精密発酵で甘味タンパク質を開発する米Oobli(旧称Joywell Foods)は今月、アメリカ食品医薬品局(FDA)から「質問なし」のレターを受け取ったことを発表した。
米Oobliが精密発酵ブラゼインでGRAS認証を取得
Oobliが開発したのは、甘味タンパク質の1種であるブラゼインだ。
ブラゼインはタンパク質でありながら、砂糖の500倍から2000倍の甘さを持つため、甘味タンパク質に分類される。Oobliは、ブラゼインの中でも最も高い甘味力を有する53個のアミノ酸配列を持つbrazzein-53の製造に成功している。
砂糖の摂取を削減できる甘味タンパク質は、血糖値への影響がないため、生活習慣病対策として高い需要が見込まれるが、西アフリカや調達も栽培も難しい場所に自生する果物や果実に含まれているため量産が難しい。
Oobliは栽培や調達が難しい天然成分を、微生物を活用する精密発酵で作り出すことに成功した。Oobliによると、甘味タンパク質は血糖値、インスリン、腸内微生物叢に影響を与えないという。
チョコレートバー、スイートティーを上市済み
アメリカでは精密発酵による原料について、メーカーがGRAS自己認証を宣言することで、当該原料を販売できるようになる。
GRAS自己認証は、FDAによるGRAS認証を6ヵ月~12ヵ月待ったり、FDAによる食品添加物の承認を6年間待ったりすることなく、企業が安全性を自己確認できるプロセスとなる。
GRAS自己認証の宣言には、利益相反にならない外部の専門家委員による審査が必要となる。Oobliもすでに専門家委員会による評価を通じて、GRAS自己認証を宣言していた。
これに基づき、2022年の初製品・チョコレートの販売に続き、2023年5月にはスイートティーの販売を開始した。今回のレターはGRAS認証の取得を意味し、FDAからも安全性にお墨付きを得たこととなる(Oobliのレター受領はこちらの記事で予測していた)。
Oobliの商品はオンライン販売のほか、現在、マイアミ、ニューヨークなど店舗やカフェ、レストランなどで取り扱われている。GRAS認証を取得したことで、今後さらに販路を拡大していくだろう。
安全性が証明されたOobliの精密発酵ブラゼイン
昨年発表された論文によると、OobliはKomagataella phaffii(旧名Pichia pastoris/ピキア)を用いてブラゼインを生産している。Oobliの精密発酵ブラゼインは、食品・飲料の甘味料として使用しても安全であることがこの論文で証明されている。
甘味タンパク質にはソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、クルクリンなどがある。この中で、ソーマチンはNomadなどがFDAから「質問なし」のレターを受領し、同社スピンオフのNAMBAWAN Biotechを通じて商用化されている(Nomadは微生物ではなく植物で生産しているようだ)。
精密発酵ブラゼインでFDAから「質問なし」のレターを受領した企業はOobliが初となる。
同社のほかにも、米Sweegenが精密発酵ブラゼインについて昨年、米国香料エキス製造業者協会 (FEMA) からGRASステータスを取得した。最近では、アブダビを拠点とするNovel Foods Groupが、ブラゼインを開発する生産施設の建設計画を発表している。
イスラエルのAmai Proteinsも精密発酵により甘味タンパク質を開発しており、日本を最大の市場とみなしていることが過去に報じられている。
甘味タンパク質に限らず、砂糖の過剰摂取を抑制する砂糖削減テックの開発は活発化しており、Better juice、Sweet Balance、Incredo、Resugarなどの企業が確認されている。
参考記事
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アイキャッチ画像の出典:Oobli