか、Planetaryはコニカミノルタと提携することで、微生物発酵の生産性を向上させ、全体的な生産コストを最大30%削減することを目指している。

コニカミノルタは昨年6月にバイオものづくりに特化した研究所設立するなど、微生物による物質生産の実用化に向けた課題解決に取り組んでいる。Planetaryとの提携は、世界規模でのバイオものづくりの課題に取り組む同社の姿勢を示している。

微生物発酵CDMO企業Planetaryがコニカミノルタと提携

出典:Planetary

二社が目指すところは、肉、卵、乳製品、シーフードなどの発酵タンパク質を従来製品と競争力のあるコストで製造することであり、提携では、発酵プロセスをモニタリング・制御する高度なセンシングソリューションとAIの導入に重点を置いている。

バイオマス発酵、精密発酵など微生物発酵は、さまざまな産業の生産システムを変革させる可能性を秘めているものの、これらのプロセスのモニタリング・制御は近年ほとんど変わっていないと指摘されている。

Planetaryはコニカミノルタと協力して、革新的なデータ駆動型センシング技術と補完的なAIを導入し、発酵プロセスのリアルタイムなモニタリング、制御、最適に取り組む。これにより、プロセスの異常を検知し、増殖パラメーターを制御して、バッチの損失を減らしながら生産性の向上を目指す。

Planetaryの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のDavid Brandes氏は、「従来の食品・素材の生産システムは、発酵由来のバイオものづくりによって破壊されつつあります。この移行は高価値製品から始まり、現在はコモディティ製品にも影響を及ぼしています。同等価格を達成するには、目的に適した生産現場を設計し、菌株性能を最適化し、バイオプロセスを刷新し、制御し、自動化する必要があります」と述べている

センシング・AI技術でバイオものづくりの課題解決を目指すコニカミノルタ

Planetary創業者のIan Marison博士(左)とDavid Brandes氏(右) 出典:Planetary

コニカミノルタは今回の提携に先立つ昨年6月、産業技術総合研究所AIST Solutionsと共に「コニカミノルタ-産総研 バイオプロセス技術連携研究ラボ」を茨城県つくば市の産総研つくばセンター内に設立した

精密発酵など微生物による物質生産では、試験管レベルから量産規模にスケールアップする時、微妙な条件の違いで微生物の挙動が変化して生成反応が変わるため、結果として品質や歩留まりの維持が難しいという課題がある。また、微生物で生成した物質を従来の原料に置き換える際にも、品質のばらつきにより、最終製品の歩留まりや品質に問題が生じることがある。

このバイオプロセス研究ラボでは、コニカミノルタの強みとするセンシング技術、AI技術、画像IoT技術を進化させ、微生物細胞を用いた物質生産におけるモニタリング技術を開発し、バイオものづくり実用化への課題となるスケールアップ・安定生産の課題に取り組んでいる

コニカミノルタの執行役員兼Chief Innovation Officerであり、インテグリカルチャーの共同創業者でもある森龍太郎氏は、今回の提携について次のように述べている

「コニカミノルタは、150年にわたる光学の専門知識に基づいた優れたプロセスモニタリング技術を有しています。Planetaryとの対話で、強力なリーダーシップに支えられた最先端のバイオプロセスを有するスタートアップ企業ならではのスピード感を持っているという印象を受けました。

私たちの専門知識を組み合わせることで、この提携が私​​たちの連携を強化し、世界規模でバイオものづくり産業の真のボトルネックを解決する方向に進むための道を模索するのに役立つと信じています」

マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)によると、バイオエコノミーは今後数十年間で年間最大4兆ドルの直接的な経済効果をもたらす可能性があるという。生物を活用した物質生産アプローチにより、食品、化学物質、他のバイオ由来製品など全物理的製品の最大60%を生産できる可能性があるとされている。

その中でも、微生物発酵はバイオエコノミーにおける重要なプロセスとされ、バイオマス発酵や精密発酵などの技術を活用することで、食品を持続可能に競争力のあるコストで生産することができる。

Planetaryは今年を目途にスイスに工場を稼働する予定であり、コニカミノルタとの提携は、生産性向上に向けた同社の取り組みを加速するものになるだろう。

 

参考記事

Planetary partners with Konica Minolta to optimise microbial fermentation through advanced sensors and artificial intelligence

Swiss Biotech Planetary and Japan’s Konica Minolta Partner to Cut Costs of Fermented Proteins

「コニカミノルタ-産総研 バイオプロセス技術連携研究ラボ」を設立 「バイオものづくり」の次世代生産マネジメントシステム実現へ

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Planetary

 

関連記事

  1. 菌糸体で代替ステーキ肉を開発する英Adamo Foodsが約2.…
  2. Kikka Sushiが米ホールフーズで植物性のビーガン寿司を発…
  3. 精密発酵スタートアップ9社が精密発酵組合を設立
  4. Next Prime Food発足: 大企業とスタートアップの“…
  5. Imagindairyがイスラエルで精密発酵ホエイの認可を取得 …
  6. 米NovoNutrients、牛タンパク質と同品質のCO2由来タ…
  7. 英Hoxton Farms、2026年に培養脂肪製品を市場投入へ…
  8. 味の素がイスラエルの培養肉企業スーパーミートに出資、培養肉の商用…

おすすめ記事

ドイツのBluu Seafoodが欧州で初めて培養魚製品を発表、2023年にアジア上市を目指す

ドイツの培養魚企業Bluu Seafood(旧称Bluu Biosciences…

ネスレが精密発酵によるミルク「Cowabunga」の試験販売を開始

ネスレは今月、精密発酵企業パーフェクトデイの乳タンパク質を使用したミルク製品「C…

高級培養肉Orbillion Bioが日本初登壇|Food-Tech Webinar Fall 2021参加レポート

株式会社アドライト社が代替タンパク質の可能性にフォーカスしたセミナー「Food-…

細胞培養で母乳を開発するTurtleTreeがラクトフェリン粉末を最初の商品とすることを発表

シンガポールを拠点とするTurtleTreeが、最初に商用化される商品がヒトラク…

タイ食品大手のCPフーズがイスラエルの培養肉企業フューチャーミートと培養ハイブリッド肉の開発で提携

イスラエルの培養肉企業フューチャーミート(Future Meat)は23日、タイ…

マレーシアの培養肉企業Cell AgriTechが2024年末までの工場開設を発表

マレーシア初の培養肉企業Cell AgriTechは、マレーシア、ペナンに培養肉…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(02/21 14:43時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(02/22 00:24時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(02/22 04:19時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(02/21 20:41時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(02/21 12:47時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(02/21 23:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP