先月、培養肉・培養シーフードに関する欧州のコンソーシアムFEASTS(Fostering European Cellular Agriculture for Sustainable Transition Solution(持続可能な移行ソリューションのための欧州細胞農業の育成))が発足した。
FEASTSは欧州連合(EU)から資金提供を受けた3年間の共同研究プログラムであり、培養肉・培養シーフードに関連した消費者理解、社会受容、農家との連携、生産技術、枠組みの構築、社会的・環境的効果などの研究を実施する。
17ヵ国の36の独立機関が参画しており、アジアからは唯一、日本の細胞農業研究機構(JACA)が参画している。スタートアップ企業では、フランスのGourmey、Vital Meat、ドイツのCultimate Foods、イタリアのBruno Cellなどが参画している。
「政策の意思決定支援ツールにしたい」
欧州では培養肉などの細胞性食品は新規食品に該当するため、一部の企業が申請手続きを進めているものの、認可を取得した企業はまだない。
新規食品規制は依然として企業にとって障壁だが、欧州全体では細胞農業の社会普及に向けた動きが確認されている。
12月には精密発酵・藻類由来食品に資金提供を行うプログラム「Work Programme 2024」が発表され、先月から募集を開始している。同プログラムでは培養肉は対象とされていないが、FEASTSのプログラムは、培養肉・培養シーフードを対象としている。
コンソーシアムのパートナーEIT Food North and East regionでディレクターを務めるMarja-Liisa Meurice氏は、「最終的には調査結果を、EUにおける政策や意思決定のための意思決定支援ツールとして役立てたいと考えています」と述べ、政策に働きかける促進剤にしたい考えを明らかにしている。
* EIT Foodは、EUの1組織である欧州イノベーション・技術機構(EIT)から支援を受けている。
農家との連携:培養肉を通じた未来の農業を共同探求
FEASTSはコンソーシアムの狙いとして、培養肉・培養シーフードに関する包括的で公平な知識を提供すること、培養肉・培養シーフードの持続可能な生産の枠組みを構築すること、これらの生産技術を掘り下げることを挙げている。
研究プログラムでは、培養肉・培養シーフードの安全性・栄養・健康・規制に関連した調査を実施し、倫理的な問題にも取り組む。細胞農業が環境や食品バリューチェーンに及ぼす多面的な影響について理解の拡大も図る。
FEASTSは重要な取り組みとして、培養肉・培養シーフードの技術が、農業のどのように貢献するかを探求することを挙げている。すべての細胞農業製品は、伝統的な農業の貢献を必要とするため、FEASTSは、農家にとって公正な経済的メリットを生み出すプロセス・将来の計画の設計に、農家に積極的に参加してもらうことを考えている。
消費者反応として想定される食の安全性・栄養に関する認識のギャップには、透明性・厳密さをもって取り組む考えだ。
大きな関心事である、培養肉が欧州で受容されるのかどうかについては、消費者の好み・欧州の多様な食文化を中心テーマとして、ワークショップやフォーカス・グループ研究を実施するとしている。
参考記事
FEASTS launched: a research project on cultivated meat and seafood explores the future of protein
FEASTS launched: a research project on cultivated meat and seafood explores the future of protein
FEAST始動:タンパク質の未来を探る細胞性食肉・魚介類の研究プロジェクトを開始
EU-Funded Program “FEASTS” Sets Out to Research Cultivated Meat and Seafood as Future Proteins
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アイキャッチ画像の出典:FEASTS